2. 魔法少女エミルナ②
「おとなしく座ってろ!」
「どこに座るのよ!?」
「俺の膝だ」
狭いコックピットの中だから、確かにそれしかないけど。
「ええっ!?」
「そこしか空いてない」
「そ、そんなの無理!」
「外に出るか?」
「・・・・・・」
外では、3機の機械兵がこっちを狙っている。
あたしはちょっとだけ冷静になった。
「・・・ここでいい」
あたしは仕方なく、アレクの膝の上に座る。
「・・・・・・」
ものすごく近い。
背中にアレクの身体がある。
肩越しに後ろを見上げるとちょうどそこにアレクの顔がある。
ちょっと動くだけで、後ろのアレクに当たっちゃいそうだ。
「・・・・・・」
なんか、変な感じ。
胸がドキドキする。
いやいやいや!
今は戦闘中なんだから、そんなこと気にしてる場合じゃない!
「エミちゃん?」
通信越しにリーゼちゃんの声が聞こえた。
「だ、大丈夫!」
「なんか声、変じゃない?」
「へ、変じゃないよ!」
「そう?」
「うん!」
必死に答える。
なのに、隣・・・というか、後ろのアレクは何も気にしていない。
「動くなよ」
「わかってる!」
「危ないから、しっかり掴まってろ」
「えっ?」
次の瞬間、アルカ・フレームが大きく揺れた。
「きゃっ!」
あたしは反射的にアレクの身体にしがみついてしまった。
「・・・だから言っただろ」
「う、うるさい!」
顔が熱い。
絶対、今あたしの顔真っ赤だ。
なのにアレクは、そんなことを気にする様子もなく前を向いている。
「お兄ちゃん、ホントにエミちゃんのこと好きだよね」
リーゼが、なんだか嬉しそうに言った。
「なっ!?」
あたしまで恥ずかしくなった。
「ち、違う!」
アルカ・フレームの中から、アレクが即座に否定する。
「だが、技は参考にさせてもらった!」
「技?」
あたしが聞き返した、その瞬間。
アレクのアルカ・フレームが、ぐっと腰を落とした。
両腕を構える。
「あっ!」
その構え。
見覚えがある。
「まさか・・・」
アルカ・フレームの周囲に、青白い光が集まっていく。
「エネルギー収束!」
「ちょっと待って!」
まさか!
「蒼き拳にすべてを乗せて――」
「それ、あたしの――!」
「砕け散れ!」
ドォォォン!!
アルカ・フレームの拳が、目の前の機械兵を真正面から打ち抜いた。
巨大な衝撃波が廃墟を駆け抜ける。
機械兵の身体が吹き飛び、地面を何度も転がって――
ガシャン。
完全に動かなくなった。
「・・・」
あたしはアレクの膝の上で固まった。
「・・・それ、シャイニングブレイカーのパクリじゃん!」
「パクリじゃない。参考にしただけだ」
「同じじゃん!」
「名前は違う」
「名前だけじゃん!」
「威力も違う」
「そこ威張るところじゃない!」
リーゼが笑っている。
「お兄ちゃん、やっぱりエミちゃんのこと好きなんだね」
「だから違うと言っている!」
アレクがちょっとムキになっている。
セリカまで、
「でも、構えはほとんど同じ」
「・・・」
アレクが黙った。
「やっぱりパクリじゃん!」
「うるさい!」
なんだよぉ。
ちょっとくらい認めてもいいじゃん。
・・・まあ、あたしの技を参考にしたっていうなら、悪い気はしないけど。
「とにかく、残り2機も片付けるぞ」
アレクが操縦桿を動かす。
アルカ・フレームが立ち上がった。
「えっ、あたしも――」
「見習いはそこで大人しくしてろ!」
「見習いじゃないもん!」
「今は見習いだ!」
「むぅぅぅ・・・!」
あたしはアレクの膝の上で頬を膨らませる。
なんでこんなところで大人しくしてなきゃいけないのよ!
・・・というか。
やっぱり近い。
「・・・・・・」
考えちゃダメ。
今は戦闘中。
そう思っているのに、さっきからずっと心臓がドキドキしている。
「エミちゃん、どうしたの?」
「な、なんでもない!」
「顔、赤くない?」
「赤くない!」
「そう?」
「赤くないったら赤くない!」
リーゼには絶対気づかれたくない(とっくに気付かれてるけど)。
でも、アレクは相変わらず何も気にしていない。
「しっかり掴まってろ」
「・・・・・・うん」
アルカ・フレームが走り出す。
その勢いに、あたしはまたアレクにしがみついた。
「きゃっ!」
「だから言っただろ」
「もうっ!」
ほんとにもう!なんでこんなことになってるのよぉ!
結局残りの2機も、アレクがアルカ・フレームであっという間に倒してしまった。
あたしは最後までコックピットの中でアレクの膝の上。
敵が全部いなくなったところで、ようやくアルカ・フレームが停止した。
「もう終わったぞ」
「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・降ろして」
「分かった」
ようやく解放された。
あたしはアルカ・フレームの外へ出ると、すぐに地面へ降り立った。
「もう! あたしだって倒せたのに!」
「必殺技が使えない状態でか?」
「・・・」
「しかも3機だぞ」
「・・・次は倒すもん」
「次があると思ってるのか?」
「あるよ!」
「ない!」
アレクが即答した。
リーゼが苦笑する。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん・・・」
さすがに今日はもう無理だ。
マジカルゲージもほとんど残ってない。
あたしたちは居住区へ戻ることになった。
そして――
当然のように待っていたのは、カンナさんのお説教だった。
「エミちゃん!?」
「はい・・・」
「あなたはまた・・・」
さんざん、叱られた。
勝手にブレスレットを持ち出したこともそうだけど、それ以上に言われたのが廃墟地区に行ったこと。
そしてなにより、『変身できない状態のリーゼとセリカ』を廃墟地区へ連れ出したこと。
コロニーの外苑に当たる地区で、アレクたちが機械兵をやっつけてるから、あたしたち魔法少女が担当する敵の数は圧倒的に少ない。
そして今日のことでわかった。
あたしたちがたくさんの機械兵を一度に相手にするのは、とても大変だということ。
今日もまた、何も言い返すことは出来ない。
そしてあたしが一人前に認められる日も、まだ先の話になりそうな雰囲気だった・・・。




