2-23話:幼きドワーフの夢
ドワーフの二人は、まるではねるウサギのようにちょこちょこと走り回っては立ち止まり、必死に地面を覗き込んでいた。岩陰に身を潜めたレオとアリーシャの耳に、幼い声が風に乗って届いてくる。
「ねえねえ、パロム!」 「なに? マロム」
マロムと呼ばれた男の子が、鼻を膨らませて提案した。
「今日はどっちが先に『キラキラな石』を探せるか競争しない?」
「いいけどぉ、見つかったら族長のネネリ様に怒られちゃうよ? だって、絶対外に出たらダメって言ってたし……」
パロムという女の子が少し不安げに首をかしげる。だが、マロムは引き下がらない。
「でもさ、大人だけが外に出るのズルいだろ! いつもすげぇキラキラした石持ってくるし……。俺も、あの石を使って自分で何か作ってみたいんだ。俺だって、もう『打てる』んだぞ!」
小さな拳を握りしめ、一人前の鍛冶師を気取るマロム。だがパロムは「私、女の子だし~、あんまりそういうの興味ないっていうか」と冷淡な反応。マロムは精神的なダメージを受けたように「うっ……」と言葉を詰まらせたが、すぐに名案を思いついた。
「で、でもさ! もし俺がその石でパロムに綺麗なアクセサリーを作ってあげたら……どうする?」
「えっ! いいの!? 作ってくれるなら嬉しいな!」
パロムのパッと華やいだ笑顔に、マロムは鼻の下を伸ばして優越感に浸る。
「だろ!? だからさ、二人で探してすぐ帰ればいいじゃん!」
「そうだね! 私も探す!」
やる気を出した二人は、再び地面を這いつくばるようにして探索を再開した。
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「ねえ、アリーシャ。あの二人が言ってる『キラキラした石』って、何だか分かる?」 レオが岩陰からそっと尋ねると、アリーシャは真剣な面持ちで頷いた。
「おそらく、『ミスリル』のことかと。ミスリルは青く澄んでおり、光を反射して美しく輝きます。……ですが、あれはそう簡単に見つかるものではありません。まして、こんな表層にあるはずがないのですが」
「そうなんだ……」
レオは少し残念そうに肩を落とした。もしそれがあれば、自分の武器もドワーフの手で最高のものになるかもしれない、という淡い期待がよぎったのだ。
「だけどさ、あの二人……見つかるまでずっとあそこにいるつもりかな?」
「少し気になりますね。ここは比較的安全とはいえ、擬態しているロックサイノスがいます。もし彼らが知らずに石と間違えて叩きでもしたら……」
「……だよね」
追跡して地下都市の入り口を突き止めるつもりだったレオとアリーシャは、いつの間にか迷子の子供を見守る保護者のような心境になっていた。 幼い夢のために危険を冒すマロムの姿が、自分に合う武器を求めて山を登る自分と少しだけ重なって見えたからかもしれない。
二人は息を潜め、小さなドワーフたちが「岩の巨獣」を呼び覚まさないよう、祈るような気持ちでその背中を見守り続けた。




