17話 黒馬の主人
ケルピーさんは俺の肩をそっと抱き、やさしい目で俺を励ましてくれる。
「あまりいいものでは、ないでしょう。しかし、冒険者は死に近い仕事です。少しづつ慣れていけばいいのです。私の息子は子供の頃は酷く死を怖がっていましたよ」
「はい…」
「少し時間を置きましょう。それでは、私はシリウス様を呼んできますからお部屋に戻っていてください…」
「あ!ケルピーさん!さっきの馬のところに居てもいいですか?」
「え…ええ。いいですよ。ですが、危険ですので…」
「わかっています。では!」
苦笑いを浮かべるケルピーさんを放置し、俺はスキップしながら馬小屋に向かう。馬小屋では、デュークが居た屋敷に居たという馬が俺を見つめていた。徐々に近づく俺に馬が嬉しそうに鳴く。
俺はすぐに柵を越えると、すぐに馬がじゃれ付くように首を擦り付けてきた。少し強めに撫でてやりながら、自身はステータスを確認する。さっき、老馬の魂からスキルを入手したようでなんのスキルを得たかわからない…馬のスキルが人間の俺にどんな影響を与えるか疑問だ。
「『ステータス』」
ーーーーーーーーーーーーーー
☆基本情報
名前 ディル
年齢 6歳
性別 男
職業 未設定 (墓荒らし)
☆ステータス
攻撃 3796
防御 2896
魔力 2796
速さ 3554
知 2946
運 300
☆スキル
・魂記録
・闇領域
・疾走 new!
・闇魔剣術 lv9
・闇魔法 lv9
・火魔法 lv2
・闇触力得 lv3
・詠唱破棄 lv3
・剣術 lv7
・槍術 lv7
・弓術 lv3
・偽装 lv6
・狂言 lv5
・無表情 lv6
・身体強化 lv6
・物理耐性 lv5
・魔法耐性 lv3
・苦痛耐性 lv4
・精神攻撃耐性 lv3
・野性的格闘 lv1 new!
☆称号
・未熟者
・神への冒涜
・転生者
・皇帝の息子
・赤ん坊皇帝
・騎馬道 new!
ーーーーーーーーーーーーーー
馬からとれたスキルは二つか…案外少ないものだな。まあ、モンスターのレベルによってスキルは違うと思うし仕方がないだろう。よし、では一つ一つ見てみるか!
『疾走は、状態スキルです。両足が一瞬地面から離れる瞬間がある移動中に発動します。補助として、さらなる加速や持久力の一時的向上。また、他のスキルを発動しやすくなります。』
ほほ…これは馬じゃなくても使えるな。両足が地面から離れる瞬間がある移動…つまり走っている状態で発動するスキルか。走っている速度を上げられるのはいいことだ。それと、走っている時にスキルが発動しやすくなるのか。これはいいな…走っていると、視野が狭くなったり判断力が低下するからな。
『野性的格闘は状態スキルです。武器を持っていない状態で、自身が相手に敵意が状態で発動します。補助は、攻撃力の向上と痛覚麻痺です。
追加スキル
「後ろ蹴り」
「前蹴り」
「体当たり」 』
うーん…なんとも微妙なスキルだ。まあ、馬らしいと言えば馬らしいが…でも、使いやすいスキルだな。武器を持っていない状態で、俺の敵意発動状態なんて、たくさんあるからな。しかし、追加スキルが馬らしい…それと、痛覚麻痺ってアドレナリンがでるって事じゃないのか!?まあ、戦闘状態なら仕方ないな
ステータスの確認が終わったので、再び馬と遊んでやる。よしよし〜
馬を撫で続けていると、馬が突然両膝を付けて伏せた。首を使って俺を背中に追いやる。
「乗ってもいいのか?…」
馬が大きくな鳴くので、そっと馬の巨体によじ登る。完璧に馬に跨ると、ゆっくりと立ち上がった。一瞬で視界が2mは伸び、視野が広がる。おおお!すげえ!
俺が一人で興奮していると、突然馬が前足を上げ大きく鳴いた。まるでナポレオンの絵画のような光景だろう。直後馬が、柵を乗り越え馬小屋を飛び出していった。
ものすごい風が顔に当たるが、疾走感と相まって逆に楽しくさせる。ものすごい勢いで普段走っているように城を外周する。騎士の人や、ウォッカさんに多くの庭師の人が馬を見て驚いている。俺はみんなに手を振っていく。
しばらく走ると、馬も落ち着きだし止まったので飛び降りる。そして、再び馬の頭を撫でる。すると、シリウスとケルピーさんがやってきた。
「ケルピー殿。すまないが、ウォッカを呼んできてもらえんか…」
「は、はい!」
ケルピーさんは、急いでどこかへ駆けていく。俺はその後姿を見送ると、シリウスが俺に迫ってきた。その目は真偽を問う目だ。何か問題がある時に、するこの目は誰も嘘は付けない。
「ディル…お主は、誰かに馬の乗り方を習ったのか?…」
「いいえ、習っていません…」
「そうか。それはローズに誓えるか?」
「はい。」
「そうか…すまない。疑ってしまった。」
まあ、本当に乗馬の訓練なんてしたことないし嘘なんてついてないんだけど…そんなにやばいことなのか?
うーん…てか、馬に乗ったというより馬に乗せられたっていうほうが正しいんじゃないか?
数分間シリウスと何も話さないので空気が悪くなる。すると、馬が俺に甘えてくるので撫でてやるとシリウスの表情が険しくなった。
ちょうど、ウォッカを連れたケルピーさんが戻ってきた。
「ハハハ。シリウス!こいつは、冒険者より騎士が向いてるな!」
「ウォッカよ。この子に乗馬を教えたか?」
シリウスがまた、あの目をしてウォッカを見る。ウォッカは、その目を見るとまっすぐ睨むようにシリウスの目を見つめ返答する。
「その目はよしてくれ。俺はこいつに乗馬なんてもんは教えちゃいねーよ」
「そうか…すまない。しかし…では、ディルは選ばれたのか…。ケルピー殿、この馬は例の馬であろぅ?調教できたのか?」
「い、いえ…そ、その…できてません…以前の主の忠誠心が強いようで…す、すいません!」
「いや、謝るようなことではない。しかし、『ノア三従士』に数えられる程のテイムの実力があるケルピー殿が調教できない馬を乗りこなすか…」
「あ、あの…どういうことでしょうか?」
みな深刻そうな表情なので、俺がたまらず聞いてみる。
「馬に乗る…これは騎士以外はできない騎士の特権なのじゃ。騎士は戦場に行くだろう?馬も同じく戦場に行く。共に戦場を駆けることは、命を預けるも同じであろ?それからいつしか馬が人を判断するようになったのじゃ。今では、馬に乗るには馬に自分の実力を示し認めさせるのが普通じゃ。」
「そうなんですか…では、俺はこの馬に認められたって事なんですか?」
「ああ、多分な。よかったじゃねーか!親父越えだぞ!アクィラは、どうしてもその馬に乗りたくてケルピーの旦那に調教頼んでたんだけど、まさか息子が認められるとはな!」
「こらっ!ウォッカ!…また、あやつが暴走するじゃろ…今回の件は黙っておけ。ディルも決して他言してはダメじゃ」
「わ、わかりました…」
「んじゃ、ディル!俺についてこい!」
「ウォッカ!貴様話を聞いておらんかったのか!」
「いいじゃねーか。少しだ。」




