3-6.スラーレン宮殿の攻防
宮殿の周りは1000人どころではない。数えきれないほどの兵服に身を包んだ者たちが集まっていた。
「ヒュンケル様、人族には多勢に無勢という文句があるそうです」
どこで覚えたのかシズが言った。
「いくら魔王の俺でも、あの人数を相手には出来ない。魔獣を召喚しても1匹だけだからな」
ヒュンケルの言葉にリンメイは、え?魔王って強いんじゃないの?・・と思った。
「宮殿には魔族も100人ほど居ます。戦闘は無理な者も居ますが、全力で戦えば負けないかと・・」
シズのほうが戦う意思を見せている。
「人族とやりあうことになろうとは出来れば避けたい。・・ハーロックに力を請うか。しかし、前回のように館にハーロックが居なかったら自分たちで何とかしなければならない」
「ヒュンケル様だけでもロワール城にお逃げください」
「馬鹿なことを言うな。シズたちを犠牲にするつもりはない」
貴族の兵たちは、宮殿に魔法攻撃を浴びせてきた。
「シズ、ハーロックが居るかいないか、ワリキュールに行ってくる。リンメイも無事返さないとハーロックに怒られるからな」
「はい」
「魔獣を召喚するから隙を見て魔族たちをロワール城に逃がしてくれ」
「わかりました」
ヒュンケルは広場に召喚獣・ゲオを召喚すると、魔法陣を出した。そしてリンメイを連れてワリキュールの雅則たちの館に転移した。
雅則も悠介も館に居た。
「今日は居てくれたか」
ヒュンケルは安心した顔をした。
「リンメイに傷を負わせてしまった、すまない」
ヒュンケルが雅則に謝った。
「大丈夫か」
雅則がリンメイを心配してくれた。
「私は大丈夫です、それより宮殿が・・」
リンメイとヒュンケルが宮殿を貴族たちが襲ってきたことを雅則に伝えた。
話を聞いた雅則は
「不安が的中したな」
と言った。
「ハーロックの力を借りたい」
ヒュンケルが助けを求めた。
「分かっている。だが、こっちも狙われているんだ」
雅則たちもスラーレンの魔術師たちに狙われていた。マーラ側のワリキュールに潜入している魔術師らしい。
美緒が
「私が行ってゴジラで兵を蹴散らす?」
と提案した。
リンメイは美緒がゴジラなる怪獣を召喚出来ることを知らなかった。
雅則が
「それも名案かも知れないがゴジラを出すほどでもないだろう。ジル、人間を相手に戦えるか?」
とジルに聞いた。悠介が
「ジルたちは、ゲームの中で侵略してくる人間を相手に戦っていた。もちろん、人並み優れた人間たちとな」
と思い出すように言った。
「それにジルは召喚獣も出せたな」
「リサにあっけなく倒されたけど」
「一緒に行って戦ってくれるか?」
「わかった。力になる」
「よし、俺とジルでスラーレンに行って来る」
「俺も連れていけ」
そう言う悠介に
「勝っても褒美に女は抱け無いぞ。デュラハンのシズなら抱かせてくれるかもしれないけど」
と雅則は言った。
「首が取れる女は抱きたくないな」
「ハユナたちがやってきたら倒しておいてくれ」
リンメイは雅則たちの話を理解出来なかったが、雅則とジルがスラーレンの宮殿に手助けに行くのは理解出来た。
雅則とジルがヒュンケルとスラーレンに転移しようとすると、リンメイは
「私も連れていって。ソドルを倒したいの」
と雅則に頼んだ。
「仇をとらせてやると約束したからな」
リンメイは雅則とジルとともにヒュンケルとスラーレンの宮殿に転移した。
◇
ヒュンケルが召喚した召喚獣ゲオが貴族の兵たちから魔法攻撃を受けて倒れそうになっていた。
「シズ、戻ったぞ」
ヒュンケルが戻ると、シズはヒュンケルがハーロック(雅則)たちを連れてきたので安心するように喜んだ。
「魔族の大半はロワール城に向かいました」
「よくやった」
雅則が外の様子を見て
「ジル、召喚獣を出して、兵を蹴散らしてくれ」
とジルに頼んだ。
「任せてくれ」
ジルが召喚獣ギガスを召喚して兵を追いやった。だが、魔術師たちがギガスも攻撃した。
「ゲオもギガスも美緒のゴジラから比べたら大したことはないな」
雅則が
「久々に『流星雨』を降らせるか」
と言うと
「人間を殺すのか?」
ヒュンケルが聞いた。ヒュンケルは雅則の『流星雨』を知っているようだった。
「俺にとってこの世界の人間は他の魔族や魔獣と同じ、助けるものは助けるし、邪魔なものは殺す」
そう言って雅則は宮殿の屋上に上がっていった。
リンメイは足を痛めていたが歩けないほどではなかった。雅則が何をするのだろうと、後から屋上に上がっていった。
雅則は天を仰ぎ
「召喚、流星雨!」
と叫んだ。
空が曇り始めると渦が巻き始め、底から大きな火の玉が落ちてきた。それは宮殿の周りに次々に落下した。
宮殿に攻め入ってきた兵たちは驚いて逃げまどった。そして貴族街に戻っていった。
その極大魔法にリンメイも驚いた。
「さすがハーロックの極大魔法」
ヒュンケルは雅則の魔法をたたえた。
「来たついでだ。徹底的に貴族たちを叩いておこう」
「え?」
眼下に見える貴族街。雅則はその街並に見入った。
「まさか貴族街を今の極大魔法で・・」
リンメイはそう思って雅則に確かめようとした。
「そうだ。追い払っただけでは、また悪さをしかねない」
「そこまでしなくても」
「面倒くさいからかたずける」
「面倒くさいって、住んでいるのは反旗を翻した兵だけではありません。家族も居ます」
リンメイが言うと
「じゃあ彼らは相手を襲うとき、その相手の家族も思って襲うのか?」
と雅則に言われた。
「それは・・」
リンメイは答えられなかった。
ヒュンケルも
「俺もこの宮殿に移ってきてスラーレン法国の歴史も調べた。書物も残っていたので、そこからもスラーレン御三家のことも知った。
俺が元居たロワール城は廃墟だった。それは、そこロワール国をつくってつつましく暮らしていた人族が居たが、スラーレン王族たちが入ってきて奪ったらしい。その後、彼らはスラーレン国を作ったため、ロワール城は廃墟となった」
「そんな歴史があったんだ」
「人族は他国を奪うことで国を大きくしていく」
「スラーレンの祖先もマルケドーラ帝国と同じだったわけだ」
「人族は同じ人族ばかりか、他の種族の命も奪い、追いやってきた」
「俺からすれば人族も魔族も他の生き物も同じだ。それぞれの社会をつくり家族もいるだろう。この世界は色んな生き物が居る。人族のために他の種族が犠牲になっていいわけがない」
雅則はそう言うと天を仰いだ。
「お願いがあります。見逃して欲しい館があります」
リンメイは雅則に頼んだ。
「オルコック様の、アレイン家の館は見逃してもらえませんか。恩があるんです」
「しょうがない。なるべく落とさないようにするよ」
雅則は、また天に向かって
「召喚。流星雨!」
と叫んだ。
火の玉が貴族街を襲い始めた。それは数え切れない量の火の玉で、貴族街を徹底的に破壊した。
貴族街は焼け野原になった。オルコックの館も被害を多少被ったがオルコックは無事だった。
スラーレンに戻ってきたマーラは、焼け野原になった故郷を見て唖然となった。




