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48話 牛魔VS老蝙蝠

戦い始めてどれくらい経っただろうか…忘れた。

多くの死体が俺の後ろに転がり、俺の前の生者は通り過ぎると共に死者となる。なんの面白みも無い。ただの作業と化した殺生。まあ、俺に武器を構えた時点で死ぬのは確定だな。

じぃと俺を比べると、殺した数はじぃの方が上だが、上位の魔族は皆俺を襲ってくる。まあ、あまり大差は無いけど…

しばらく殺していると、危機察知が頭の中に警鐘を鳴らす。

ふと視線を上げると、頭一つ飛び抜けたミノタウロスがゆっくりとこちらに向かってくる。大きく捻じ曲がった黒い双角は鈍く光を反射し、牛は下顎のみに犬歯があると聞くが目の前の牛は確認できるすべての歯が鋭く尖っている。


「親玉かな…」


次々とミノタウロスが道を開けていく。どうやら手は出すなってことだろう。

親玉ミノタウロスが大きな瞳を俺に向けてくる。俺はまっすぐ「威圧」を込めた視線をおくる。


「ははは…生きていたか、デュークよ。我に勝った貴様が人間などに負けるはずがない。」


「……」


「ふむ…何も言わぬか。貴様らしい…では、いくぞ。」


親玉…確か、アステリオスはその体格にあった巨大なハンマーを振り上げた。ウォッカの鉄拳ハンマーより数倍はあるハンマーを軽々振り上げる姿は悪魔だ。まあ、悪魔なんだけど…こう…悪魔らしいというか…?

なんの危機感もなく、振り下ろされるハンマーを眺めていると、突然何かがハンマーにあたり軌道がずれた。

俺とアステリオスは同じタイミングで飛んできた方向に首を向ける


「私が先に相手になってやろう…」


そこには返り血で真っ赤に染まった髪をかきあげながら笑うじぃがいた。うーん…もう少し若ければね…

すると、アステリオスが脅しをかけるような低い声で出す。


「何じゃ貴様…貴様が老いぼれか。貴様などに用はない…デュークとの一騎打ちを邪魔するようなら…余生を土の中で過ごすことになるぞ?」


アステリオスがそう返すが、すでにじぃの姿はなく次に現れたのはアステリオスの顔面付近で槍を振り上げていた。そのままアステリオスの顔面をフルスイングし、巨体を吹き飛ばす。


「何だ?…歴代最強ではなかったのか?これでは、先代の方が強かったが」


じぃは未だ土けむりが立ち込める中、追い打ちをかけるかのように突っ込む。

なんかかっこいいけど…てか、今の槍でやること?…棒術かなんかじゃね…てか、俺空気!


「なぜ、我が歴代最強と言われているか知っておるか、老いぼれ。」


そう言って立ち上がるアステリオスの身体中が真っ赤になり明らかに先ほどよりステータスが違うのがわかる。そして、右手はじぃの体を握っていた。かなり力が入っているようで、苦悶の表情だ。


「冥土の土産に教えてやろう…我には早さがあるのだ。動きが遅く、鎚技ばかりを使う先代共とは違う。」


そう言ってじぃを握る手に力を込める。すぐに、腕を切り落として助けようとすると、じぃはそっと腕に噛み付く。

その瞬間、腕が爆散し血が俺の顔を真っ赤に染める。アステリオスの大きな悲鳴と、尻尾血をついたのか地面が揺れる。正直何が起こったかわからなかったが、顔についた血を拭って目を開くと、そこには美少年が立っていた。真っ黒な黒髪に、幼さの残った童顔。年齢は20代前半くらいか?しかし、服装はじぃだ…まさか…


「やはり、男の血はまずいな…それに効率も悪りぃ…まあ、いいか。しっかし、300年ぶりの血は生き返るぜ…。いいことを教えてやろう、牛ガキ。吸血鬼ってのはな…老いがないんだよ。話は終わりだ…戦いもこれで終いだ。」


そう高い声で言うと、美少年は体をボキボキとならす。


「貴様…誰だ!よ、よくも俺の腕を…殺す必ず殺す!」


「なんだ…まだいるのか…」


アステリオスは消し飛んだ右手をかばいながら左手でハンマーを若いじぃに振り回すが、じぃはそっと触れるように止めゆっくりと詠唱を始める。アステリオスはハ鼻息荒く再びハンマーを横振りするが、詠唱を続けながらハンマーを華麗な回し蹴りで破壊する。あれ…金属製だよな…


「神の血を浴びた聖槍 使い手を選べぬ道具の末路 名を捨て聖者を狩る墜ちた槍…」


詠唱が終わった瞬間、アステリオスの体の周りに十本の黒槍が出現する。今まで出した槍より、どす黒く一層不気味な雰囲気がする…


「…『堕槍 荊棘』」


槍は何の抵抗もなくアステリオスの堅牢な皮膚を易々と突き刺さっていく。手首、肩、足、腿など関節ばかり。わずか数秒で、全身槍が突き刺さったアステリオスの死体が出来上がった。壊れたマリオネットのように…怖いな…

そんな感想を思っていると、若いじぃが近づいてきた


「申し訳ありません…少し油断をしまして…攻撃を喰らいました…」


「いいや、それは構わないんだけど…それがじぃの全盛期?」


「全盛期はもう少し年をとってからですが…いかんせん、男の魔族の血ですので力が出しにくくてたまりません…」


「それでもかなりだと思うけど…その格好のままのか?」


「いえ、すぐ戻ります。満月の光に照らされた人間の女の生き血で若返ります」


「そうか…まあ、戻りたければ戻ればいいさ。さあ、雑魚はどうする?…」


俺が周りにいたミノタウロスを睨むと、皆武器を下ろしていた。抵抗する気は無いようだ。なんか殺す気も失せてきたな…俺は再びじぃを見る。


「そうですね。国に帰してもいいのですが、王のいない国は破滅しかありませんから、殺してしまってもいいのでは?」


「破滅?…」


「ええ。王がいなければ、ただの烏合の衆ですから。」


「そうか…まあ、これからはこいつら次第だからな。逃がすか…」


「はい。ってすでに逃げておりますね…」


多くの生き残ッたミノタウロスが必死に背を向けて走って逃げる。まあ、このままでいいか。

俺は振り返り、殺してきたミノタウロスの死骸を眺める。4千くらいあるんじゃないか…はぁ…


「さて、魂記録するか…これは骨が折れるぞ…」


「ははは…お手伝いいたしますよ」



現在、6時になったくらいだ。二時間は魂記録をしている。そして、今最後のミノタウロスをし終わった。

死体はどうするかと聞かれたが、焼くにしても時間がかかると思ったので、特大の黒い吃驚箱を発動させ全部放り込んだ。地面に突き刺さっていた槍はもともと魔力で構成されていたので、魔素化して霧散した。


「帰るか…」


「そうですね。今回は本当にご苦労様です」


「ああ、じぃもな。これからもここを守っていこう…」


「ええ。」


のんきにじぃと話しながら屋敷に戻る。だんだんと、じぃの体から黒い靄が吹き出してくると早送りのように老化していく…


「戻りましたが…」


「そっちの方が落ち着くよ」


いつものじぃの嫌味のある口調を真似ながら、そう言うとじぃは苦笑しながらも大きく頷いた。家族っていいな…なあ、お父さん…母さん…



俺は風呂から上がり、髪の毛をタオルで乾かしているところだ。この世界にもシャワーやお風呂というものがあり、かなり快適だ。ちなみにお湯などは魔石に水系の魔力を入れることで水を出し、シャワーや蛇口につながる配管に火属性の魔力をかけお湯にする仕組みらしい。温度も水圧も自由に変えられる。


「やはりデュークより小さいようですね」


じぃは俺の格好を見る。今俺が来ているのはデュークの部屋着だ。綿でできており、かなり暖かい。しかし、袖がかなりかなりダボダボだ。例えるなら…JKが大人のワイシャツを着ている感じだな。JKだ。


「まあ、仕方がないさ。そうだ、聞きたいことがあるんだが…」


「はい、なんでしょう」


「母さんなんだが。どこにいるんだ?…」


そう言うと、じぃの顔が一気に暗くなる。どういう意味かわからない。マリアは保護されたんじゃないのか?…

俺はじぃの表情が、不安になりつい大声になる


「母さんは、どうなったんだ!早く答えろ!じぃ!」


「そうですね…ディル様は、知る権利がある。すべてお話しします…」



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