乙女ゲーのヒロインは、幼馴染と恋人同士になれたのに、よそよそしくなってしまうのである。 その13
美月は、心に痛みを感じるが、あの時から自分にとって郁人の傍に居られるなら、何事もかすり傷なのである。二階に真直ぐ向かい郁人の部屋をノックする美月は、郁人の返事を聞いて、部屋の扉を開くと、郁人が床に座って、美月の方を見て、微笑むのである。
「……郁人」
部屋に入らず郁人を見つめる美月は、人の気も知らないでと少し頬を膨らませて怒るのである。そんな美月に、疑問の表情を浮かべ、立ち上がり近づく郁人なのである。
「美月……何怒ってるんだ?」
「……私、頑張ったんだよ」
顔をジッと見つめ不満顔の美月に、郁人は困った表情で尋ねると、美月は震えた声で、頑張ったと郁人に言葉で伝え、悲しそうな表情を浮かべる。そんな美月の顔をジッと見つめる郁人なのである。
「……そうか」
「……そうだよ」
正直、美月に何が起こって、何を頑張ったのかは、よくはわからない郁人なのだが、美月にツライ出来事が起きて、それを乗り越えてきたことだけは、理解したのである。そんな、郁人に対して、全てをわかって欲しいと願う美月なのである。
「美月……あのふた……いや、美月はよく頑張ったな」
「……郁人!?」」
よくはわからない郁人だが、なんとなく、そうなんとなくは察していたのである。
美悠と雅人の二人と何かあったのだろうとは、だが結局美月には、そのことに対して尋ねることはなく、美月の頭を撫でる郁人に、美月は、やはり、顔が真っ赤になってしまうのである。
(やっぱり、郁人の事……意識しちゃうよ……ううう~、何で私だけ、だいたい、郁人は、私の事意識してくれてないのかな? うううううう~、なんか、む、ムカついてきた)
ムカムカムカ、次第に苛立つ美月は、上目遣いで郁人を見ながら頬を膨らませるのである。郁人に対して、郁人もドキドキしろと視線で訴える美月なのである。
「美月……何そんなに怒ってるんだ?」
「なんでだと、思いますか?」
プンスカ美月が、可愛くて郁人は、怒る美月の頭をもっと撫でると、一瞬少し嬉しそうな顔になるが、すぐに不満顔を浮かべるも、頬が少し赤いのであった。
「い、郁人……そ、そんなことしても、誤魔化されません……私は怒ってます」
「そ、そうか」
美月の頭を撫でるのをやめて、美月が何で怒ってるのかを両腕を組んで考える郁人だが、まったく、心当たりがないのである。
「……い、郁人……誰も、やめろとは言ってないよ」
「……何を?」
腕を組んだために頭を撫でるのを止めた郁人に対して、不服の表情で、遠回しに、頭を撫でろと訴える美月だが、鈍感な郁人には、そんな言い方では伝わらないのである。
「……郁人、私は、物凄く怒ってます」
頭を撫でなさいと頭頂部を差し出すのに察せない鈍感郁人に対して。さらに頬を膨らませて、プンスカ怒る美月を、ジッと見つめる郁人は、何を思ったのか、膨らんだ美月の頬を人差し指で突っ突くのである。
「い、郁人!?」
突然の郁人の行為に、やはり、驚き照れる美月は、慌てふためくのである。そんな、美月が可愛い郁人は笑うのを必死に堪えるのである。
「……い、郁人!! もう……郁人!! 私、本気で怒ってるんだからね!!」
「いや……悪い……むくれる美月が可愛くて……ついな……す、すまない」
照れながらも、怒る美月に、素直に謝る郁人なのだが、笑いをこらえるの必死である。そんな郁人に不満爆発な美月なのである。
「い、郁人は!! いつもそうやって私の事揶揄う!!わ、私ばかりドキドキして……郁人はずるい!! ずるいよ!!」
美月が、そう言って、郁人に怒りの声をあげると、それを聞いた郁人は、一瞬目を見開いて驚きの表情を浮かべるも、すぐに優しい笑顔を浮かべ、美月の瞳を見つめる。
「美月……そんなことで怒ってたのか」
「そ、そんな事じゃないよ!! 私にとっては重要なことだよ!!」
「美月……俺だって、美月と触れるたびにドキドキしてる……今だって、ずっと、ドキドキしてるぞ」
「嘘だよ……だって、郁人……いつも通りだもん」
「……嘘じゃないって」
「……嘘だよ」
そう告白する郁人の言葉を、全く信じない美月は、そっぽを向いて怒りを示すのである。そんな美月を郁人は、突然抱き寄せるのである。
「い、郁人!?」
突然、ぎゅっと郁人に抱きしめられた美月は、恥ずかしさで、心臓がバクバクしてしまい、両手は、どうしていいかわからず、宙を彷徨うのである。
「美月……ほら……俺も、ドキドキしてるだろ」
そして郁人は美月の後頭部に右手を回し自分の胸に優しく抱え込む、美月も、されるがままに郁人の胸に顔を埋める。そうすると、彼の心臓の音が聞こえてきて、目を瞑り美月は静かにその音を聞く、そう郁人の心臓もドキドキしているのである。
「俺も、美月と一緒だ……必死に普段通りに振舞っていただけだ」
「……郁人」
美月は、郁人の心臓の鼓動を聞いて、次第に恥ずかしさが薄れていくのである。嬉しさと安心感に包まれる美月は、なんで、自分は、こんなに郁人と触れ合うことを恥ずかしく思い、恐れていたのかと馬鹿らしくなる美月なのである。
「美月……美月には、ずっと、ずっと……笑っていて欲しい」
「……郁人」
美月は、そっと両手を郁人の背中に回し、ぎゅっと力強く抱き着くのである。
「私は……郁人と……一緒に……一緒に居られたら……嬉しいよ」
「……じゃあ……ずっと……俺は、ずっと美月の傍にいるよ」
「……うん……ずっと……私は……私の傍に居てね……郁人」
「……ああ、傍にいるよ」
抱きしめ合い。そう言い合って、しばらくそのままでいるが、そっと二人はどちらともなく、離れると
美月は悲しそうな微笑みを一瞬浮かべ、郁人もまた、少し寂しそうな笑みを浮かべる。しかし、それも一瞬のことで、すぐに美月は、郁人のベットをロックオン、久しぶりに、郁人のベッドにダイブするのであった。
「郁人!! アニメ見ようよ!! 最近、全然見れてなかったから」
「それはそうだな……美月、全然見てなかったよな」
「それは、郁人が悪いんだからね!!」
枕を抱きしめて、ベットの上に座って、そう提案する美月に、笑いながら、無神経な発言をする郁人にムッとなる美月は、リモコンを拾い上げて操作している郁人を非難するのである。
テレビに録画していたアニメが映し出されると、無言でそれを見始める。お互いたまに目が合うと笑い合い。久しぶりに安らかな時間を過ごすのであった。そして、そんな時を過ごしていると、いつの間にか美月は、ベッドで寝てしまうのであった。
「……美月……おやすみ」
そう言って、布団をかぶせてあげる郁人は、スマホを取り出して、ある人物に通話をかけるのである。
「あ……郁人様ですか~? どうでした~? 美月さん大丈夫でしたか~?」
「ああ……大丈夫だ……というか、ゆるふわ……お前も心配性だな」
「……だってですね~、あれだけ毎日連絡してきてた美月さんから~、突然連絡来ないと不安になりますよ~」
ゆるふわ宏美は、昨日美月から、連絡がなかったことに不安を覚えて、郁人に確認の連絡を取っていたのであった。
「……直接美月に連絡すればいいだろうに」
「……そう……ですね~」
郁人がそう言うと、覇気のない返事をするゆるふわ宏美なのであった。
「……美月さんが無事なら問題ないですよ~……でも、何かあったなら……相談……してほしかったですね~」
「……ゆるふわ?」
ぼそりとそう言うゆるふわ宏美の言い方に疑問を感じる郁人なのである。
「い、いえ~……何でもないですよ~……ただ……その……相談されないというのは~……少し寂しいものですね~」
「……そうだな」
誤魔化そうとしたものの、結局本心を伝えてくれるゆるふわ宏美に、同意する郁人は、寝ている美月を見て、後で、美月にゆるふわに連絡するように伝えようと思うのだった。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。ぜひ、ブックマークと評価よろしくお願いしますね。
さて、美月も、やっと、少しは、郁人に緊張せずに触れ合えるようになれたでしょうかね。2章は割と美月中心でしたので、三章は郁人中心になる予定です。もう少しで、2章も終わりですが、また、番外編をやる予定です。中学時代の郁人と美月の話と、美月と宏美の夜の通話内容などをしようかと思っています。そちらも、お楽しみにです。
次回は、安心した美月は、ついに普段通りを通りこして、積極的になり、逆に郁人の方が戸惑う事態に!?
では、次回の更新もよろしくお願いしますね。




