47話 五千のミノタウロスVS二匹の蝙蝠
装備をどうやって解除するのかわからないので、そのままの格好で客間に戻る。翼は邪魔なので折りたたみました。
俺の姿を見たじぃは「やはり」という笑顔で俺を見てくる。多分スキルになることなど知っていたのだろう…そんなじぃも、さっきまで着ていた服と少し違う。執事のような燕尾服なのは変わらないのだが、色が少し紫に見える。そして、一番はマントだ。蝙蝠の羽が直にマントになったような感じだ…それで…なんでオールバック?…まあ、かっこいいけどさ…ちょいワルオヤジこしてるよ…マジ悪オヤジだよ。あ、じいちゃんだった…
「その格好がじぃのガチ装備?」
「ええ…何年ぶりでしょうか…300年ぶりですね。この格好は若い頃していたもので、血が騒ぎますよ」
騒ぐと言った瞬間、一瞬だけ目が5cmほど開き、白目が黒く黒目の部分が赤くなっていた。化け物だな…唇から二本の犬歯が鋭く伸びているし。見るからに吸血鬼そのものだ…
「ディル様…決して無理はしてはいけません…。まずはこの屋敷に闇領域を掛けておいてください。何かあったら、すぐに飛び込めるよう近くで戦闘を…」
「闇領域は掛けるが、俺も暴れるぞ?」
「わかりました…ではじぃが全力でお守りいたします…。では…参りましょう」
じぃが先に進むので、その後を追う。しかし、「危機察知」というスキルのおかげでじぃの強さがある程度わかる…魔眼の【鑑定】を使いたいが…まあ、あとで本人に許可を取ってからにしよう…
しばらく無言で歩き、屋敷から出る。俺が来た方とは逆の出口だ。魔族の地側ってことか…
死体が地面が伸び出る串に突き刺さっている。肛門から口を貫通してるな…しかも、若干円錐になっているようでなかなか落ちないな…さすがじぃ。
屋敷の門を出ると、じぃは門を閉めた。俺は屋敷を包み込むほどの大きさにまで魔力を注いだ闇領域を掛ける。じぃはそっと、門の前に立つと何かを唱え始める
「狡猾に 無自覚に 残忍に 命を狩る黒槍 下かの地に姿を隠せ 『黒竹棘槍』」
何かの魔法ををじぃが唱えたは何も変わらない…失敗したのか?…まあ、いいけど。
「じぃ。数はどれくらいなんだ?…」
「そうですね…5千といった程度でしょうか」
「五千かー単純計算、2千5百体倒すのか…」
「ははは。ディル様は私が何としてでもお助けしますから大丈夫です」
「頼もしいな…」
▽
「アステリオス様!もうすぐ山頂です。あと20分程度です」
「そうか。じぃ一人なら歩兵で十分であろう。さっさと始末しろ…」
「はっ!では、一番前の兵を先に向かわせます。」
「うむ…俺がそのまま屋敷に入れるようにしておけよ」
連絡に来た兵士が大きく頷くと、走って出て行く。さあ、我々ミノタウルスが世界を支配するのだ…
△
「じぃ…来たな…」
「ええ。」
スキル「感器官強化」のおかげで、目視で確認することができた。まさに牛だ。前方に鋭く伸びた角が二本…全身は茶色い毛で覆われている。そして二足歩行で肉体の筋肉からそのパワーを知ることができる。そして、そのパワーを生かせるハンマーやアックスなどを担いでいる。ずっと待っていると距離が1kmを切ったくらいになった。すると、じぃが再び詠唱をする
「狡猾に 無自覚に 残忍に 命を狩る黒槍 我が魔力の全てを使い 雨と降れ 『黒竹棘槍』」
すると、「危機察知」が上を警告してくる。数秒後、天から雨のように5mはある黒槍が降ってくる。槍自身の重さで、速度を上げ地面に深々と突き刺さる。多くのミノタウロスが槍に突き刺さっていく。こう言う串刺しも得意なんですね…しかし、それでも勢いは止まらず迫ってくるミノタウロスに俺も剣を抜く。切りかかろうとすると、じぃが手を出してそれを制す。そして、500mほど近づいてきた瞬間じぃが手を挙げる。
その瞬間地面から鋭く尖った黒槍が飛び出してきた。運が悪ければ体を貫いて串刺しに、串刺しにならなくとも足を怪我したりと色々無事では済まないな…これは…すごいな…千体は死んだんじゃないか?…
「フゥ…ここからは戦闘ですか…ディル様いきますよ!」
「ああ!」
気がつくとじぃは真っ青な槍を持って掛けていく。俺もその後を追う。
槍に当たらなかったミノタウロスはそのまま、俺たち二人を殺そうと襲いかかってくる。じぃは華麗な槍さばきで、殴り刺し殺す。ミノタウロスはその巨体が邪魔をし素早く動くじぃに攻撃することができない。しかし、その攻撃力は地を揺らすほどの威力で、何回かじぃの態勢が崩れかけた時があった。危ないな…
一方俺はというと、武器を振り回して近づいてくる敵の腕を切り落とす。すると、武器は振り回されていた遠心力にしたがって周りにいた仲間に直撃する。振り回していた奴が、それを理解する前に首を切り落とす。うん!快・感!
なんだろう…自分が思っている通りに体が動く。相手がどう動いてくるか先にわかる…なんだろう、この気持ち…まるで、敵をばっさばっさ切り殺す『○○無双』系のゲームみたいだ…
『説明します。それはスキル「殺生衝動」の効果です。生あるものを一人でも殺すと発動するスキルで、殺す行為の威力増加や痛覚をある程度麻痺させたりします。戦闘が終了すると、治ります』
ほぉ…実に興味深い…
って、最悪なスキルだけど今の状況にはもってこいじゃないか。
次々とミノタウロスを斬り伏せなぐり殺し、吹き飛ばしていると一際、大きな体に単純な装備をした大きな牛がやってきた。理性がないのか、近くの仲間を自慢のハンマーで吹き飛ばして居る。
そのミノタウロスが、こっちに突進してきた。終生の森のあのサイの方が迫力があるが…まあ、所詮牛さんだ
すると、じぃが突然俺の方を向いて巨体のミノタウロスが突進してきていることを知らせるが…知ってる
「ディル様!危なっ「『闇刃』
じぃが必死な顔で俺の方を向いてきたが、俺がある程度溜めておいた闇刃を使うときれいに胴体から真っ二つになった。それだけじゃ終わらず、闇刃はその後ろにいたミノタウロスなどの体を切り裂いて消滅した。じぃはその場で固まってしまい、すぐミノタウロスが攻撃してきたがすぐに俺が切り殺す。
「サンキューじぃ。」
「何もしておりませんが…」
「いや、教えてくれて?」
「はぁ…」
そして、この闇刃は、闇魔剣士の追加スキルでもある。つまり、剣を振り回せば溜めがないが、ほぼ不可視の刃が飛んでいく。剣術の「スラッシュ」の闇魔剣士バージョンみたいなものだ。
よって、次々に近くにやってくるミノタウロスを対峙することなく殺していく。その頃にはじぃは俺の実力を理解したのか少し遠くで戦っていた。何本も地面に突き刺さっている槍を足場に、攻撃をかわすと上から槍で刺し殺す。
俺はのんきに斬り殺しながら、体に魔法の闇刃を溜めある程度敵が集まってきたら闇刃を発動させる。俺とじぃは二人にも関わらず、前進していく。二対五千が、いつの間にか2千ほどになっていた。
すると、突然誰も襲ってこなくなった。不思議に思っていると突然上から二匹のミノタウロスが斬りかかってきた。一匹は剣で受け止め、もう一匹には鬼壊裏拳でなぐり殺す。状態発動スキルの掛け持ちだ。
『説明します。状態発動スキルはきちんと発動条件を満たしていれば多重発動可能です。しかし、戦闘中に二つのことをするのはなかなか難しいものですが』
まあ、発動できるだろうとは思っていたよ。
一匹の牛はそのまま顎の骨が折れ、戦闘不能。剣で受け止めた方は俺を睨んでいる。
「デューク…生きていたか!」
「……」
デュークの口調がわからないので黙る。すると、一匹のミノタウロスは後方に下がり俺の出方を伺いながら話しかけてくる。どうやら上位魔族らしい。
「デュークが死んだというのは、ガセだったか…まあ、いい。アステリオス様が直々に貴様を殺しにくる!」
俺はゆっくりと剣を構えるとすぐに駆け出す。剣の動きに目移りし、俺の行動に瞬時に反応できなかったミノタウロスの上位は一瞬で悟った。デュークでは無い。
「これで終わりか…」
ドサっ…
地面に牛面の頭を落とす。首から大量の血を吹き出しながら、ゆっくりと倒れる。




