表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/98

16話 皇帝の黒馬と、老馬の最後

「ケルピーさんは、昔から軍馬を育てていたのですか?」


「いんや、昔はテイマーとして冒険者をやっていましたよ。もともと家系がテイマーなもんでね」


「そうなんですか。テイマー……具体的にどんな職種なんですか?」


「テイマーはモンスターを使役する職種でさぁ、まあ、モンスターとの相性ってのがあって使役できないやつもいますがね…ちなみに、私は四足で翼がなければ基本使役できますよ」


「おお!そうなんですか!それなら今でも冒険者できるんじゃないですか?」


「まあ、もう年寄ですから冒険なんてもんはできませんさ。さて、そろそろ行かないと。ではディル様、そうですな……今から一時間後の2時に馬小屋に……あ、馬小屋の場所わかりますか?」


「馬小屋ですか……確か城の後門あたりにある開けた場所にありましよね?」


「ええ、そうです!では、1時間後に小屋に来てくだせ。」


ケルピーはしわくちゃな笑みを俺に向けると、一礼して去っていく。

俺はゆっくりと飯を食べる。この世界の料理はかなりおいしいので、食べ飽きないが油で揚げる、蒸すといった料理法がないのか、基本焼いてあるか煮てあるものばかりだ。まあ、気にならないがたまに肉まんが食べたくなる…

故郷の肉まんを思いながら、最後の肉を頬張りパンにかじりつく。もぐもぐと咀嚼すると、飲み込むといつものように手を合わせる。


「ごちそうさまでした。」


「お粗末まさでした」


突然声をかけられて驚き、声の方を向くと恰幅のいいおばちゃんがケルピーの残した食器を片していた。この世界では料理は自分で運ぶが、片づけるのは清掃担当に任せるのが常識らしい。


「こんにちは、ハマルさん。料理おいしかったですよ」


「そうかいそうかい、喜んでもらってうれしよ。本当にディル様は可愛いね〜私の娘と同じ年だね〜」


「娘さんがいらっしゃるんですか!お名前は?」


「カペラよ。小さな女の子でね…少し気が弱いけどやさしい子よ」


「そうですか。いつか会えるといいですね」


「あら気があるのかい?まあ、いつか会えるのさね!」


「そういう意味ではありませんよ。まあ、会えたら友達になってくれるかと思いまして…」


「あら…ごめんなさい…へんな事言ってしまったわね…」


俺は、ハマルに一礼するとそのまま食堂を出た。時刻は1:30分を回ったくらいで、余裕があるがケルピーと約束した馬小屋まで向かう。いつも、ウォッカの朝の鍛錬のランニングで何度も見ているので場所は知っている。城の裏口から出ると、すぐに開けた場所になっていた。みなは、裏庭と言っているらしい。

裏庭の隅に小さな体育館程の馬小屋に向かう。馬小屋といっても、馬だけじゃなく他にもいるらしい。実際に見たことはないので、らしい。止まりだ。

俺が馬小屋まで来ると、ちょうどケルピーが出てきた。


「おお、ディル様!早かったですね。時間もあるもんで、少し見て回りましょうか」


そういうと、のんびりとケルピーは馬小屋に入っていったので後を追う。馬小屋は一つ一つ区切られていて一匹ずつ馬が入っている。馬は筋骨隆々でたくましい。これなら鎧をきた騎士が乗っても大丈夫だろう。日本の馬と見た目でいう違う部分といえば、尾が二つになっているくらいだ。ポニーテールがまさかのツインテールだ。ウン…カワイイヨ!

どんどん先に進んでいくと、馬が終わり、今度は家畜小屋になっていた。大きな角が生えた豚…いや、猪?や目が四つある鶏などだ…めちゃくちゃ不気味だったといっておく。それと、臭い。以上。

最後に区切りがなくなり少し広いところに一匹の馬が居た。馬は先ほどみたツインテールの馬をはるかに超えてデカかく、鬣は燃えているような赤さ、全身の異常なまでの黒さに赤いラインが見るものに畏怖を与える。しかし、俺にはどうも怖くはない。馬はケルピーを見ると、襲い掛かろうと柵を蹴る。


「ディル様、あまり近づかないでくだせぇ。こいつは、いまだ私に言うことを聞かないんです…」


「そうですか…この馬は?」


「この馬は、六年前…魔皇帝討伐の際に、魔皇帝の屋敷に繋がっていた馬です。おそらくは、ロードの馬かと…」


「そうか…よっと。」


俺はすばやく、馬小屋の柵をよじ登り悔いの上に立つ。すると、馬は俺をまっすぐ見つめてくる。先ほどまで鼻息荒く近づくものを蹴り殺す勢いだったが、今は目の前の存在を確かめるようなそんな感じだ。

馬がゆっくりと近づき手が届く範囲まで来たので、そっと額を撫でる。すると、馬は大きく鳴くと前足を出してきた。鳴き声が「ひひーん」じゃなく「ぐるるぅ」だった。カッケーな、おい!


「あ、危ない!ディル様!…」


ケルピーが必死に俺にかけてくるが、馬の前足は柵に乗っかった。俺は元々殺気が感じられなかったのでビビりはしなかった。馬は俺に顔を擦り付けてくる。何か、甘えるような感じだ。俺は少し強めに撫でる。


「な、なぜ…」


「どうしたんですか?ケルピーさん?…ちょっ!やめろって!こらっ!」


俺がケルピーと話していると、馬が顔を擦り付けてくる。案外可愛いな〜

しばらく、馬は撫でていたがそろそろ2時になるんのでお開きにする。俺はそっと柵から降り固まっているケルピーさんを起こす。まあ、なにやら物騒なことを言っていたが聞こえないふりだ。


「に、二時ですな…では、こちらへ…」


馬小屋の隣に小さな小屋があり、その中に入っていった。この小屋は馬の出産か、仔馬用らしい。その小屋にふかふかの藁の上に毛並みが白くしわくちゃな馬が一頭横たわっていた。

ケルピーさんは、柵の鍵を外し中に入っていく。


「おお、すまないな…よく頑張ってくれた。よしよし…もうすぐ楽になるからな」


優しく労わるように、ケルピーさんは老馬を撫でる。老馬もわかっているのか、そっと目を閉じた。


「どうするので?…」


「すでに毒を飲んでいますので…後は、私の…テイマーのスキルで」


ケルピーさんはそっと、馬から離れるとそっと何かを唱える。すると、突然天井から光が降ってきて馬を照らす。老馬は気持ちよさそうに目を閉じると、そのまま動かなくなった。ケルピーさんの詠唱が終わるころには老馬は完全に動かなくなっていた。


「終わりました…後は、シリウス様の聖火で火葬です。」


「そうですか…少し触れても?」


「どうぞ…」


俺はそっと老馬に触れる。すると、魂記録が発動したようで魂が浮かんでいた。そっと魂を握ると、体に吸い込まれていく…。


『《魂記録》を吸収しました。《魂記録》からスキルを吸収しました』


お、人間の魂じゃなくても奪えるのか!ラッキー。

俺は顔だけ悲しそうな表情を作り、ケルピーに見せる。ケルピーはそっと笑顔を作ると俺を励ましてくる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ