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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第1章 目覚める記憶
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14話 カシ村の秘密?


「本当、とんでもない強さですよね。援護なんてしてる暇もないくらいあっという間でしたよ」

「まあ、な。」


ハルカと合流して早速戦闘能力を褒められたが、自分の努力で得た力ではないので素直に喜んでいいものかわからない。


「それより、生存者を探さないと。ハルカ、人間の匂いを追えないか?」

「はい、このゴブリンが着けていた装備は冒険者のものみたいです。これに残った匂いをたどれば行方不明の冒険者の足取りがつかめるかと。……でもちょっとくさいですぅ……」

 

 ひとまず生存者がいる可能性を考えて人の匂いを探ってもらおうと思ったが、なかなか大変な作業のようだ。しかし苦労の甲斐あってか、ハルカは地下への入り口らしき扉と、そこから続く階段を見つけてくれた。

 村の中でもひときわ大きな建物の床に備え付けてあったものだ。建物の大きさとそこら中に散らばっている物品の量を見るに、村の倉庫か何かだろう。近づいたことで気が付いたが中から嫌な気配がしている。何かあるのは間違いないだろう。


「ここだな。中から嫌な気配がする。俺が先に行くぞ。ある程度の安全が確認出来たら呼ぶから待っててくれ」

「…わかりました、お気を付けて」


 ハルカは心配してくれているようだが、それでも俺を信頼してくれたのだろう。素直に送り出してくれた。あるいは、俺の身になにかが起こった場合を考え、報告や救援を呼べる者として自分が残るべきと考えたのかもしれない。敵が出たなら地下で弓は厳しいということもあるだろうし、やはり俺が先導するべきだろう。

 ハルカの心配そうな目線を背中に受けながら、俺は地下へと降りて行った。





「なんだ……これ……?」


 地下に降りた俺は、目の前に広がる光景に絶句した。その地下室の中は、まるで近代的な技術に基づき設置されたような研究室だった。これまでに見てきたこの世界の光景とは一線を画した雰囲気のその研究室では、以前英雄広場で蝙蝠の羽を生やした少女が放っていた黒い石によく似た石が6つ、ガラスでできた大きなカプセルのようなものの中に浮かべられていた。

 そのカプセルたちは様々な配色のケーブルで繋げられ、奥の大きな旧式のコンピューターらしきものと、その横の大きな機械に接続されていた。あの大きな機械は動力源だろうか。しかし大きな機械を動かしているにも関わらず、動力源らしき機械からは全く音が出ていなかった。


「この施設……一体だれが……」


 ここで、部屋全体から感じていた脅威の感覚が強くなる。それと同時に、カプセルの中の石が黒いもやを出し、光始めた。それはダズと英雄広場で見た光景そのものだった。もやはカプセルの中を埋め尽くすと、カプセルを破壊して広がり、その後石に向かって収束し始めた。

 6つの石がそれらの反応を終えたとき、そこには新たな魔物が発生していた。身長は2メートルはあるだろう。先のとがった太い歯を持ち、見るからに分厚く膨れ上がった筋肉に覆われた巨体の魔物は、名づけるならオークという呼称がふさわしいと感じた。目は赤く、産まれたばかりだというのにこちらを視界に入れるや否や雄たけびをあげながら襲いかかってきた。


「うお、見てる場合じゃなかった!」


 まずい。今いるこの小さな部屋では逃げ場がない。オークたちも手狭そうで大した勢いはついていないが、それでも複数のあの巨体と正面から力比べをするのは厳しい。俺は素直に撤退を決め込み地下室の扉に駆け込んだ。あの巨体と出っ張った腹では、細い地下室への出入口を通過するのは容易ではないだろう。

 数段しかない階段を駆け上り後ろを振り返ると、案の定地下室の出口に複数体で引っかかり、青筋を浮かべながらもがくオークたちが見えた。


「ハルカ、生存者は見つからなかった!」

「ショウさん!あれ、オークじゃないですか!あいつらがこの村を!?」


 ハルカが地下室の方をみて驚いている。やはりオークで合っていたらしい。たしかに驚いたが、今はこのオークにどう対処するのかが問題だ。ハルカはこの魔物を見ただけでオークと見抜いていた。何かオークについて知っているかもしれない。


「村のことはわからない。それより、今はこいつらに対処しよう。ハルカ、オークについて知っていることを教えてくれ、長くなりそうなら要点だけ」

「は、はい!ええと、オークは通常山や洞窟の奥に生息する魔物です。魔法的な攻撃は一切しませんが、強靭な肉体と、あいつらは持ってませんが手製の武器が脅威です。強さとしては並みの人間や兵士じゃ話にならず、普通の人からしたら十分化け物な銅級冒険者が数人がかりで倒す相手で、それも相手が一体の時です。複数のオークなんて、銀級冒険者か騎士団の騎士でないと相手にもなりません!」

「銀級やら騎士ってのはどのくらいいるものなんだ?」

「支部に少なくとも二人は配属されるようになっているはずです。でもその人たちも普段は依頼をこなしているので、いつも町にいるわけじゃありません、それに騎士も召集をかけないとそう簡単には集まらないはずです。つまり―――」

「つまり、こいつらを放置はできない、と」


 今ここで逃げても、こいつらは俺たちを追って街まで来てしまうだろう。そうなっても対処ができないわけではないだろうが、どれほどの犠牲が出るかわからない。対人戦なら金級とシャットのお墨付きを受けた俺なら戦える、と信じたい。

そしてそうこうしている内に地下室の入り口は殺到するオークたちによってひび割れ始めていた。そう長く持たないだろう。


「ハルカ、先頭のオークの目を射れるか?時間を稼ぎたい」

「この距離なら大丈夫です。撃ちます!」


 ハルカの放った矢は、地下室の入り口を破壊しかけているオークの目に向かったが、弓を向けられて何をされるか悟ったらしいオークの太い腕に防がれてしまった。矢は腕に刺さってはいるが、ダメージはほとんどなさそうだ。

 興奮したオークたちがさらに暴れだし、地下室の入り口がいよいよ軋み始める。もうほとんど持たないだろう。


「そんな!」

「もう時間がない。ハルカ。煙玉だけ使ったら逃げてくれ。俺が時間を稼ぐから、街にもどって救援を…」

「無茶です!ここから街まで歩いて二時間、救援なんて間に合いませんし、いくらショウさんが強くても、素手にナイフでは物理的に仕留めきれませんよ!」


 そうか、救援が期待できないならなおさら俺たちで対処するしかないな。かつてないピンチのはずなのにやはり落ち着いていられる。あの夢が俺の人格にまで影響を与えていないか心配だ。


「頼む、ハルカ。ここは任せてくれ。考えがあるんだ」

「ショウさん……」


ハルカの顔に悔しさがにじむ。ここで残っても足手まといになるということを理解しているのだろう。しかし次に顔を挙げたハルカは決意に満ちた表情をしていた。


「わかりました。ショウさんを信じます。だからショウさんも私を信じて、なにがあっても絶対に諦めないでください。助けを連れて必ず戻ります」

「ああ、信じるよ、ハルカ」


 ハルカは笑みを浮かべてうなずくと、今いる倉庫から出て煙玉に魔力を込める。光る球体を倉庫の床にたたきつけるように投げると、そこから煙が広がり倉庫の中を満たし、視界を完全に奪った。


「ご武運を!」


ハルカがそう言い駆け出すと同時に、オークたちが地下室の入り口を破壊しながら飛び出す音が聞こえた。よほどうっぷんがたまったのか、先ほど以上の雄たけびを上げている。ただ、視界は俺と同様奪われているだろう。


「さて、やるか」


 ナイフを構える。冒険者と魔物の、あるいは魔物同士の、殺し合いが煙に包まれた倉庫の中で始まろうとしていた。


そろそろ毎日更新は厳しくなります。

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