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2-39話:初めてのプレゼント

 アルカナの街を散策していたレオとアリーシャの前に、一際異彩を放つ巨大な建築物が現れた。それは砦のような重厚な佇まいで、屋根には巨大な大砲を思わせるオブジェと、複雑な紋様が刻まれた大水晶が鎮座している。


「……すごい建物だね。あんな大きな水晶、見たことないよ」


 レオが驚きに目を見開くと、アリーシャはどこか冷ややかな、それでいて警戒を孕んだ視線をその建物へ向けた。


「あれは魔導学校です。……表向きは、ですが」


 最後にボソリと付け加えられた意味深な言葉に、レオは首を傾げた。「表向きって?」 アリーシャは答えず、周囲の通行人の気配を確認すると、「マスター、あちらへ」とレオを促し、人気の少ない路地裏へと移動した。


「あれは表向きこそ学校ですが、実態は『魔導研究所』……いえ、かつての『魔導兵器廠』です。屋根にある大砲のようなものは、恐らくエーテルキャノン。対魔族用に開発された、当時最強の広域破壊兵器です」

「は、破壊兵器……?」

「はい。スタンピードをたった一撃で沈黙させるほどの威力を誇ります。ですが、一度発射すれば着弾地点の周囲は一瞬で火の海と化す、禁忌に近い兵器でした。発動には膨大な魔力エーテルが必要ですが、現代ではその魔力コアは失われているはずですので、今はただの巨大なオブジェに過ぎないでしょうが……」

 

 レオは改めて、ネオンに彩られた街を見渡した。


「……なるほど。この街がこれほど派手に輝いているのは、あの巨大な兵器の存在感を薄めるためのカモフラージュのようにも見えてくるな」


 かつての戦争の遺物が、現代の華やかな景色の中に溶け込んでいる。


「ミレイユは、あんな物騒な場所を通っているのか……」


  今度彼女に会ったら、中の様子を(差し障りのない範囲で)聞いてみようと思いつつ、二人はその重々しい建物を後にして、活気溢れる魔導ショップが並ぶ露店通りへと足を向けた。

 露店には、魔石を加工したアクセサリーが虹色に並んでいた。先ほどまでの重い空気とは打って変わり、アリーシャが「わぁ、綺麗ですね!」と声を弾ませる。

 レオは横目で彼女の様子を伺った。アリーシャが足を止め、熱心に見つめていたのは、彼女の瞳の色に近い、透き通った緑色の魔石を使ったネックレスだった。


「……すみません、これ一つください」


 レオが店番のおばちゃんに声をかけると、彼女はニッコリと微笑んだ。


「おや、そちらの別嬪さんへプレゼントかい?」


  そう言われると、レオは急に心臓の鼓動が早くなり、恥ずかしさが込み上げてきた。


「は、はい。……ほら、アリーシャ。いつもお世話になってるお礼。これ、プレゼントだよ」


 ぶっきらぼうに、しかし丁寧に手渡すと、アリーシャは信じられないものを見るかのように目を丸くした。


「ありがとうございます……! 私、一生大事にします!」


 彼女の喜びように、店番のおばちゃんが補足を加える。


「そいつには微弱だけど『自己治癒リジェネ』の効果を持つ魔石が組み込まれてるんだ。あんたみたいな騎士さんには、ちょうどいい守り神になるかもしれないね」

 

アリーシャはさっそく、震える手でそのネックレスを首にかけた。


「マスター、どうですか……?」

 

彼女が嬉しそうに、少し前かがみになってネックレスを見せてくる。必然的に彼女の顔が間近に迫り、レオはどこに視線を置いていいか分からず、激しく動揺した。


「に、似合ってるよ! とても……!」


 早口でそう告げて、レオはバッと目線を逸らした。機嫌がすっかり良くなったアリーシャは、ふふふ、と喉を鳴らして上機嫌だ。

 その後、二人はアルカナの冒険者ギルドへと向かい、明日挑む「北の沼地」の情報収集を行った。 リサさんからの事前情報の通り、そこは「沼地」というよりは広大な「湿原」に近い地形らしい。足場は劣悪だが、場所によっては古い木の板が敷かれた「木道」があるという。


「基本的には板の上を歩くことにしよう。……まあ、バジリスクとの戦闘になったら、そんなこと言ってられないだろうけど」

 

宿に戻ったレオは、手に入れた情報をもとに、双銃に込める「支援弾」のレシピを練り直した。 湿原での戦い。足場の悪さをカバーする機動力向上か、あるいはバジリスクの毒を想定した解毒成分の配合か――。



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