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寄生虫と行く現代ダンジョン  作者: 脳タリン


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第215話 岩場の候補

 巨大ワーム型の通り道がある程度見えてから、俺はその外縁に沿って岩場を調べることにした。

 深い砂の上では、巨大な針を運ぶだけでも手間がかかり、杭を打っても地中から押し上げられれば簡単に抜けてしまう。戦力をどれだけ集めても、相手が一度身体を沈めただけで全員が追えなくなる場所では使い切れない。

 必要なのは、巨大ワーム型が自分から地上へ出る場所だった。

 岩へ身体を擦りつける場所や、地中を進めずに迂回する場所があれば、その周囲へ先に針と帯を置き、待ち伏せに近い形で戦える。砂中を追い回すより、動きが制限される場所へ戦力を集めた方がいい。

 七層へ入ると、入口近くに残していたトカゲ型二体が岩陰から走ってきた。長い脚の一部には白い筋が残っているものの、砂の上を移動する速さは元の個体と変わらず、俺の周囲を一度回った後、それぞれ別の方向へ散っていく。

 砂中では、ワーム型と平たい虫型がすでに動いていた。

 今回は六層から鳥型を三体連れてきている。七層の熱気を嫌がる様子はあったが、上空へ出ると高度を保ち、岩場と砂丘の形を広い範囲から確認し始めた。

 鳥型から地形そのものが見えるわけではない。それでも、何かを見つけた方向へ降り、同じ場所を何度も旋回するため、地上から探すより目印を見つけやすかった。

 俺は巨大ワーム型の通り道から一定の距離を保ち、岩場を一つずつ調べながら進んだ。

 最初に見つけた場所は、砂丘の斜面から黒い岩が突き出した小さな丘だった。地表へ出ている部分は広かったが、周囲の砂が深く、岩の下まで続いているかは分からない。

 山刀の鞘で地面を突くと、すぐに砂へ沈んだ。

 ワーム型を潜らせても、岩の根元まで回り込める。巨大ワーム型なら、この程度の岩は下から崩すか、そのまま避けて通るだろう。

 杭を固定する割れ目も少ないため、ここは使えない。

 次に見つけた岩場は、地表へ平たい石が何枚も重なり、その間に細い亀裂が走っていた。杭を差し込む場所は多かったが、石の厚みが足りず、試しに大型蠍型へ帯を引かせると、表面の岩が割れて持ち上がった。

 巨大ワーム型の力を受ければ、杭ごと剥がされる。

 俺は割れた岩を見て、その場所にも印を残さず先へ進んだ。

 使えそうな地形は、思ったより少なかった。

 岩が見えていても、その下が砂なら固定には使えない。地盤が硬くても、周囲が狭ければ大型の猪型や蠍型を動かせず、巨大な針を複数方向から打ち込むことも難しくなる。

 さらに、巨大ワーム型が通らなければ意味がない。

 こちらの都合だけで戦場を決めても、相手が地中から別の方向へ抜ければ、集めた戦力と道具を置き去りにされる。

 昼を過ぎた頃、上空の鳥型が進行方向から外れ、右手へ大きく回り始めた。

 一羽だけではない。

 少し離れて飛んでいた二羽も同じ方向へ寄り、低い位置で何度も旋回している。

 俺は砂中の個体を先行させながら、鳥型が集まっている場所へ向かった。

 砂丘を二つ越えると、それまでより大きな岩場が現れた。

 地面から突き出した岩というより、低い山の一部が砂に埋まっているような形だった。片側には急な斜面があり、その表面には深い溝が何本も刻まれている。

 溝はどれも同じ方向へ伸び、岩の角が削れて丸くなっていた。

 巨大ワーム型が身体を擦りつけた跡だろう。

 岩場の周囲では砂が浅く、山刀の鞘を差し込んでも途中で硬い地面へ当たった。表面へ出ている岩も一枚ではなく、地下まで続いているらしく、ワーム型は途中から先へ潜れずに迂回している。

 俺は岩場の外周を歩き、巨大ワーム型の通過跡を探した。

 斜面の片側には、幅の広い溝が砂の中から続いている。そこから岩場へ近づき、削れた斜面の横を通った後、反対側の砂丘へ抜けていた。

 巨大ワーム型が地上へ出る理由までは分からないが、地下に岩があるため、身体の一部を地表へ出して通っている可能性が高い。


「ここなら、まだやりようはあるか」


 周囲には大型の個体が動ける空間があり、岩の割れ目へ杭を固定できる場所も多かった。巨大な針を置くなら、斜面の裏側へ隠しておけば、地中から押し上げられる危険も減らせる。

 俺は大型蠍型へ帯をつなぎ、岩の亀裂へ仮の杭を一本差し込んだ。

 杭は森砕きの骨から作った試作品で、先端を岩の割れ目へ押し込み、外皮と腱を組み合わせた帯を巻きつける。蠍型が反対側からゆっくり引くと、帯は強く張ったが、杭も岩もすぐには動かなかった。

 さらに力を加えさせる。

 蠍型の脚が砂を掻き、身体が少しずつ後ろへ下がる。帯の内側では腱が伸び、外皮が軋む音を立てたものの、最初に外れたのは杭ではなく、帯をつないでいた骨製の留め具だった。

 巨大ワーム型の力に耐えられるかは別として、少なくとも岩そのものを引き抜くより先に、こちらが決めた場所を壊せる。

 戸張用の帯と同じように、全体を持っていかれる前に外れる場所を作れば、個体が何体もまとめて地中へ引きずり込まれる危険も減らせそうだった。

 小人たちへ見せるため、壊れた留め具と帯の状態を回収していると、斜面の下に白っぽい欠片が落ちているのが見えた。

 最初は岩の一部かと思った。

 拾い上げると、表面はざらついていたが、岩より軽く、わずかに弾力がある。大きさは俺の両手を合わせた程度で、片側には擦れたような筋が何本も残っていた。

 巨大ワーム型の外皮の一部らしい。

 身体を岩へ擦りつけた際、古くなった表面が剥がれたのだろう。周囲を探すと、同じような欠片が斜面の溝や岩陰へいくつも挟まっていた。

 俺は比較的大きなものを数枚集め、山刀の刃を当ててみた。

 力を入れずに引いた程度では、表面へ浅い跡しか残らない。角度を変えて強く押し込むと刃は少し食い込んだが、普通の獣皮とは比べられないほど硬かった。

 森砕きの外皮より厚い。

 ただ、削れた内側には細かな層が重なっており、表面を一度割れば、その下まですべて同じ硬さというわけでもなさそうだった。

 巨大な針が狙うべきなのは、身体のどこでもいいわけではない。

 節の境目や、岩へ擦られて外皮が薄くなった場所を選ぶ必要がある。そこへ最初の一本を通し、傷口ができた後で別の針や山刀、白い糸を集中させれば、硬い外皮を何度も正面から破る手間を減らせる。

 この欠片があれば、戦う前に針の先端を試せる。

 小人たちも実物の硬さを確かめながら、牙の削り方や針の太さを変えられるだろう。

 俺は外皮の欠片を橇へ載せ、岩場の周囲をさらに調べた。

 斜面の上には鳥型が止まれる場所があり、左右には猪型や蠍型を待機させられる平地がある。砂中を進むワーム型も、岩場のすぐ近くまでは潜ってこられるため、巨大ワーム型の接近を早い段階で捉えられそうだった。

 一方で、逃げ道は少ない。

 岩場と巨大ワーム型の間へ挟まれれば、大型個体は簡単に方向を変えられない。地上へ出た身体が予想より長ければ、待機させた戦力ごと押し潰される可能性もある。

 戦場にするなら、全員を最初から岩場へ集めず、距離を空けて複数方向へ分けた方がいい。

 最初の攻撃を仕掛ける個体、針と帯を扱う個体、傷口へ入り込む小型種、倒された個体を補う後続を分け、巨大ワーム型が身体を出した場所へ順番に投入する。

 集めた重さを一度にぶつけるとしても、同じ場所へ固める必要はなかった。

 俺が岩場を一周し終える頃、砂中を探っていたワーム型の動きが変わった。

 巨大ワーム型ほどではないが、遠くから重い振動が続いている。

 通り道をこちらへ向かっているらしい。

 今度はすぐに入口へ戻らず、岩場から十分な距離を取り、振動がどこを通るか観察することにした。

 大型蠍型とトカゲ型を砂丘の裏側へ移し、平たい虫型は砂中へ潜らせる。鳥型も岩場から離れ、上空で大きく旋回し始めた。

 重い揺れは、これまで確認した帯状の区域に沿って近づいてきた。

 やがて岩場の手前で進路がわずかに曲がり、地表の砂が大きく盛り上がる。巨大ワーム型は地下に続く岩を避けるように浅い場所へ上がり、身体の一部を砂の上へ露出させた。

 頭部までは見えない。

 太い胴体の一節が、崩れる砂丘の間から現れ、岩場の斜面へ擦れながら進んでいく。外皮と岩がぶつかる低い音が続き、削れた表面から白っぽい欠片がいくつも飛び散った。

 地上へ出ていた時間は長くなかった。

 それでも、以前に見た岩のない場所より動きは遅く、身体の位置も読みやすい。岩場を回り込む間だけなら、巨大な針を複数方向から突き込む時間を作れるかもしれなかった。

 巨大ワーム型が通り過ぎた後、岩場には新しい溝が増えていた。

 俺が印をつけた場所からも、大きく外れていない。

 次に同じ方向から来る保証はないが、少なくともここを避けている様子はなかった。


「ここにするか」


 まだ準備することは多い。


 巨大な針を運び、杭を固定し、帯を隠しておく場所を決める必要がある。六層と七層から戦力を集め、巨大ワーム型の接近を待つ間、周囲の敵を寄せつけないようにもしておかなければならない。

 それでも、どこで戦うか分からなかった時よりは進んでいる。

 岩場の位置を覚え、入口まで戻る途中にも、目印になる岩へ傷を残した。鳥型とトカゲ型がいれば、同じ場所へ再び来るのは難しくない。

 扉を通って六層へ戻ると、俺は外皮の欠片と壊れた留め具を作業場へ運んだ。

 小人たちは巨大ワーム型の外皮らしい欠片を見るなり集まり、表面を叩き、削り、曲げようとしながら硬さを確かめ始める。巨大な針の先端もすぐに持ち出され、欠片の薄い部分へ何度も当てられていた。

 岩場の形や、巨大ワーム型が通る向きを正確に説明するのは難しい。

 それでも、外皮の実物があり、針を打ち込む場所が決まったことで、作るものの基準は前より明確になった。

 相手より重い群れを揃え、その重さを使える場所も見つけた。

 あとは、戦う時までにどこまで増やせるかだった。


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