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49話 母の救助とディルの怒り

「そうですね…ディル様は、知る権利がある。すべてお話しします…」


じぃの座っている椅子の正面に俺も座る。じぃの冷静な発言で、少し感情が落ち着き深く息を吐く。それにじぃの口調から真剣さが伝わって来る。興奮したまま話は聞けない…


「マリア様は勇者一行が持っていた転位陣の書かれた紙で城に送られたようです。私は必死にマリア様を探し、半年をかけ見つけたマリア様は…奴隷として売りに出されていました…」


一瞬理解できなかった。俺が知っているのは、マリアは先に城に向かい国王に合わせるなどは聞いたが奴隷に落ちるということが理解できなかった。あくまで被害者の立場で、城に行ったのでは?…

俺は感情のまま握りこぶしを作る。過剰すぎる力のせいで、手が震える…俺が怒っているのではない、この体のディルが怒っているのだ。


「続けます…。奴隷商人に、聞いてみると魔族を擁護するようなことを喚くので、魔族に洗脳されたとして呪われた女として売っているだそうです。」


「助け…られなかったのか?…」


「私は魔族という身、助け出したところで…デュークもディル様も死んだと思っている彼女を私がどうすればいいのかわかりませんでした…」


「その奴隷商人はどこにいる…どこの町にある…」


「マリア様の生まれた村…今では町となっていますが、勇者の国「ウェッタ」から東に数キロいた所です。行かれるので?…」


俺は無言で立ち上がり、扉から出て行く。じぃの声は聞こえていたが、理性が働かない…頭の中には怒りで染め上がっている。いつの間にか、早歩きになり今では走っている。感情が勝手に体を動かす…


「ディル様…申し訳ありませんでした…」


じぃのつぶやくような謝罪など、ディルには聞こえなかった。



外に出るとすぐに翅で空を飛ぶ。自分の持てる最速の速さで…。10分ほどで俺が育った国についた。かなり大きいがそんなことどうでもいい。東に数キロ…ロット、道案内を頼む


『了解しました。その位置から45度左に6キロで目的地です」


ありがとう。

俺は再び最速の速さで飛んでいく。近くにいた魔物を全て、すれ違いざまに殺している。

1分もしないうちに、ロットのいう目的地についた。今は7時だというのに、町はかなり賑わっている。冒険者ではなく、ほとんどが身なりのいい格好をしている。貴族か?…

通りが2つあり、宿屋が並ぶ通りと商店が並ぶ通りだ。俺はそっと町に降り立つ。上から見て商店が並ぶ通りだが、降りて気づいた。どほとんどの店が奴隷を取り扱っている。それ以外の店も奴隷用の安っぽい武器や防具を売っている。


『説明します。…町の名前はヘイロ。この町は奴隷の町と呼ばれているほど奴隷の売買が多いです。多くの奴隷商が立ち並び、最近貴族の中で人気になり、町の規模も大きくなりました。目的の店は一番奥にあります』


ありがとう。

俺は走って一番奥の店に向かう。すれ違う多くの人間は嬉しそうな笑顔が見え、その後ろにほぼ全裸のような格好に首輪をした獣耳や鱗肌の亜人が続く。皆目に生気が感じられない…歩く屍のような感じだ。


『説明します。皆自分の今後に絶望しているのです。男は奴隷兵として戦場に行ったり、悪い場合では県の試し切りで殺されたりですね。女の場合は性奴隷が多いですね。残酷な世界です』


お、久しぶりにロットが悲観した。まあ、残酷だよな…正直転生前の記憶がある俺は、やはり価値観が違うよな…この世界じゃ、奴隷だし仕方ないってのが普通の考えだもんな…どうにかできることはないものか…

考えていると、マリアが売られている店に着いたようだ。建物は、周りと比べると頭一つ飛び抜けた大きさで、実入りがいいのが伝わって来る。俺は堂々と店に入る。店は綺麗にしてあり、安物の武器や防具に首輪まで置いてあった。すると、丸く太った男が汗を垂らしながら近づいてきた。あれだ…荒地の魔女っぽい…な。しかも、オークレベルで臭い…


「ここはガキが来るところじゃねーぞ。帰んな」


いつの間にか、デュークの姿が解除されいつもの小さなディルになっていた。魔族の地から来たせいで、魔力に限界がきたのか…まあ、そんなことは関係がない。

俺は素早く腰の「星斬り」を抜くと男の首に近づける。男は汗をさらに書き、匂いもさらに臭くなる


「ここに…マリアという奴隷がいるはずだ…案内しろ…」


「マリア…ああ!いる!ま、まずは剣を下せ!」


「黙れ…殺すぞ…早く案内しろ」


先に男を歩かせながら背中に剣を近づける。男はゆっくりと、店の奥につながる扉に入るので、俺も続けて中に入る。すると、そこには多くの檻があり、魔獣が吠えながら襲いかかってくる。檻がなかったら、今頃死んでいるな…

見ていると、終生の森で倒したことがある魔物もちらほらいるので、レベルは結構高いのかもしれない。


「まだか…」


「も、もうすぐだ!こ、こんなとしてタダで済むと思うなよ!」


男が吠えるので剣で服を少し切る。すると、黙って歩き始めた。しばらく進むと、魔獣のエリアが終わったのか、人間が入っている檻になった。多くの人間が男を睨み、そして、その後ろで剣を近づけている俺を見る。


「どこにいる…」


「あいつは、魔族と関わりがあるから奥に入れてある!す、少し待て!」


しばらく歩くと一番角まで来た。男が一つの檻の前で立ち止まったので、俺も檻の中を見る。すると、そこには力なく壁に寄り掛かる女…マリアだ…燃えるような髪色はくすみ、身体中がやせ細っている。それに一番俺を怒らせたのは、両手、両足がない。正確には肘から先と膝から先がない。

男は一瞬で俺に近づいてくる。


「なっ…か、かぁ…さん?…」


「お前もこれで奴隷だ!『隷属化』!!」


男が詠唱を破棄した魔法で俺に触れようとするが、剣術を発動させ一瞬で両手を切り落とす。男はすぐに悲鳴をあげ倒れこむが、俺は一切気にすることなく剣を振るって檻を破壊する。

かなりの音が響いたにもかかわらずマリアは動かない。俺はそっと近づく…そして、気づいた。全身が焼け爛れ皮膚がぐちゃぐちゃになり、耳も目も潰されている。しかし、まだ生きているようで微かに胸が動いている。

男の悲鳴を聞いてか、次々と屈強な男たちが出てくる。飼われた犬だろう…


「お、お前たち!そこの小僧を斬り殺せ!よ…よくも腕をっ!殺せ!」


男のその一言で、男たちが俺に斬りかかってくる。ん?…この動き…どこかで…

近づいてくる男たちを装備ごと腕と足を切り落とす。剣術のスキルを使っているので造作もない。男は次々とダルマになっていく男たちを見て顔色がどんどん青くなっていく。俺はゆっくりと男に近づいていく。


「こ、小僧…わ、わかった!金ならやる!かわいい奴隷も用意してやる!た、頼む、こ殺さないでくれ!」


男はない腕のせいで体を起こせず、尺取虫のような動きで必死に俺から逃げようとする。俺は男の肩を踏みつけ動けなくしてから髪を乱暴に掴みこちらに向ける。


「金も奴隷もいらない…答えろ。マリアがこうなった理由を説明しろ」


「わ、わかった。フゥ…。その女は吸血鬼皇帝に生贄として差し出されたたが、勇者様が吸血鬼皇帝を倒し救い出した。しかし、その女はすでに精神を犯されたいるようで奴隷になった。その傷はわからない!どうせその吸血鬼皇帝がつけたのだろう!もう話した!終わりだ!」


「そうか…ではもう一つ。ウェッタの騎士がなぜここにいる…」


「そ、それは…言えない!」


「そうか…なら、終わりだ。」


俺は男の首を一瞬で刎ね上げる。国王…何か裏があるな…それより前にマリアをどうにか救わないければ…

そう考えていると、頭の中にロットの声が響く


『警告します。奴隷の主人が殺されると、所持していた奴隷も5分程度で死にてます。』


マジかっ!上書きすればいいのか…えーと奴隷の契約ってどうすればいいんだ?そういえば、こいつなんか魔法を使って来ようとしたな…

俺は素早く倒れている男からスキルを奪い、ステータス画面で確認する


☆スキル

・隷属魔法

  奴隷になる理由が明確な場合、対象を奴隷にできる。

   ・隷属化

   ・隷属テイム


あったが、微妙な魔法だな…今はそんなこと言っていられないな…

すぐにマリアに近づくと魔法をかける。一瞬淡い青色の光を放つ荊の輪がマリアの首元に出現すると、すぐに消えた。これで安心かと思ったが、周りの檻から苦悶の声や悲鳴が響く。こいつらもか…これで見殺しにするのも不快だな…

俺は素早く近くの檻から順々に切り壊し、苦しむ奴隷たちに魔法をかけていく。魔物たちもかけてしまった俺は優しすぎるのかもしれないな…


「はぁ…回復できる魔法持ってるやつを殺しに行くか…」


俺が店をすぐに出ようとすると、檻からついでに助けた奴隷の一人…腕が立ちそうな人族の男が俺に頭を下げる。


「ま、待てくれ!お前!あっしたちを助けてくれてありがとう…」


「ああ。そうだ、動ける奴隷…戦闘できる奴隷はそこらへんにいる兵士の防具を奪って着ろ。そんで、この店に来る奴は全員追い払え。誰も中に入れるな…それと、兵士は殺すな…聞きたいことがある。頼むぞ…」


男は俺の指示に驚きながらも了承した。まあ、嫌ですとは言えないのが奴隷なんだがな…

俺が店から出ようとすると、男は焦ったような口調で問てくる。


「…どこに行くんで?…」


「すぐ戻る…」


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