乙女ゲーのヒロインは、幼馴染と恋人同士になれたのに、よそよそしくなってしまうのである。 その12
美月は、お風呂に入り、気合を入れ直して、私服に着替えると、入念に準備を推し進めるのである。いつも通り、ナチュラルメイクをして、髪も、アイロンでセットして、私服も気合の服の完全フル装備(おすすめ最強)である。
美月は、覚悟を決めたのである。郁人とは、何があっても一緒に居ると、そのためなら、妹とも弟とも対立する道を選んだ美月は、今から、戦いに赴く戦士の表情なのである。
美月は、すぐに、美悠の部屋に向かうのである。部屋の前に立ち、深呼吸する美月は、緊張の面持ちを浮かべて、ドアをノックするのである。
「……美悠…いる?」
「……いるよ…何か用? お姉ちゃん」
ノックには反応しなかった美悠が、美月の声に不機嫌に答えるのである。
「話があるんだけど…いいかな?」
美悠は、美月の問いに答えずに黙っているので、美月も黙るのである。しかし、数秒の沈黙を破るのは、美悠の方なのであった。
「お姉ちゃん……お兄ちゃん来てたよね…お兄ちゃんに…私の事…言ったの?」
美悠は、兄が訪れていたことを知っていたのである。郁人が家に来た時、美悠は、郁人を美月の部屋に行かせたらダメだと思って、郁人を止めようとしたが、止められなかった美悠なのである。
美月が、昨日の事を郁人に話していないか不安で仕方ない美悠なのである。
「話してないよ……それは…美悠が郁人に言うべきことだと思ったから……本当は話したかったけどね…美悠のせいだからね…郁人に隠し事するの…好きじゃないんだから」
そう少し怒って、文句を言う美月に、ほっと安心する美悠なのである。
「……で…お姉ちゃん…何か用なの?」
「……昨日の事で…話があるんだけどね」
やっぱりかと、ため息をつく美悠は、郁人が来た時から、こうなることを予想していたのである。美悠は扉を開けると、美月は驚きの表情を浮かべ、すぐに真剣な表情に変わる、そんな姉の美月と顔を合わせて対峙する美悠なのである。
「……美悠…今まで、ごめんね…私、美悠が郁人の事…好きだなんて知らなかったよ」
「……そんなことが言いたかったの? お姉ちゃん」
謝る美月に、美悠は遠回しに本題に早く入ってと伝えるのである。美月は、ためらいの表情を浮かべるが、すぐに真剣な表情に切り替えて、美悠を真直ぐ見つめるのである。
「美悠……美悠がね…郁人の事が好きだって…わかったよ…でもね…ごめんね…私は、郁人の事が好きなの…美悠も知ってるよね?」
そう真直ぐ美悠を見つめる美月の瞳に迷いはないのである。見つめられる美悠は、瞳を泳がせるのである。
「ねぇ…美悠…私はね……本当に美悠に酷いことをしたと思っている…でもね…たぶん、美悠の気持ちを知っていても…私は、やっぱり、同じように郁人と一緒にいて、郁人を独占してたと思う…だって、私は郁人の事が大好きだから…」
大事な妹の美悠を知らずに傷つけていたことを、本当に後悔しているし、申し訳なく思う美月だが、だからと言って、郁人を美悠に譲るかと言うとそれは、絶対にないと断言できる美月なのである。
「ううん…お姉ちゃんは悪くないよ……私が悪いんだ…私が、お兄ちゃんを好きにならなければ…私が我慢していたら…だから、私もごめんね…お姉ちゃん…でもね…私もやっぱり、引けないんだ…だって、そうでしょ…お姉ちゃん…ずっと、ずっと、気持ちを隠すのはつらいもん…だから、はっきり言うね…お姉ちゃん…私は、お兄ちゃんが好き…たとえ、お姉ちゃんと対立してでも、この気持ちは伝えたい」
はっきり、美悠は、美月を見据えてそう言うと、美月は目を瞑り、美悠の言葉を真摯に聞くと、目を開き、美悠を真直ぐに見つめて、優しく微笑む美月なのである。
「そうだね…美悠……それでいいよ……美悠の好きにすればいいよ…でも、私は美悠の邪魔はするし、美悠に郁人を渡すつもりもないよ」
「うん…わかった…ありがとう…お姉ちゃん」
そうお礼を言う美悠に向けて、美月はニヤリと笑うのである。
「じゃあ、早く郁人に告白してね…美悠…結果はわかってるけどね」
美月は、自身満々でそう美悠に言い放つのである。そんな美月に、目を見開いて驚きの表情を浮かべる美悠は、ムッとするのである。
「お姉ちゃん……私…負けないから」
「うん…頑張ってね……美悠」
姉の美月に、絶対勝者の風格が戻ってきたと感じた美悠は、はっきりそう美月に告げると、美月は、美悠を応援する余裕を見せて、階段から下りていくのであった。
美月は、玄関を出て、家の外で、ジッと目を瞑りある人物を待つのである。そして、扉が開く音がして、足音が聞こえるのである。
「……姉貴」
「……雅人君…ごめんね…急に呼び出して…それに、昨日の事も…」
外で待っていた美月に声をかける雅人は、不安そうな表情を浮かべているのである。そんな雅人の方を、瞑っていた目を開いて、真剣な表情で見る美月なのである。
「い、いや…昨日のは…急に言った俺も悪かったと思ってる…ごめん…姉貴」
美悠に発破をかけられ、勢いで美月に告白してしまったことを後悔している雅人は、そう美月に謝るのである。そして、美月を不安そうに見る雅人は、昨日からずっと、思い悩んでいたことを尋ねるのである。
「あ…兄貴には…その…俺が…姉貴の事が好きだって…その……」
「大丈夫だよ……雅人君の事は…郁人には話してないよ……だから、郁人に隠し事しないといけなくなったんだよ」
雅人を遠回しに攻める言い回しをする美月に、良心が痛む雅人は顔を伏せるのである。
「姉貴…俺は…」
「ごめんね…雅人君……昨日…返事をしないで…逃げちゃって…本当にごめんね」
何かを言おうとする雅人を遮り、美月は、そう発言して、真直ぐ雅人を見つめると、雅人は黙って、再度顔を伏せるのである。
「だからね……あの時の返事をするね……ごめんね…雅人君…私にとって、雅人君はやっぱり、弟にしか思えない…それにね……私は郁人以外に告白されても…こう答えるよ…ごめんなさいって…私は、郁人が大好きだから…」
美月の返事をただ、黙って聞いてる雅人は、顔をあげて、美月を見て、悔しそうで、泣きだしそうで、嫉妬に苛まれた表情を浮かべ、こうはっきり美月に告げるのである。
「でも、俺は…姉貴が好きだ…諦めきれないんだ…だから!! 好きでいさせてくれ」
そう告げる雅人に、美月は微笑みを浮かべるのである。そして、残酷に事実を告げるのである。
「いいよ…でも、私が…雅人君を好きになる事はないよ…それだけは、覚えておいてね」
美月は、雅人に対して、冷たい視線と、冷酷な表情を浮かべて、はっきり気持ちを伝えるのである。そして、驚き、うなだれる雅人を残して、美月は郁人の家に入るのである。
その美月の歩みに迷いも後悔も見られないのである。ただ、今は郁人の部屋に向かって、郁人に会う事だけ考えている美月なのである。
残された雅人は、振られて、悲しみに暮れるが、自然と後悔はしていないのであった。そして、美月に自分を見てもらいたいと、真剣に想う雅人は、頑張ることを決意したのであった。
そう、雅人は、美月に一人の男として、一瞬でもいいから、そう思ってもらいたいと願い、叶える覚悟を決めたのであった。
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さて、美月ちゃんの独壇場でした。まだまだ、美月ちゃんの独壇場は続くのです。2章もラストスパートです。幼馴染の絆は、最強なのです。
次回は、美月は、郁人に想いをぶつけるのである。自分がどれだけ、郁人が好きなのかという事を……。
では、次回の更新もよろしくお願いしますね。




