3-7.苦悩
「魔族の、特に戦えないものはロワール城に移した。ここで歓迎してやることは出来ない。ロワール城に招待してやりたいが」
ヒュンケルに言われて雅則は承諾した。
「もしかして、ヒュンケルと酒を酌み交わしていいのか?」
ジルが雅則に聞いていた。
「ヒュンケルがいいなら、俺はかまわないけど」
ヒュンケルも
「俺も酒のみ友達は歓迎だ。今日は楽しく飲もう」
みんなでロワール城に転移され、そこで宴が設けられた。
「人間が食べられる食材を揃えている、安心して食してほしい」
ヒュンケルが言うと
「メイドはデュラハンか?」
と雅則が聞いた。
「デュラハンは嫌いか?」
「いや・・シズに悪いから嫌いにはならないでおく」
「首はとらないように言っておくから」
雅則、ジル、リンメイはロワール城で宮廷料理でもてなされた。
「アルコールはジルに任せて・・どうしたリンメイ」
雅則に気遣かわれたが、リンメイは食欲が進まなかった。
「ソドルがどうなったか、確認出来ないな。仇を討たせてやると約束したが・・悪い」
雅則に頭を下げられた。しかし今のリンメイはソドルより気になることがあった。
「それより貴族街を・・」
「貴族街を壊滅させたのが気に入らないか?」
「あそこまでするとは・・」
「俺を魔王と思うならそれでもいい。別に好かれようと思ってないから・・今後どうするかは自分で決めて」
宴の後、ヒュンケルに館に転移してもらう予定だったが、ヒュンケルも酔いが回ってしまたっため、ロワール城で泊まることになった。
そして翌日、リンメイたちはヒュンケルに館に転移してもらった。
だが、その後、リンメイはしばらく部屋から出る気が起こらなかった。
「雅則くんならやると思ったけど、リンメイにはショックよね。どうするの?」
雅則は美緒から言われていた。
「リンメイに任せる」
◇
スラーレンの貴族たちがヒュンケルを追い出すために宮殿に押しかけ、雅則たちに敗北した。それは仕方のないことだとも思えなくはないが、雅則が極大魔法で貴族街まで容赦なく壊滅させたのは、なかなか納得がいかなかった。リンメイは部屋を出る気にはなれないでいた。
そんなとき、ヒュンケルが館に転移してきたことに気づいた。リンメイはヒュンケルと雅則の会話を聴力魔法で盗聴した。
「相談を聞いてくれるか?」
ヒュンケルは雅則に相談にやってきたようだ。
「国王の座を下りたいと思う」
「スラーレン法国のか?」
「俺は国の統治者として資格がないと思っていたんだ。結局何も出来なかった」
「それはヒュンケルの自由だし、スラーレン法国がどうなろうと知ったことではないが・・」
「俺は元の世界では、平凡な青年だった。夢は夢で終わりにするしかなかった。そんなとき、この世界に転移してきた。そして人を超越した力を持つ魔王として、ロワール城に住み着いた。
だが、人は力より器量の方が重要だと気づくようになった。この世界にはハーロックがわかったようにいろんな種族がいる。腕力や魔法力は、人族より魔族たちのほうがあるかも知れない。しかし人族は他の生き物より智恵がある。だから、多少、力が劣っていても自分たちの国を作ることが出来てきた。・・しかし俺には、その器量が欠けているのだと思う」
「俺もそう思う。俺自身も国の統治とか世界の支配とか、そんなことは出来ないと思っているし、そうしたいとも思っていない。みんなが平等で、種族を超えて仲良く暮らしていければ、それでいいと思っている」
「だが、スラーレン法国をこのまま放っておいていいのか、相談に来た」
「俺にも時間をくれ。俺もスラーレン法国には関わってしまったからな」
そして翌朝
部屋の外からソリアの声がした。
「リンメイ、台所、片付けておいてくれる? テーブルの上に料理の残り物をおいておくから、よかったら残飯整理してもらってもいいから。じゃあ、お願いね」
そう言ってソリアは冒険者協会に出かけたようだ。
リンメイは台所に行って、朝食の用意がされていることに気づいた。
「みんなが私を気遣ってくれている」
リンメイは夢中で用意された食事を口にした。心が病んで食欲もなかったが、用意してくれた食事を見て急におなかがすいてきた。
そしてコーネリアもいないことに気づいた。リンメイはわざと残してくれているみんなの食事のあとの食器類を洗った。
◇
カリナが二階から下りてきた。リンメイはリビングや廊下の清掃もしていた。
「ごめんね、私、ほとんど館に居るのに家事はほとんどしてないの」
とカリナに言われた。
「カリナさんは設計図だかを描いているの?」
「そう。空飛ぶ自動車を考えているんだけど、難しいのよ」
「今、館に居るのはカリナさんと私だけ?」
「そうね。ソリアさんは冒険者協会だし、悠介さんは自動車の営業所、ハーロックさんとリサさんはエドワール。他は美緒さんと牧場のほうかな。コーネリアも牧場みたい」
「そう・・」
「ねえ、お昼だけど、街に食べに行かない? ほとんど館に居るからたまには歩きたいな。リンメイさんは強いと聞いているから、安心してどこへも行けそう」
「いいわよ。それと・・呼び捨てでいいから」
「わかった、じゃあ私のことも」
リンメイはカリナと街のフードショップに出かけた。
「私は貴族の出なんだけど、いいことなかったから街のほうに飛び出してきたようなものなの。だから私についてあまり触れてほしくないんだ。リンメイさん、ううん、リンメイのことも聞かないから、いいでしょう?」
「うん」
思えば、館の住民とどのくらい親しくなれているのか、リンメイはあらためて考えた。
「ねえ、夕食を作ろうと思うんだけど、手伝ってくれる?仕事、忙しい?」
「ううん。私も料理とか覚えなくちゃと思っていたの」
リンメイはカリナと夕食の料理をつくることにした。
夕方になって
「あれ、リンメイが台所に。作ってくれるの?」
悠介に言われた。
「美味しく作れるか自信はないけど、コーネリアに教わったのを思い出しながら作ってみようと思って」
「私も今夜は手伝うのよ」
「カリナも? 大丈夫?」
言われて
「ちょっと、ひどくない?」
とカリナは不満そうに声をあらげた。
館の中に明るさが取り戻りつつあった。




