5. 奇妙な手紙
奇妙な手紙が届いた。
不気味と言ってもいい。
宛先も名前も無ければ消印も無い。
直接ポストに投函された手紙だ。
誰かが密かに、留守の時間をついて入れたらしい。
手紙は封筒に入れられているが、入りきらないのか数枚に分けられている。
封筒の束があり、それが輪ゴムで留められたものがポストに入っていた。
それぞれの封筒には番号が振ってあり、その順番に読めということらしい。
非常に気味の悪い手紙だが、不幸の手紙や呪いのチェーンメールのようなものに怯えるような性分でもない。そんな性分だったら、そもそも仕事にならない。
封筒を開けると、そこには几帳面そうな字でびっしりと文字が書いてある。中身はまともそうで安心した。
こういう場合、糞尿や虫の死骸が挟まれている事の方が数倍怖い。
だが手紙の内容を読み進めていくうちに、糞尿や虫の死骸よりも背筋が冷たくなるのを感じた。
誰かはわからないが、こちらの事をそれなりに知っているらしい。ストーカーに遭うほど器量が良いわけでも、近所付き合いがあるわけでもないし、ここに住むようになってからそれほど長いわけでもない。そして同業者の仕業というには軽率すぎる。
いたずらの可能性もあると思い、心当たりに電話をかけてみたものの、そんなものは知らんときた。そもそもそんなことをするほど暇でもないと怒られた。
まあたしかに、そこまで踏み込んだ話をした覚えはない。
個人的に気になっていた家があり、仕事の合間にそれとなく調べようとしただけの事だ。
それが何故、この手紙の主に筒抜けになっているのだろうか。
こちらの事を知らなければ、この内容でこの手紙をこのポストには入れない。
それだけは間違いない故に、普段であれば一笑に付すような、妙な自分語りを書き連ねた手紙を読み進んでしまった。




