13話 二人目の母と一人目の母
「続けるぞぉ…この子は異常じゃ。ステータスは一切他の子と遜色ない。ジョブも就いておらんし、称号もない…」
「それのどこが異常なのだ。早く言え、シリウス。」
国王が声を荒げて老人の言葉を急かす。老人は声を震わしながら、ゆっくりと言葉を選ぶように発する。
「この子はすでにスキルを獲得している。剣術lv5に槍術lv5じゃ…」
ゴクリ。どこかで、生唾を飲み込むような音が聞こえる。国王は突然椅子から立ち上がる。豪華な椅子が倒れるが気にしている様子はなく逆に何かにおびえるようなそんな感じが見て取れる。
俺を抱きしめる女騎士の力が緩むが、すぐに深く抱きしめられる。緊張から安心に変わったような…そんな感じだ。
てか、スキルって異常だったのか…あれ?そういえば最初にマリアが言っていたような気がする…
「シリウス!嘘をつく出ない!例え、共に先代の魔王を倒した仲であっても許されないぞ!」
「嘘ではない。国王…いや、古き友、ウェッタよ。この魔法師 シリウス=ベッセルの名のもとに断じて嘘はついてはいない」
老人は、まがった背筋を伸ばし胸を張って堂々と発する。その姿はとても勇ましく見える。
「そ、そこまで…で、では…本当に…」
「ああ。なんなら、ベテルギウスでもプロキオンにも誓おうではないか」
「わかった。信じよう…しかし…まだひよっことは言え、勇者と対等の剣術のスキルを持つとは…」
「シリウス…いえ、シリウス大魔法師。こ、この子の名は…」
女騎士が顔を上げ、老人のほうを見つめる。老人は先ほどの勇ましい姿はどこえやら、まるで自分の孫に話しかけるようにやさしい笑顔を向ける。
「その子の名はディルじゃ」
「ディル…ディルか…私の可愛い坊や…ディル」
「よかったのぉ。ローズ姫」
女騎士は立ち上がると俺を抱きしめたままクルクルと回りだす。うれしいのはわかるが…うぅ…気持ち悪い…
老人も笑顔で見守るが、国王だけ浮かない顔をしていた。
「ローズよ。あまりその子に肩入れはするな。あくまで育て、聖騎士にするだけじゃ。」
「わかっております。では、この前のお話通り、私がこの子を育てます」
「うむ…」
女騎士は晴れやかな表情で、部屋から出ていく。まあ、一件落着か?
さあ、こっから俺の人生はどうなるのか…はぁ…
▼デュークが殺される前に戻る
ディルがデュークの後を追って部屋を出てから。
じぃはデュークの命でマリアを呼びに行く。じぃはデュークの考えを理解していた。
「ここで死ぬか…ディルは人の子。マリアに抱かせて居れば助かる可能性がある…」
じぃは急いで部屋に向かう。いつもなら人の姿のまま歩いて向かうが、今は急いでいるため体を大量の蝙蝠の姿に変え飛んで向かう。バタバタと羽ばたく音が長い廊下に反響する。
部屋につくと、姿を人に変えすぐに飛び開ける。
「キャッ!」
「すみません…人間の勇者がもうすぐ、この城に来ます…ディル様を連れ、逃げてください」
「ま、待って…「失礼します!」
じぃはすぐに蝙蝠の姿に変えるとマリアを抱えると、再びきた廊下を戻る。
マリアは戸惑っている様子だったがすぐに、理解したようで決意の表情をする。ハハハ。流石、デュークの嫁さんだ。肝が据わっている
すぐにディルが寝るデュークの寝室につく。そっとマリアを床に下ろす。マリアはさっきまでの不安定な浮遊感から慣れずふら付いているがすぐにベビーベッドを覗く。
「ジルさん…ディルは…どこへ?…」
「はい?…ディル様がいない…ッ!」
カツカツと廊下を歩く足音が近づいてくる。デュークは足音が立たない、ディルはまだ赤ん坊…。この足音が誰のものかはすぐに理解できる。勇者だ。扉の鍵を閉める。
じぃはそっと、マリアの顔を手で上げさせ目を見つめる。ガチャガチャと扉を開けようとする音が聞こえる
「すまない。あなたはただの被害者。そう伝えるのです。そして、マリア様。あの子を…ディルを頼みます。私もヴァンパイアの身、あの子を育てることはできません。人間であるマリア様でないと…ですから…デュークの子、デュークの愛したあの子をどうか…幸せに育ててください。デュークや私の分の愛情をこめてっ…
バンっ!という音とともに扉が破壊され大きなハンマーを抱えた男と剣を持った青年。二本の剣を持った女…全員の武器には血がついている。
一行はマリアをじぃを見るとすぐに警戒してきた。
「貴様!それが、誘拐した人だな!許さないぞ!」
じぃは、大きく笑うとすぐにマリアを突き飛ばすと、背中に蝙蝠の翼を出す。
すぐに女の騎士がマリアに駆け寄ると、後方まで下げる。二人の戦士はかばうように前に出て武器を構える。
「この牙で、女ののどを吸ってやろうと思ったが、気が変わった。私も命が惜しい」
「逃がすかっ!」
じぃはすぐに部屋の窓から飛んで逃げようとするが、青年騎士が切りかかる。じぃはかわせず、腕を切り落とされたが構わず飛んでいく。青年騎士も後を追おうとするが、もう一人のハンマーの男に止められる。
「大丈夫か?…」
「ええ…」
「気を付けろ。ヴァンパイアにかまれるとヴァンパイアになるそうだ」
「さっきのヴァンパイアが噛んでないといっていましたが?」
「まあ、見た目からそんな感じはないしな。まて、試しにこれを振りかけてみろ」
ハンマーの男はポケットから水筒を取り出し女騎士に渡す。女騎士はそっと、飲み口を開けると、マリアの頭に振りかける。
「どうやら聖水は大丈夫みたいだし、かまれてはいないな。」
「どうしますか?この人…ここまでの道のりは、彼女にはきついと思いますが…」
「転移陣があったな。私のを使おう。確か、城につながっているはずだ」
「そうだな…まあ、転移ならあの爺に頼めばできるし」
「なら、おい、あんた。これを持ちな」
女騎士から薄い紙をマリアは受け取ると、光に包まれると姿を消した。




