14話 6年後と成長
「フッ!フッ!…はぁはぁ…」
「おっ!今日もやってるな。よくも続くもんだ!ハハハ!」
「おはようございます。もうすぐ、学園にいくのでその前に出来ることはやっておきたいのです」
「そうか…いい心がけだ。よし、少しはえーが、やるか!」
「はいっ!」
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女騎士に育てられて、六年もの年月が経った。俺も既に赤ん坊を卒業し、立派に二つの足で立っている。いや、それ以上に成長した。6歳の今では石で出来た剣を持って素振りをしている。
この6年に起きた事を順を追って説明すると、
俺が2歳になり言葉をかなり覚え短い会話ができるようになった頃、女騎士ことローズが勇者であるアクィラと婚約し、翌年には妊娠した。
俺は4歳になる前にと、ローズが出産した。女の子のようで、アクィラがかなり喜んでいた。ローズは「あなたの妹よ。大切にしなさい」と言っていたが…実感はわかない。しかし、赤ん坊は可愛い。4歳になると小さな剣を持ち素振りをさせられた。指南は父であるアクィラだ。アクィラは俺のことを気に食わないようで、指南と言って俺を痛めつける。まあ、血はつながりがなく、本ばかり読み懐かないガキは嫌いになるだろう。まあ、スキルの忍耐スキルのレベルが上がったしあまり痛くもない。しかし、ローズには何も言わなかった。なんか言いずらかった…
それから1年後、5歳になると足腰もしっかりし、力もかなり出てきた。剣術、槍術の鍛錬以外に勉強が入ってきた。勉強はかなりおもしろかった。転生前は押し付けられるような感じだったのでおもしろみがわからなかったが、現在は高校生の精神なだけあって理解しやすい。成績もよく、教師であるシリウスに学校を勧められた。それが余計アクィラを怒らせ、この前右腕を折られた。流石にローズにバレて口論になっていたが事故だと言い切り、お咎めなしだ。それから、ウォッカが指南役になった。ウォッカはアクィラの戦闘を模した鍛錬とは違い、地力を鍛えるといって体力や筋力を鍛えるトレーニングが中心だ。やはり人を鍛えてきた人は違うなと思えた。
そして、現在。6歳になった。今まで、あの貴族を殺してスキルを奪ってから、一度もスキルを得ていない。かなり不満だ。それでも今は自力を鍛えていると考え日々の訓練に耐えている。
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「よし!もう、いいぞ!だいぶ力がついてきたようだな。聖騎士の訓練もついてきてるしな。余裕だろ?」
「そんなことはありませんよ。今までがあってこそです。」
ウォッカの指導は、厳しいがアクィラより確実に強くなていると理解できる。それはスキルのレベルの上がり方の違いだ。身体強化のスキルのレベルは現在lv6だ。少ししか上がっていないと思えたが昔脳内アナウンスさんにスキルについて聞いた。
『説明します。スキルは誰もが持っていますが、所持数は少ないです。スキルlv1は誰でも経験したことがある程度。lv2〜lv4は一般の専門職程度。5〜6が天才レベル。7〜8は英雄・勇者レベルです。』
だ、そうだ…勇者のアクィラは剣術lvが7と聞いたのでまあ、強いな。それ以降のレベルは人外だそうだ。聞いた話、シリウスは聖魔法と光魔法は8だそうだ。化け物だな…
しかし、思ったのだが勇者がデュークを倒せるのか?…いくら仲間が居たとしても無理だと思うが…
考えていると、目の前のウォッカが悪戯そうな顔で俺を見てくる。
「そうか?そうだ、今日は特別に俺とやってみるか?」
「いいので?」
「ああ。どんと来い!」
「では…」
素振りをしていた石製の剣を持つと構える。剣術スキルのおかげで重さが軽減され、相手の動きがわかる。スキルも昔脳内アナウンスさんから説明を受けた。
『スキルは常時発動型と任意発動に加えて、状態発動の3種類があります。
・常時発動は、常に効果が発揮されているスキルで、耐性系統のスキルなどですね
・任意発動は、自身の意思決定で発揮するスキルで、魔法などです。
・最後に状態発動は、剣術のように「剣」を持っている状態で発動します。状態発動のスキルは、その状態になるとある程度の補助効果に加えて、追加して攻撃のモーションがあります。それと、脳内アナウンスさんというのはやめてください。』
最近になって、アナウンスさんが意思表示するようになった。まあ、あとで名前を付けてやろう…と考えていると、ウォッカは訓練用の木刀を片手で構えた。俺はジリジリと近づいていると、ウォッカが切りかかってきた。一瞬で間合いを詰められ木刀を振り下ろしてくるがすんでで躱し、降りた木刀を足で踏み地面に食い込ませる。同時にウォッカの首に石製の剣を向ける。
「ハハハ!参った!スキルを発動せず、ハンマーでないといっても、こうもあっさり負けるか!しかし、この戦闘は教えてないが誰に教わったんだ?」
「本で読んだのです。東の方の本で…ムサシ ミヤモトという剣術家の教えをもとにやってみました。」
「そうか…東の方…相手の武器を抑え、二撃目をさせない。対人戦に向いているな、興味深い。」
俺が剣から足を外すと、ウォッカは剣を肩に担ぎ考えている。俺も剣を下ろすと、地面にそっと突き刺す。
「興味がおありなら、書物を持ってきましょうか?」
「いや、いい。俺は本より実践が一番だ。今度お前が俺相手に試せばいいじゃねーか。…しっかし、もったいねぇな。血のつながりがないだけで…」
「いいんです。その話はやめましょう」
ウォッカが面倒な事を言いそうになったので、すぐにさえぎる。あまり、いい話題ではない。
単純な話、俺はあくまでローズに育てられただけであって、血のつながりはないので家の話は関係ないらしい。そして、国王と勇者は俺をよく思っていない。まあ、俺にとっては好都合なのだ。ウォッカは剣先で頬をかじり、バツの悪い顔をする
「そうだな…ああ。すまねぇ。」
「では、私はこれで…シリウス様の授業に遅れてしまうので」
「そうか!がんばれよ!」
「はい!失礼します」
俺はウォッカに一礼すると、すぐに走って城の中へ戻る。同時に騎士の人たちが鍛錬のため宿舎から出てきて挨拶してくる。俺は全員の名前を呼びながら、元気にあいさつしていく。
城に入ると、俺が赤ん坊の頃からお世話してくれているメイドさんがタオルと替えの服をもって待っていてくれていた。いつものように、感謝を伝えながらタオルで汗を拭い服を替えていく。
廊下を走りながら、前日の授業の内容を思い出す。シリウスの私室の前につくと、息を整え扉を叩く。
「おはようございます。ディルです。」
「入りなさい」
扉を開け、中に入る。すると、いつものようにシリウスが椅子に深く腰掛けていた。俺はシリウスの目の前の椅子に腰かける。すると、シリウスの目が少し開く。
「おはよう。ディル坊。」
「おはようございます、シリウス様。本日は何を教えてくださるのですか?」
「ははは!既にお主に教えられるものは無いのぉ…後は、魔法かの。そうじゃ。忘れておった!」
老人…いや、シリウスは何かを思い出したかのような表情をすると、ゆっくりと立ち上がり覚束ない足取りで壁際の棚に向かう。シリウスは棚を数か所漁ると、何かを取り出した。そして、また覚束ない足取りで俺に近づいてくる。
「これをやろう。受け取りなさい」
シリウスは棚から取り出した一本の杖を俺に差し出してきた。シリウスが普段使っている杖は、水戸黄門のような長杖だが、差し出してきた杖はタクトのような短い杖だ。素材は木製で黒いラインが入った豪華ではないが、何か不思議な力を感じる。何か、魂が共鳴するというか…なんだ?
「この杖はかつて英雄が使ったといわれる杖じゃ。伝説では12の守護霊が居るといわれている。まあ、伝説じゃがな。この杖は持ち主の能力を見極める杖でな、今のお主にぴったしじゃ」
「いただいてもよろしいので?」
「ああ。お主の手にあったほうがこの杖も幸せじゃろ」
「では…」
俺はシリウスから杖を受け取る。短いのに、とても重く感じた…全体を見る。なんだろう…前から知っているような感じがするのはなぜだろう…シリウスはうんうんとうなずきながら、俺を見てくる。
「気に入ったか?」
「ええ!とても!ありがとうございます!!」
「ハハハ!さあ、今日は授業…ではなく、小話でも聞かせてやろう」
「お願いします!」




