第269話 連撃
「まあだまあだあああああ!!!!」
引き抜いた断骨刀を、そのまま真横へ振り抜いた。
巨大な刃が厚い外皮へ食い込み、落下の一撃でできた裂け目をさらに大きく抉る。透明な液体と千切れた繊維が飛び散る中、俺は振り抜いた勢いのまま身体を回し、反対側からもう一度叩き込んだ。
「おらああああっ!!」
二撃目で裂け目が広がり、三撃目を真上から叩き込む。
巨大植物全体が激しく震えた。
周囲の枝がざわめき、地面からは太い根が次々と持ち上がってくる。何キロも先まで広がっていた身体が、ようやく何が起きているのか理解して、本体を守ろうとしているらしい。
「遅えんだよ!」
待つつもりはなかった。
右から伸びてきた蔓を断骨刀で叩き切り、そのまま一歩踏み込む。左から迫ったもう一本は白鎧で肩を覆って受け流し、身体を回した勢いをそのまま次の斬撃へ繋げた。
一撃ごとに巨大植物の身体が裂けていく。
「おおおらああああ!」
斬る。
踏み込む。
また斬る。
断骨刀の重さを止めず、振り抜いた先から次の一撃へ繋げる。普通なら一度振るだけでも持て余す重さが、今の俺にはそのまま威力になった。
白い糸を足元へ食い込ませ、暴れる巨大植物の上で身体を固定する。
「まだだ!」
断骨刀を裂け目へ叩き込み、力任せに横へ振り抜いた。
太い繊維の束がまとめて断ち切られ、巨大な傷口が一気に奥まで開く。
閉じようとしていた内部の組織まで、その動きごと切り裂いた。
「塞がせるかよ!」
さらに一撃。
植物の内部が大きく抉れた。
その奥に、周囲とは明らかに違うものが見えた。
黒に近い深緑色。
太い繊維に何重にも包まれた、巨大な硬い塊だった。
それを見た瞬間、寄生体が激しく反応する。
「見つけた!」
巨大植物の動きが変わった。
俺へ向かっていた蔓まで引き返し、裂け目を塞ぐように一斉に集まってくる。足元も大きく隆起し、太い根が俺ごと押し潰そうと持ち上がった。
それでも、もう遅い。
「邪魔すんなああああ!!」
迫ってきた蔓をまとめて薙ぎ払う。
断骨刀を返し、核を覆っている繊維へ叩き込む。
一撃。
深く入った。
「もう一発ぅ!!」
同じ場所をさらに抉る。
繊維が千切れ、黒緑色の核が完全に露出した。
俺は断骨刀を大きく振り上げる。
「おおおおおおおおおっ!!」
全身の力を乗せて振り下ろした。
硬い衝撃が両腕を突き抜け、核の表面に大きな亀裂が走る。
「割れろおおおおおお!!」
刃を引き抜き、間髪入れずにもう一度。
断骨刀が亀裂へ叩き込まれた。
核が割れた。
その瞬間、巨大植物全体が大きく跳ね、湿地の地面まで揺らすほどの振動が走った。
俺へ迫っていた蔓が途中で落ちる。
持ち上がっていた根も力を失い、周囲の枝葉が一斉に垂れ下がった。
「っはあ……!」
息を吐く。
落下してから、ほとんど止まらず振り続けていた。
「……これ、本当に強いな」
断骨刀を見る。
大型を相手にするための一撃を、今の俺ならそのまま連続で叩き込める。
小人たちは、とんでもないものを作ったらしい。
その時、足元の割れた核へ寄生体の意識が集中した。
「ああ、分かってる」
止める理由はない。
「食っていいぞ」
言い終わるより早く、白い糸が一斉に伸びた。
「早っ」
何本にも分かれた白い糸が割れた核へ潜り込み、黒に近い深緑色の表面を覆っていく。砕けた破片にも次々と糸が伸び、残さず取り込もうとしていた。
「そんな急がなくても逃げないだろ」
返ってきたのは、聞く気などまるでなさそうな強い喜びだった。
「……まあ、今回は好きにしろ」
俺は断骨刀を肩へ担ぎ直した。
さっきまで数キロ先まで繋がって暴れていた巨大植物は、もう動かない。
その中心で、寄生体だけが夢中になって核を吸収し続けていた。




