15話 不思議な妹と調教師の老人
少し内容を変えています。
これで年齢が若すぎる問題は解決したと思います。
シリウスの授業…いや、小話が始まってからすでに3時間が経った。普通の子供なら、老人の小話など興味がわかず眠気に襲われると思うが、俺からすれば情報の山…いや、宝の山なのだ。てか、ファンタジー感があって楽しい。ちなみに、今シリウスが話しているのはかつて国王と共に魔王を倒した話だ。
「…そして、魔王を倒し無事に帰還したのじゃ。」
「そうなんですか。」
「ああ…ディルは武術の才能があるとウォッカも言っておったし、お主も冒険者になりたいのじゃろ?…なら学園に行くといい。私が理事をしている魔術学校がある。入学は12歳からじゃが」
「私も学園に入学したいと思っています。12歳になったらすぐにでも行きたいです!」
「ははは!若いのぉ!わかった。しかし、入学には試験がある。12歳までに日々自分を鍛えておくといい」
「わかりました!では、シリウス様!失礼します」
杖を大切につかみ、シリウスに一礼して部屋をでた。
めちゃくちゃいいお誘いだな。学園か…もっと多くの知識を学びたいな…そして早く一人でこの城から自由に出たい。この年になっても一度も外に出たことはなく、いつも窓から外の景色を見ていただけなのだ…ぶっちゃけ、外に出たい。
俺は6年後の一人旅に浮かれ鼻歌交じりに自室に向かう。自室は、五歳の誕生日にローズからもらった部屋だ。まあ、ろくに物などは置いてなく、あるのはベッドと机と本くらいだ。それでも自由な部屋はうれしい。
杖をペン回しのようにクルクル回す。昔よく授業中やっていたのが、覚えているのか違和感なくできる。のんきに曲がり角を曲がろうとすると、突然小さな影が飛び出してきた。誰だか一瞬で分かったので、ぶつかる衝撃をなるべく抑えるように抱きしめる。
「突然出てきたら危ないだろ!アンカ!」
「っ!…あ!ぎぃるにぃに!」
突然出てきた小さな影は、きれいな赤髪に大きな瞳…白い肌で実に可愛い…
そして、俺の名を呼ぶが発音できていない…それも可愛い!ステータスに可愛さがあったら、100000000はあるんじゃないか?…この子の名前はアンカ=アヴィオール。国王の孫娘、ローズとアクィラの子…そして、俺の義理の妹になる…
「アンカ。もしかして、また部屋を抜け出したのか?」
「ううん!ライオンさんと、さそりさんがケンカしててね、きれいなおねーちゃんがこまってたからね、アンカもてつだってあげようとおもって、ね?」
「綺麗なお姉さん?ライオンさん?」
「うん!でも、あれ?どっかいっちゃた!」
「そっか。それじゃあ、お部屋戻ろうか」
「はーい!」
俺はアンカの小さな手をそっと握り、部屋に戻っていく。アンカはまだ幼いため、ローズと一緒にいる。今でもローズは騎士としての鍛錬をしているようで、俺と同じくアンカはよく部屋を抜け出す。俺とは違って活発いや、お転婆というべきか。みな手を焼いているようだ。そんなことより、俺は小さな歩幅に合わせて俺もゆっくりと歩いていく。
それにしても、ライオン…お姉さん…アンカが言っていることが気になって仕方がない。アンカはオッドアイで右目はローズと同じ透き通った茶色なのだが、左目が赤いのだ。まあ、よく見ないとわからないくらいなのだが、シリウスは魔眼の一種なのではと言っていたな…もしかしたら、何か関係があるのではないか?…
「にぃに!どこ行くの?」
アンカの声で意識が戻り、周りを見渡すとローズの部屋を過ぎそうになっていた。危ない危ない…
少し戻り背伸びして扉を開けると、慌てた様子で部屋を散らかしているローズがいた。ローズは俺と目が合うと、手を握っているアンカを見つけて大きな安堵のため息をついた。
「ディル、ありがとうね。アンカを連れてきてくれのね」
そういいながら、ローズは俺の頭をなでる。優しすぎて少し物足りないが、少しうれしい…すると、隣のアンカも頭を差し出している。撫でてってか?
しょうがないので、俺がアンカの頭をそっと撫でる。すると、ローズが突然笑いだすので俺もつられて笑う。何が面白いか分からないが、自然と笑みが出てくる。
「ふふふ。ほら、アンカ、おいで。お兄ちゃんは勉強から帰ってきたばかりで、これからお昼のご飯なんだからあんまり迷惑かけちゃだめよ?」
「はーい!」
アンカは笑顔で、俺の手を放しローズの足元に抱き着く。ローズはそのままアンカを抱っこする。
「にぃに!今度。お誕生会があるの!にぃにもいっしょに!」
「こら、アンカ…その…ディル…ごめんなさい…」
ローズは申し訳なさそうな表情で俺を見つめる。まあ、理由はわかる。俺は公に発表されていない存在のため俺の誕生日を大きく祝られたことはない。ローズやシリウスなどが「おめでとう」と言ってくれるだけだ。別に不満があるわけではない。
「アンカ、お兄ちゃんは勉強が忙しいから出れないかな…ごめんな?」
「ムゥ……イヤ。ぜったいにいっしょにでるの!」
アンカは俺に抱きつきながら顔を擦り付ける。俺はその頭を撫でる。
俺も大切な妹の誕生日を祝ってやりたい。だが、誕生会は多くの貴族が来るので公表されていない俺がいると何があるかわからないので俺は一度もパーティーなどに出たことはない。
俺がアンカを抱きしめていると突然俺に覆いかぶさるようにローズが抱きしめてくる。
「ごめんなさい…ディル…あなたには苦労ばかりかけさせてしまって…」
「いえ、私は何とも思っていません。さあ、お腹が空いたので昼食を取ってきます。」
俺は抱きしめるローズの腕からするりと抜けると、できるだけ優しい子どもらしい笑顔を浮かべながら頭を下げ部屋から出て行こうとすると、扉が開き誰かが入ってきた。誰かはそのまま俺の体を掠って奥のローズのもとに向かう。小さな俺はバランスを崩し倒れそうになるがなんとか持ちこたえる
「会いたかったでずよ〜ローズさん〜。おお!アンカ〜かわいいなぁ〜よしよし」
「こら、アクィラ。ディルとさっきぶつかっただろ、謝らないか。」
「え?そうでしたか?…」
アクィラは俺の方を見ると、表情を変え無表情な……いや、少しいらだっているような表情になる。
「なんだ、居たのか。」
一言で一瞬殺意が湧いたが、何とか耐える。スキル無表情のおかげか顔にも出ていないようだ。そんなアクィラの態度にローズが少し怒っているようで何か言いそうになっているので、そっと一礼して部屋を出る。口喧嘩に発展すると、面倒だ。それにアンカが近くにいるのだ、悪影響になるだろ…
俺は扉を閉めると、ため息をつきながら隣の俺の部屋にはいる。もらった杖を、そっとベッドの上に置くとすぐに食堂に向かう。いつもこの繰り返しだ。朝起きると、外で鍛錬をしその後、勉強をし遅めの昼食をとる。その後は基本部屋にこもって本を読むだ。いつものように、一人で食堂に行くと珍しく昼食をとっている人がいた。しかも、珍しい人だ。
つなぎのような服装に、タオルを首にかけた老人…軍馬の調教や管理を行っている人だ。
いつもあいさつ程度で深く話したことはない。俺は炊事場のおばちゃんから昼食を受け取り、老人のもとに向かう。そっと、老人の向かいの席に昼食の乗ったお盆を置く。
「こんにちは、ケルピーさん。今日は遅いですね。」
「おお、これはこれはディル坊ちゃま…いえね、今朝方、馬同士で喧嘩があって止めてたんです…まあ、若馬と老馬でなんとか落ち着かせたんですが…老馬が大腿骨が折れてて立つこともできなくて、回復魔法ももったいねぇで、午後に殺処分が控えてるんですわぁ」
「そうなんですか…」
「そうだ、坊ちゃまも見学されたらどうですか。騎士になろっても、冒険者になろっても死の瞬間は避けられないんですから、経験ですよ」
「そ、そうですね…わかりました。では、見学させてもらいます」
「あ、飯時にこんな話すいません…」
「大丈夫ですよ。」
大丈夫なわけあるか。などと思いながら、笑顔で対応する俺はえらいと自分で思える。それにしても死か…すでに見てるんだがな…てか、殺したこともあるし…まあ、見るだけならいいか。




