表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/79

2-66話:新たな大陸へ

申し訳ありませんが、本業が繁忙期の為、しばらく1時更新にしたいと思いますのでよろしくお願いします。

 王都の喧騒は、未曾有のスタンピードを乗り越えた安堵と、未だ燻る緊張感に包まれていた。ギルドの分厚い扉を押し開けると、そこには戦いなどなかったかのような、酒と汗の入り混じった熱気が立ち込めている。


「お、ようやく来たか! 遅せぇぞ! こっちだ!」


 店内に響き渡る野太い声。声の主は、Sランクパーティー『銀翼の旅団』のリーダー、ジーク・バルフレアだった。 彼が座るテーブルには、既に数本の空いたジョッキが転がっている。


「お、遅くなりました」

「Sランクを待たせるとはいい度胸じゃねぇか?」


 ジークが獰猛な笑みを浮かべてレオを睨む。その威圧感に、レオは思わず背筋を伸ばした。


「こら、ジーク? そんな言い方したら怖がってしまいますよ?」


  宥めるように口を開いたのは、神官のセレス・ルミナスだった。彼女の穏やかな微笑みは、殺伐としたギルドの空気を一瞬で浄化する。


「さぁ、こちらに座って。お疲れ様でした、レオくん」

 

 レオは促されるままに腰を下ろし、改めて自己紹介をした。


「あ、改めまして、僕はレオ・ヴァレンタインと言います。こちらはアリーシャとミレイユ、ドワーフのネネリです」

「おう。俺はジーク・バルフレア。槍使いだ。こっちはセレス、で魔法使いのエレナ、弓使いのカイトだ」


  ジークはジョッキに残った酒を一気に飲み干すと、「プハーッ! 足りねぇ、もう一杯!」と空色一つ変えずに叫んだ。 その飲みっぷりにセレスが「もう! 飲みすぎですよ!」と憤る様子は、まるで長年連れ添った夫婦のようにも見えた。

 重苦しい沈黙が流れかけたその時、ギルドのドアが「バンッ!」と凄まじい勢いで開かれた。


「ちょっと、邪魔するわよ!」


 ずかずかと入ってきたのは、ライラ・クレスヴァーデンだった。 先ほどまでの泥にまみれた法衣を脱ぎ捨て、今は透き通るような淡い青色のドレスを身に纏っている。 その高貴な立ち振る舞いに、周囲の冒険者たちが「聖女様じゃね?」「聖王国の第一王女だろ……」と息を呑む。

 ライラはそれらを一瞥もせず、レオたちのテーブルに辿り着くや否や、有無を言わさぬ口調で告げた。


「ちょっと、今から話があるんだけどいいわね?」

「あぁ? 俺は今、忙しいんだけどよ」


  面倒そうに鼻を鳴らすジークに、セレスの拳が飛ぶ。


「こら! 聖女様に失礼な態度を取らないの! ……承知いたしました。お受けします」


 ギルドマスターの案内で奥の会議室へ移動した一同は、円卓を囲んだ。 ライラが口を開く。


「改めて、さっきの戦闘はお疲れ様。……ジーク、あんたは他の所で魔族と戦っていたんでしょ?」

「あぁ、そうだ。東の大陸。エルフ領でスタンピードがあったから片付けてたら、魔族が出てきたから倒したぜ」


  ジークは、夕食のメニューでも話すかのような軽さで「魔族討伐」を口にした。 ギルドマスターが絶句する中、カイトがニコニコと笑いながら付け加える。


「そうそう! だから、そいつの耳を矢に括り付けて、さっき王都に来た魔族に返してあげたんだ。俺って優しいよね?」


 ジークの拳がカイトの頭を鈍い音と共に沈めた。


「お前は黙っとけ」

「いってぇ〜! ジーク、目がマジすぎるよ……」


カイトが頭を押さえて引き下がるのを尻目に、ジークはライラを真っ直ぐに見据えた。


「で? 俺たちになんの用だ。単刀直入に言え」

「はっきり言うわ。銀翼の旅団とレオのパーティーは、私と一緒にプロット大陸の聖王国に来てほしいの。王様からの許可は既に頂いているわ。ギルドマスター、いいわね?」

「ははは、王の許可を取ってから私に聞くとは……断れるわけないでしょう」


  苦笑いするギルドマスターだったが、その目は笑っていなかった。


「ですがライラ様。今回の件、ジークが討伐した魔族……それらは関係している、と?」

「察しがいいわね。……ええ。プロット大陸の北側、魔族領に最も近い要塞で『何か』が起きているわ。そこに今回の精鋭二組を助っ人として要請したいの」


 ここでレオが申し訳なさそうに手を挙げた。


「あの、一ついいですか? ジークさんの言っていたエルフ領も、魔族領に近い場所だったんですか?」 「あぁ、エルフ領の北側だったな」


 ジークの答えに、レオの思考が加速する。魔族領から遠く離れたこの王都で起きたスタンピード。そしてエルフ領での異変。


「……分断、か」


 ギルドマスターが低く呟いた。


「各地で同時に事を構え、戦力を散らす。ジークたちの処理が異常に早かったから間に合ったが、本来なら王都は落とされていたかもしれないな」

「じ、じゃあ、王都の北にある僕の出身地……ヴァレンタイン領も危ないってことじゃ……?」


  レオの問いに、ライラは静かに頷いた。


「優秀なヴァレンタイン公爵家なら持ち堪えるでしょうけど、狙われているのは確かね。あ、そうそう。あなたのお兄様は目を覚ましたわ。馬車で領地へ帰られたそうよ」

「そう、ですか……」


  『劣等職』と罵られ、追放された過去がレオの胸をかすめる。だが、今の彼には隣に仲間がいた。


「つまりなんだ。北の要塞で魔族をぶちのめしたら、今度はこっちに戻ってきて北を守れってことか?」


 ジークが投げやりにまとめると、ライラは「はっきり言うと、そうなるわ」と断言した。


「聖王国とプロヴィデンス王国は、魔族討伐で一致したの。決定事項よ」

「ちっ、国が認めたんなら断れるわけねぇじゃねぇか」


 ジークは天を仰いで承認した。


「わ、わかりました。でも、なぜAランクもいる中で僕たちなんですか?」


  レオの疑問に、ジークが鼻で笑って答える。


「お前のところくらいしか、今回の戦いで『無事』じゃなかったからだ。実力だよ、小僧」


 ライラは立ち上がり、満足げに微笑んだ。


「そういうこと! Aランクの方々は王都の守り。あなたたちは私の剣。明日の明朝、王都を出発するから、よろしくね!」


  言いたいことだけ告げると、彼女は嵐のように部屋を去っていった。


「あぁぁぁ! めんどくせ〜!」


 会議室の椅子に深く沈み込むジークに、カイトが「まぁ、いいじゃない。お金稼げるし」と軽く応じる。


「さて、そう決まれば旅の準備をしましょうか」


  セレスの声で、重かった空気はようやく解けた。

 未知の大陸、プロット大陸。 レオは心のどこかで、湧き上がる高揚感を抑えられずにいた。


読んでいただきありがとうございます!評価、ブックマーク、リアクション等を付けて頂けると非常に励みになりますので、ぜひともよろしくお願いします!次話も読んでいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ