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2-19話:審判の咆哮

 キマイラの猛攻は止まない。空中から翼を羽ばたかせ、重力加速度を乗せた連続攻撃がアリーシャを襲う。彼女は右手の片手剣で鋭い牽制を入れつつも、主軸はあくまでその巨大な盾だった。

 ドォォン! ドォォン! と、大地を揺らす衝撃音が響く。 キマイラの爪が叩きつけられるたび、アリーシャの足元は土を削り、ずりずりと後退していく。だが、彼女はその衝撃を「耐えている」のではなかった。大盾の表面が、攻撃を受けるたびに鈍い光を吸い込み、脈打つように輝きを増していく。


「ウガアアアアッ!!」

 

キマイラが勝利を確信したかのように、最大の力を込めた爪の一撃を振り下ろした。その時、時が満ちた。


「マスター! 行きます! 見ていてください……これが私の真価です!」


 レオが喉を鳴らし、唾を飲み込む。 その瞬間、アリーシャの持つ大盾が、機械的な駆動音と共に左右へと展開した。中央には、盾の一部として埋め込まれていたかのような、重厚な剣が姿を現す。

 アリーシャはその剣を抜き放ち、キマイラの懐へ踏み込んだ。


「――ジャッジメント・クライム!!」


 大盾が蓄積した敵のダメージを、純粋な破壊エネルギーとして剣に転写し、一気に解き放つカウンターの極致。 眩い光の奔流がキマイラを飲み込んだ。悲鳴を上げる間もなく、巨大な魔物の肉体は光の刃によって四散し、森に静寂が戻った。


「……ふぅ」


 一息ついたアリーシャが、首を振って汗を飛ばす。 森の木漏れ日が、返り血を浴びることなく気高く立つ彼女を照らし出した。その姿は、あまりにも神々しく、戦士としての「美」に満ちていた。


「マスター、見ていただけましたか? これが私の戦い方です」

「う、うん……とっても綺麗……じゃなくて! すごかったよ! 本当に!」


 危うく心の声を漏らしそうになり、レオは慌てて言葉を繕った。だが同時に、胸の奥には鉛のような劣等感が沈殿していく。Aランクの魔物を一人で、それもこれほど鮮やかに。


「……ありがとう、アリーシャ。でも、君がこれだけ強いと、僕はお荷物になっちゃいそうだなって……」

「そんなことはありません!」


 アリーシャは力強い足取りで歩み寄り、レオの目を真っ直ぐに見つめた。


「マスターはまだ、ご自分に合った武器をお持ちではないだけです。私も、この『審判の盾』に出会う前は、大したことのない前衛でした。……自分に合う武器さえ見つかれば、マスターはきっと強くなれます」

「自分に合った、武器……」


 アリーシャの励ましに、レオはふと自分のバッグの重みを意識した。

「鉄くず」と呼んでいる、二丁の金属。アルケミスト(錬金術師)という、物を作る職業である自分が初めて作成した物。


(これ、もしかして……今の僕なら、何か「変えられる」のか?)

 

キマイラの消えた森の中で、レオの指先が、バッグの奥にある冷たい鉄の感触に触れた。その瞬間、これまで沈黙を守っていた鉄の塊が、かすかに熱を帯びたような気がした。


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