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< 幕間 ジル・トラバート その1 >

 ジル・トラバートについて、本編『異世界に行ったら最強になった』で詳しく描けなかったのでリンメイ編で描くことにしました。

 ジルはマリアント国のホーエン村で育った。

 ある日、王女であるマスカット姫と出会い、助けたことがあり、ジルはマスカットに仕える騎士としてとりたてられる。

 その後、マリアント国は幾多の危機に見舞われ、魔法も使えるジルは、マスカットを守りながら騎士として成長していく。

 国が平和を取り戻してしばらくした頃、ジルの前に魔方陣が現れ、それに吸い込まれる。

 そして周りの景色がはっきりすると、そこは見たことの無い広間だった。

 女がひとり居た。若い女だった。

「あなたは・・」

「私はアリオン神国のベナ神殿から来た、女神のソアラです」

「女神?」

「名前を聞かせて」

「俺はジル・トラバート。マリアント国の騎士をしている」

「どこの世界の騎士かしら」

「え?」

「勇者を召喚したら、あなたが現れたから」

「勇者って、召喚って、どういうこと?」

「私はベナ神殿で女神としての修行を積んで、召喚術を会得しました。そしてあなたをこの世界に召喚したのです」

「この世界にって、ここはどこ」

「元マルケドーラ帝国の跡地。今は荒野になっています」

「マリアント国に戻して欲しいんですけど」

「戻る前にお願いがあります。魔王ハーロックを倒して欲しいんです」

「魔王ハーロック?」

「悪しきハーロックを倒してもらうために、あなたをこの世界に召喚しました。ここマルケドーラ帝国を荒野にしたのも魔王ハーロックなのです」

「帝国を荒野にって、かなり強いやつじゃないのか?」

「私は存じません」

「は?・・」

「あなたが強いのを信じて、魔王ハーロックを倒してほしいのです」

「悪いやつなら倒すのは引き受けてもいいけど」

「資金は、これをあげますから」

 ジルはソアラから金塊をもらってワリキュール王国に向かった。


 ◇


「大きな街だな。・・煙を吐いて走っているのはなんだ?・・ここに魔王ハーロックは居るのか?」

 ジルは銀行で金塊を金貨と銀貨に換えた。そして情報を集めながら冒険者協会に行った。

 そしてクエストボードを眺めていると

「あのう、仕事をお探しですか?」

と協会の職員の女に声をかけられた。

「あの・・魔王を退治するような依頼とかはないですか?」

 聞いてみた。

「え?・・そういうのはないですけど」

「そうなんだ」

「冒険者ですか?」

「いや、まだ来たばかりだから」

「じゃあ冒険者登録します? 魔力検査をしてからになりますけど」

「魔力検査?」

「はい。お名前は・・」

「ジル・トラバートという」

「では受付をしてから魔力検査になります。申請の費用がかかりますけど」

 ジルは受付嬢に銀貨を出した。

「銅貨はないですか? 申請費用は高くないので」

「あとは金貨しか持ってないんだけど」

 そう言うと受付嬢は仕方ないように数十枚の銅貨を出した。

「そんなにくれるの? かさばるからおつりは君にあげるよ」

 そう言うと、受付嬢は機嫌よくなってジルを二階に案内した。

 そして別の女に

「この方の魔力検査をお願いします」

と受付嬢はジルの冒険者申請書をそのソリアに渡すとルンルンしながら降りていった。

「ではレベルからみましょうか」

と言われ

「その前に聞きたいことがあるんだけど。魔王ハーロックって知ってる?」

と聞くと

「え?・・」

と驚いた顔をされた。

「聞いたことは・・噂ではありますけど、それが何か?」

「何処に居るかわかる?」

「さあ・・どうして、その魔王を?・・」

「いや、知らなければいいんだ。この世界に居ると聞いたものだから」

「そうですか。・・冒険者登録します?」

「しておいて悪くないか。お願いする」

「ではそこの魔法定盤石に手をかざしてもらえますか?」

「わかった」

 ジルが定番石に手をかざすと、火花のような光が発生し、それが大きくなっていった。

「いいです。離してください」

「今のはなに?」

「魔力のレベルを示す光ですが・・レベル300ですね。・・では魔法色素も見ますので水晶に手をかざしてもらえますか?」

 ジルが水晶に手をかざすと水晶は曇りはじめた。

「これは・・」

 女性職員ソリアは、唖然としたように動かなかった。

「お嬢さん」

「え?・・あ、すみません。今まで見たことのない色だったものですから。私も検査には慣れていないので・・あの・・どこから来たんですか?」

 聞かれてジルはどうこたえていいか悩んだ。そして

「秘密にしてくれるなら」

と小声で言った。

「はい」

「別の世界から」

「え? 別の世界?・・異世界からということですか?」

「そういうことになるのかな」

 そうこたえてジルは

「異世界って知っているの?」

と聞いた。

「いえ・・どうして、その・・魔王ハーロックの名を?」

と聞かれた。

 ジルはまだこの時点でソリアが異世界から来たという雅則たちの館に一緒に住んでいることを知らなかった。

 ジルは隠すこともないと思い

「(魔王ハーロックを)倒してくれと頼まれたから。どんなやつか俺も知らないけど」

と話した。

「え! 誰にですか?」

「ああ・・詳しい話をベラベラしゃべるつもりはないから」

「すみません。じゃあ、また明日来てもらえます? 登録書をお渡ししますから」

「わかった。よろしく」


 ジルは街を散策して魔王ハーロックの情報を得ようと思ったが、誰も知らないようだった。そして夜になり、お酒を提供する店もあることを知った。

「俺の国のジェナタウンという町にも酒を飲める店が何軒かあって、そこで酒の味を覚えてしまった」

 ジルはスナックに入った。

 そこで女の客と出合った。

「一人なんだ。こういうところに出入りする女性はめずらしい」

「話しかけると」

「わるい?」

となつくように寄ってきた。

「いや、一緒に飲んでくれる友達になってくれるなら、男でも女でも歓迎だよ。俺はジル。よろしく」

「私はイビル。よろしくね」

 ジルは閉店までイビルと飲み明かしてしまった。


 ◇


 翌日、ジルはまた冒険者協会に行った。

 受付に行くと

「冒険者登録書は出来ています。クラスはSになります」

と言われ、登録書を渡された。

「きみは魔王ハーロックを知っている?」

 聞いてみると

「私は知りません」

と言われた。

「魔王ハーロックが見つからなければ元の世界に帰してもらえない」

 ジルはワリキュールの街で安い宿に泊まりながら、昼間は街の散策、夜は宿の近くのスナックで過ごした。

 すると

「こんばんわ」

とイビルが現れた。

「もしかして、君も常連?」

「だって、お酒が大好きだもの」

「気が合いそうだ」

「でも最近よね、見かけるようになったのは。何処から流れてきたの?」

「流れてきたというか、この街ははじめてだけど、いいところだね。きみはこの街の人?」

「私も流れてきたんだけど。でもこっちに来てどのくらいになるかな。私もこの街は気に入っているわ」

「どんな暮らしをしているの?」

「冒険者。じっとしているのは性に合わないから」

「じゃあ冒険者仲間か。魔王ハーロックって聞いたことある?」

「知らない。・・どうして?」

「魔王だから倒してくれって頼まれているんだ。そこで手がかりを探している」

「へえ・・誰から頼まれたの?」

「女神さま」

「女神?・・なにそれ」

「だよね。一緒に飲もう。楽しく」

 ジルはまたイビルと飲み明かした。イビルがジルの正体を探りに近づいたのを知らずに。


 ◇


 ジルは裏通りでチーズの店『マキバ』を見つけた。

 中に入っていくと

「いらっしゃい」

 女店員に声をかけられた。このアテナがセキュバスであることをジルは知らない。

 ショーケースの中のショートニングケーキを眺めて

「美味しそうだ。でも俺はチーズは苦手だからな」

とつぶやいた。

 すると女店員アテナから

「チーズを使わないケーキもありますよ」

と勧められた。

 そこにもう一人、男が入ってきた。女店員アテナ

「いらっしゃい」

と声をかけると

「ハーロックに会いたい」

と言った。

「だれだ、あんたは」

 店主スレーンが男に聞いた。

「ハーロックの居場所を教えろ」

 それを聞いたジルも驚き

「きみもハーロックを探しているのか。まさか俺と同じ目的じゃないよね」

と声をかけた。

「おまえは・・」

「人に名前を聞くときは、まず自分から自己紹介するものだ。俺はそう教わってきたけど」

 ジルが言うと男は

「ノクト」

とこたえた。

「ほんとうに名前だけだな。俺はジル。なぜハーロックを探しているか聞きたい」

「お前は居場所を知っているのか」

「俺もハーロックを探している」

「ならこいつに聞こう」

 ノクトは店主スレーンに歩み寄った。

「きみは本当に礼儀知らずだな」

 ジルがノクトを制した。

「おれはまだるっこいのが嫌いなんだ」

「そういう短気は損気と言うぜ」

「おまえはなぜハーロックを探している」

「もしかして、きみと同じ理由かもな」

「ならこいつから聞き出せばいい」

「脅してか?暴力をふるって聞き出すのは感心しないな」

「おとなしく答えてくれれば何もしない」

「それって脅しているだろう」

「いちいちうるさいやつだ」

「俺の目の前で暴力を振るわないでくれよ。俺もそこそこ強いと思っている」

「なら、先におまえの力を見せてもらってもいい」

「じゃあ広いところに行こう」

 ジルは店に迷惑が掛かると思い、ノクトを連れ出した。


 ◇


 街外れの広場で、ジルはノクトと対峙した。

「もしかして、異世界から来たのか?」

「どうしてわかる」

「まさか俺以外にも異世界からの転移者が居たとは驚いた」

 ジルの言葉に

「俺もだ。おまえも女神に召喚されたのか?」

とノクトが聞いた。

「どうやらそうらしい。どこの女神だか知らないが、はじめて見る女神だった」

「目的は、同じハーロックを探し出して退治すること」

「ああ。理由はわからないがな」

「理由もわからないまま、引き受けたのか?」

「でなければ、元の世界に戻れないからな」

「それは俺も同じだ。ただ・・引き受けたのはいいが、納得しているわけではない。女神がハーロックは魔王だと言っていたが、そのような形跡はまだ見当たらない。本当にこの世界に居るのか?」

「さっきの店の男の態度から居るようだが」

「それにしては、この世界の人々は平和すぎる。のどかに暮らしている」

「それは俺も不思議に思っているが、女神から聞いた隣のスラレーン国の元女王もハーロックを恨んでいる」

「そうなのか。じゃあ、やはりハーロックは悪いやつなのか?」

「どうかな?そんなことはどうでもいい。ハーロックを倒して元の世界に戻してもらうだけだ」

「一緒にハーロックを探すというのはどうだ」

「それをお前が邪魔した」

「彼を脅してか?そういうやり方は好きじゃないな」

「俺はもともと一匹狼。誰かと手を組むのは苦手だ」

「なら手合わせをしておくようかな」

「望むところだ」

 ジルとノクトは構えると闘いをはじめた。

 だが力は互角。

「さすが、魔物を相手にするより難しそうだ」

「魔物を相手って、どんな世界から来たんだ」

 ジルは

「休戦しないか?ここでお互い体力を削りあっても仕方ないだろう」

と提案した。

「お前を倒したところで元の世界に帰れない。その提案受け入れよう」

 ノクトが受け入れたので、ジルはその場を去った。

 その後、ノクトが雅則ハーロックに倒されたことを、ジルは知らないで居た。


 ◇


 ジルがスナックに入ると、イビルが男に絡まれていた。

「悪いけど代わってくれないか」

と近づいていくと

「なんだ、待ち合わせか」

と男は去っていった。

「俺がきみの待ち合わせの相手ではまずかったかな?」

とイビルに言うと

「今日は来ないのかと思った」

と言われた。

「待っていてくれた?うれしいけど」

「もう何度も会って、何度も話している。ここに来れば会えると思って」

「俺もこの街に来て、日が浅いからきみのような人に会えて嬉しい。俺はここで冒険者として登録したけど、きみも冒険者と言っていたよね」

「ええ」

「女性の冒険者も珍しくはないが、まさかこの世界でも居るとは思わなかった」

「たしか魔王ハーロックを探しているとか言ってたよね」

「ああ、だがまだ見つからない」

「女神から頼まれたとか・・」

「そうだ」

「どこの女神?」

「それがわからない。・・いきなりこの世界に召喚された。はじめて見る女神だった。もしかして女神を知っている?」

「いいえ。知らないわ。聞いたこともない。ただ・・珍しい話だからちょっと気になって」

 イビルが女神の情報を聞き出そうとしていることに、ジルは気づかないでいた。

「俺も何がなんだかわからない。でも、女神が言うほどこの街では魔王の存在を知っている者がいないんだ。そんな魔王をなぜ女神は倒したいのかもわからない」

「その女神は何処に居るの?」

「何でも、もとマルケドーラ帝国があったところらしい。今は広大な荒地になっている」

「マルケドーラ帝国?」

「知っている?」

「いえ。行ったこともないわ」

「女神の話だと、そこは幾つかの大きな街があったが、魔王が荒地にしてしまったとか」

「それで魔王を?・・」

「だとしても、どうしてその魔王を倒すのに俺が召喚されなければならなかったのか。そうそう、もう一人同じように召喚されたものが居る。名前はノクトとか言っていた。彼も行方不明だ」

「そう・・」

 ノクトは雅則が既に倒している。


 ◇


 魔王ハーロックの手がかりがつかめないジルは、また冒険者協会に行った。

 クエストボードを眺めていると

「ジル。何してるの?」

とイビルが現れた。

「イビルか。冒険者の仕事がないかと思って。ハーロックは見つからないし。最近になってSLが走ったり今までになかったワインも飲める様になったし、生活様式が変わりはじめたと聞いたから、それと魔王ハーロックが関係しているかなと思い始めたんだ」

「そう・・」

「ここワリキュールから出た王家貴族が開拓したイミナス国が、今は魔族に支配されたという噂も聞いた。それで鉄道はイミナスではなくエランデル国と繋いだとも」

「で、これからどうするの?」

「俺が元の世界に帰るには魔王ハーロックを倒さなければばらない。しかし悪い噂は聞けないんだ。いったい何処にいるのか」

「それで女神ってどんな人?」

「どんなって・・召喚されて会っただけだから。なぜ魔王ハーロックを倒したいのかもよくわからない」

「じゃあ、女神にもう一度確かめたら?もとの世界に戻して欲しいって頼んだら?」

「それも考えたが、ここもわりといいところだなと思い始めているんだ」

「え?」

「ここに居座るとなると住居を構えないと、宿を借りるにもお金は居る。その資金作りに稼げる仕事は冒険者。ゴラン谷の竜魔族を倒せば多くの報奨金がもらえるらしい」

「まさか竜魔族を倒しに?」

「行ってこようと思う」

 ジルはそう決めて協会を出た。

 そしてなんでも屋に足を運び、ナディに

「ゴラン谷に行きたいんだけど、御者を頼める?」

と頼んだ。

 そして連れて行ってくれる御者の馬車に乗ってゴラン谷に向かった。





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