表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/51

2-36話:魔導の都アルカナ

 キマイラとの再戦を制したレオとアリーシャは、さらに西の森――別名、「神秘の森」の深部へと足を進めていた。

 かつてこの道は、王都フィラルモニアと魔法都市アルカナを結ぶ主要な通商路であったはずだ。しかし、今レオたちの目の前にあるのは、無作為に茂った雑草が路面を覆い隠し、かろうじて人の通った痕跡が残るだけの「獣道」に成り果てた無残な姿だった。

 プロヴィデンス王国内にありながら、この森にキマイラが巣食い始めて以来、二つの都市間の物流は死に体となっている。その荒廃した静寂を切り裂いたのは、鋭い悲鳴だった。


「キャアアア!」

 

レオとアリーシャは無言で視線を交わすと、即座に頷き、声のした方角へ地を蹴った。茂みをかき分けた先では、一人の少女が腰を抜かし、その眼前でキマイラが今まさに鋭い爪を振り下ろそうとしていた。


「アリーシャ!!」


 レオの鋭い掛け声が響く。アリーシャは滞空時間の長いジャンプで少女を飛び越え、空中で大盾を前面に構えた。重力と慣性を乗せた、渾身の一撃。


「シールドバッシュ!!」


 ガギィィィン!!と重苦しい衝撃音が響き、キマイラは巨木を数本なぎ倒しながら、派手に後方へと吹っ飛んでいった。


「大丈夫?」


 レオは震える少女に駆け寄り、手を差し伸べた。大きな魔法使いの三角帽子を深く被った少女は、レオと目が合うなり、「あ……」と小さく声を漏らし、慌てて帽子の鍔を掴んで顔を隠してしまった。

 その間にも、キマイラが体勢を立て直し、怒り狂って咆哮を上げる。レオは迷わず右手の『プロメテウス』をアリーシャへ向け、魔力強化のバフ弾を撃ち込んだ。


「アリーシャ! そのまま倒しちゃって!」

「了解です、マスター!」


 青い光の粒子を纏ったアリーシャの動きは、もはやキマイラの動体視力を凌駕していた。反撃の隙すら与えず、強化された筋力による猛攻で、Aランク魔物の息の根をあっという間に止めてみせた。

 戦闘が終わり、アリーシャがレオの元へ戻ってくる。


「女の子は大丈夫でしたか?」

「なんとか……でも、話しかけてもこの調子でさ」


 少女は依然として、大きな帽子で顔を隠し、震えている。アリーシャはフッと優しく笑うと、膝をついて彼女の目線に合わせた。


「マスターは怖くないですよ? とっても優しい人ですから」


 その言葉に促されるように、少女は恐る恐る帽子を上げた。


「あ、ありがとうございます……。わ、私はミレイユ……ミレイユ・ソーサラーです」


 消え入りそうな声で名乗った彼女は、魔法都市アルカナの魔導学校に通う生徒だという。授業で使う薬草や毒草を探して、つい森の奥まで入り込んでしまったらしい。

(毒草を授業で使うなんて、魔法都市ってのは物騒なところだなぁ……)とレオは内心で思った。

 彼女の容姿はレオと同じくらいの背丈だが、特徴的だった。左目には複雑な魔方陣が描かれた眼帯をしており、ウェーブのかかった紫色のロングヘアが、ダボついたローブから溢れている。裾上げを自分でしたのか、ローブの端々には不器用な縫い跡があった。

 危険な森に一人残すわけにもいかず、二人はミレイユを連れてアルカナへ向かうことにした。

 森を抜けると、そこには王都とはまた違う、威容を放つ大きな石壁が聳え立っていた。周囲を深い堀が囲み、頑丈な鎖で繋がれた分厚い木製の跳ね橋が下ろされている。


「ここが……魔法都市アルカナ」


 西門に辿り着くと、そこには整然とした装備を纏う門番が立っていた。ミレイユがもじもじと事情を説明すると、門番は居住まいを正してこちらへ歩み寄ってきた。


「魔導学校の生徒を救っていただいたそうで、感謝いたします。念のため、身分証明できるものを拝見してもよろしいでしょうか?」


 王都の門番よりもどこか丁寧で、知性的な印象を受ける。二人が提示した銀色のカードを見た瞬間、門番の目が大きく開かれた。


「Cランク冒険者様でしたか! これは失礼いたしました。どうぞ、魔法都市アルカナへお入りください!」


 丁重な出迎えを受け、跳ね橋を渡る。門をくぐった先には、いたるところに魔導具の街灯が並び、建物には複雑な術式が刻まれた美しい街並みが広がっていた。


「レオさん、アリーシャさん。あ、あの……冒険者ギルドはこっちです」


 ミレイユの案内に従い、二人は王都への無事の報告と、拠点移動の手続きのために、アルカナの冒険者ギルドへと足を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ