5-3.上位魔法『サンダースピア』
リンメイは店を出ると一旦、トナの森に戻り、エランデル国の温泉に戻ろうと考えた。
今さらスラーレン法国がどうなろうと関わりたくはなかった。
街外れに向かうと男たちが現れた。
「ついでだ。そいつの身ぐるみも剥がしてしまおうぜ」
「ついで?・・」
男たちがリンメイを囲んだ。体は大きな者ばかりだ。手にはナイフや剣を持っている。
「怪我をしないうちに去ることね」
リンメイは男たちに忠告した。
「ビビらないところをみると、多少はやりそうだな。だが俺たちに敵うと思っているのか?」
「ええ」
「いいねえ、その表情。・・それにわりと綺麗だ。楽しめそうだぜ」
「さっそくいただくか」
後ろの男がリンメイに襲い掛かった。リンメイは宙を舞うと、男の顔に蹴りを入れた。
「身も軽そうだが、俺たちをなめるなよ」
「ローウルフから比べたら赤子をひねるようなものね」
「ただの力自慢だと思うな。魔法も使える。マジックアロー(魔法の矢)」
魔術師がリンメイに魔法攻撃を浴びせた。だが、リンメイはマジックシールド(魔法防御)で防いだ。
「レベルもたいしたことはないわね。魔法を浴びせるまでもないわ」
リンメイは飛び上がると男たちに蹴りを入れて倒していった。
「こ・の・く・ら・い・で・・」
立ち上がった男たちに
「手加減してやっったのに。チェインライトニング(連鎖電撃)」
男たちに電撃を食らわした。
リンメイは気を配って山のほうに駆け出した。入ったところに男が倒れていた。
「しっかり」
「賊にやられた」
「彼らなら倒したから」
「ありがとう。家に戻るところだった」
「連れて行ってあげます」
こんなところに置いていくのも気が引けた。
「助かります。私はラスク」
「わたしはリンメイ」
リンメイはラスクに肩を貸して街に戻った。
ラスクの家に着くと、女が2人出てきた。一人は少女だった。
「私の妻のネルと娘のリリーです」
リンメイに紹介すると
「このリンメイさんに助けてもらった」
と行った。
「ありがとうございます」
「いえ」
「山には薬草を採りに行っていたんです。スラーレンは国王が決まらず、街にも乱暴者が現れるようになって、近々ワリキュール国の新しい村、ワウリン村に行くことに決めたんですけど、私も多少魔法を使えますが、そう強くはありません。娘も治癒魔法などが使えて薬草の知識もあるのでポーションをつくれる薬草を採りに行ってきて、その帰りだったんです」
「じゃあ、ワリキュールに行く予定なんですか?」
「ええ。出来れば早くにも。ここに居ると誰に襲われるかわからなくなっってきたので」
「それじゃ、そのときワリキュールまで護衛として付いていっていいですか?そっち方面に帰る予定だったので」
「そうしてもらえるとありがたいです」
ちなみにワウリン村は、ワリキュールの街にSLが走り、街に電気の灯りが灯りはじめ、仕事が増えるとともに街の人口も増えて始めた頃、自治区の改編が行われた時にニューゴールドタウン自治区に新しくつくられた村だ。リンメイは、そのいきさつは知らなかった。
ラスクはスラーレンの街で薬屋をしていたようで、ちょっと大きな家に住んでいる。リンメイは一部屋を用意されて、ラスクたち家族の護衛を頼まれた。リンメイも彼らとワリキュールに戻れるので都合がよかった。
リリーは早速、ラスクの採ってきた薬草でポーションをつくりはじめた。
「ポーションがあれば、魔法が使えなくても傷を癒したり出来ます」
リンメイはトリルを思い出した。彼も薬草からポーションをつくっている。
雅則や悠介の世界には医者が居て病院というものもあるらしい。リンメイの世界では怪我や病気は薬草や魔法で治している。
◇
ラスクの馬車でワリキュールに向かった。
「ゴラン谷を抜けるのが一番の近道ですけど、竜魔族が居ますから。トナの森も狼魔獣が出てこなければいいんですけど」
「ローウルフなら出てきても倒せますから」
「え?そんなに強いんですか? いや、失礼」
「いえ。・・トナの森は私が修行した森でもあるんです」
「そうだったんですか。・・もしかして冒険者とか・・」
「ええ。エランデル国でSクラスのプレートをもらっています」
「Sプレートというと?・・」
スラーレン法国には冒険者協会などのようなものはない。ゆえにレベルを判定するところもない。
「レベルが60を超える者がもらえるものです」
「それは頼もしい」
トナの森を抜けようとしたところで立ちはだかるものがあった。
「あれは山賊だ。馬車を狙って出没する連中だ」
「前にも出会ったことのあるやつらのようなものね。ラスクさんは防御魔法は使えますか?」
「ええ。ある程度の力は出せます」
「じゃあ、奥さんと娘さんを守ってください。私が彼らを倒しますから」
「は、はい」
ラスクが馬車を止めると
「男が一人で女が三人か。今日はいい獲物に出くわした。食料のほうがいいけどな」
山賊たちが馬車に近づいてきた。
リンメイは御者台で立ち上がると
「黙って通しなさい。手を出せばただでは済まないわよ」
と山賊たちに言った。
「おまえは冒険者か。警護のつもりか。俺たちが何人いると思っている」
「何人でも相手になるわ。ローウルフより強そうに思えないし」
「魔獣と一緒にするな。そいつから倒せ」
襲ってくる山賊に宙を舞ったリンメイが蹴りを入れて倒していった。
「何という動き。魔法攻撃を浴びせろ」
魔法を使える者たちがリンメイに魔法の矢などで攻撃してきた。リンメイは、それらをかわしながら炎の矢を放った。レベル100のリンメイの炎の矢は強力だ。山賊たちは炎を浴びて倒れていった。
リンメイの強さに恐れを感じた山賊たちは我先に逃げていった。
残った山賊は
「おまえはもしかしてゲルドを倒したリンメイか」
と聞いた。
「どうしてゲルドや私を知っている」
「俺も元シャドーコープスだからな。一時はサーベルハンターに入ってゲルドに付いていた」
「シャドーコープスが山賊に成り果てるとは、許せない」
「生きていくためだ。何でもするさ。だが、お前を生かしておくと、邪魔になるかも知れない。倒しておくことにする」
男は呪文を唱えると、次々に魔方陣を出した。
魔方陣を使って出す魔法は上位魔法という認識をリンメイは持っている。リンメイはめったに使ったことがない。
魔方陣はリンメイを囲むと赤く色が変わっていった。そして・・
「ファイヤーバースト!」
周りから炎がリンメイに襲い掛かった。
「燃えてしまえ。も・・え?・・」
炎が消えていくと、リンメイが衣服を燃やすこともなく立っている。
「な、なぜ・・」
「レベルは50は超えているようだけど、私も防御魔法は使えるわ。マジックシールド。レベル100の私を、そのくらいの炎では燃やせないわ」
「レベル100?・・嘘だろう」
「まだ実践では使ったことがないけど、私の上位魔法を浴びせてあげる」
リンメイは上空に魔方陣を出した。そして黒い雲が周りに立ち込めた。
「何をする気だ」
「炎より強力な攻撃魔法。サンダースピアー(雷槍)!」
空から雷光が落ちてきて男に突き刺さった。男は黒焦げになって地に伏せた。
ラスクたちは唖然としていた。
◇
ラスクの馬車はワリキュールに着いた。だがラスクは街には入らず西地区と呼ばれる場所に馬車を進めた。ニューゴールドタウンという新しい自治区だ。そこにはスミス醸造でつくられるワインの原料となる葡萄も育てられている。ラスクはニューゴールドタウンの自治区に造成されている街で薬屋を開く予定でいる。
「リンメイさん。ここまで警護してきてくれてありがとうございました。本来ならお礼というか報酬を支払わなければならないんでしょうけど・・」
「いえ。ここまで連れてきてもらえただけで、私も助かりました」
リンメイはラスクに礼を言ってワルコット駅に向かった。あとはエランデル国のニドルやユニが待つ温泉に帰るだけだ。




