2-9.上がったレベル
飯店『ハナ』の朝食の時間、出されたデザートを見て
「これがオーグという魔獣が狙っているアズパイアという果物だ」
と悠介がジルに話した。
「魔獣が果物を?」
「もともと山に自生していた果物らしいが、それを人族が品種改良して美味しい果物にしたらしい」
朝食を済ませてギルド協会に行った。キャンペーンに参加するハンターたちが集まっていた。
「ワリキュールでは冒険者、ここではハンターという」
悠介はジルに知っていることを出来るだけ伝えようとしていた。
「アズパイアの買い付けの相談にも携わるので、今回のキャンペーンにも私も同行します」
ナルーシャが悠介と話していた。
そこに
「ナルーシャ」
とナルーシャの名を呼ぶ声がした。
「俺以外にナルーシャに声をかける者は誰だ」
悠介は近づく男を見て
「あ、たしか・・何処で会った男だ?」
と思い出せないでいた。ナルーシャが
「シゲル様」
と男に声をかけた。
「確か魔王シゲルとか言っていた男か」
と悠介も思い出した。
「カリア村で警護の仕事をしている・・」
カリア村と聞いてリンメイは思い出した。キャラバン隊の警護をしながら行ったことのあるカリア村。山の麓で、魔物が出やすい村だった。なのでギルドハンターを村の警護に雇っている。リンメイもしばらくの間、警護をしていたことがあった。
「魔王ヤマトシゲルです」
シゲルがあらためて悠介に挨拶していた。
「どっちにしても冴えない名前だけど。ナルーシャに何の用だ」
「オーグ討伐キャンペーンに参加しようと思って」
「じゃあ魔王の力を見せてもらおうか」
「彼も魔王ですか?」
ジルが悠介に聞いていた。
「本人はそう言っている。何でも交通事故に遭って、女神から天国に行くか異世界に行くか選ばされたらしい」
リンメイや悠介たちハンターは、用意された馬車でルーア村に向かった。
同行したナルーシャが
「今朝は現れませんね。ハンターたちにはテントを張ってもらって、昼間のうちに村長に会いに行きましょう」
と悠介に言った。
悠介とナルーシャが村長に会いに行っている間に、リンメイたちはテントを張った。
テントは男女に分かれ、リンメイはリンスと入ることにした。
リンスはリンメイに何も質問してこない。魔族だからか、それとも無口な性格なのか、またリンスが悠介や雅則たちとどういう関係なのか、よくわかっていなかった。
リンメイも無口な性格で、自分の話をするのも面倒なので女子トークは出来なかった。
その日はオーグは現れなかった。
◇
翌朝、リンスが
「来ます」
とリンメイを起こした。
「オーグ?」
「はい」
リンスは隣のテントに出て行って
「悠介様、オーグがやってきます」
と伝えた。
「学生時代、朝練はしたことないけど、オーグは早起きなのか?」
かなりの数のオーグが迫ってきた。
「リンスは水星魔法が使えるんだったな。オーグを倒せるか?」
「わかりません。オーグを相手にするのも初めてです」
「じゃあリンスの分も頑張るか。サイコパワーシュート」
悠介のサイコパワーがオーグに向かって行って身体を貫いていった。
リンメイは悠介の力を目の当たりに見て、普段の人柄とのギャップを感じた。レベルはリンメイより遥に高いように思った。
リンメイも炎の矢を放ってオーグを倒していった。すると
「リンメイ、無理をするなよ。傷が癒えたばかりで連れ出すことになったから、雅からも気遣うように言われている。担いで帰るのは遠慮したいから」
と悠介に言われた。悠介に2回も深手を負ったのを心配された。
「悠介さんの世話にならないように気をつけます」
「いや、世話してもいいけど、抱き上げるくらいなら。軽いならなおさらいい」
リンメイは悠介に抱かれる気はなかった。
あらかたオーグを倒すと、残りは退散していった。
ナルーシャが
「悠介さんたちはしばらくキャンペーンに参加してくれるんですか?」
と悠介に聞いた。
「いや、第一の目的はアズパイアの交渉だったから、それにワリキュールでの仕事もあるから明後日には帰るよ」
「そうですか」
「リンメイも帰るだろう? キャンペーンに参加してもいいけど、雅も心配するから」
リンメイは悠介に気遣われた。
「はい」
リンメイは悠介に従った。
「そういえば、薬草がどうとか言ってませんでした?」
ナルーシャに聞かれて
「そうそう、ルセールが知っていそうだって? 家はわかっているから訪ねて帰るか」
と悠介がこたえていた。
◇
翌日、朝食の後、リンメイは悠介から
「ナルーシャがジルの魔力検査をしてみたいと言っていたからギルド協会に連れて行ってくれないか? 俺は別件で出て来るから」
と言われた。
「はい」
別件とは薬草についてルセールを訪ねることだったが、リンメイの知らないことだった。
リンメイはジルをギルド協会に連れて行き
「私もここで魔力検査を受けたのよ」
となつかしいように言った。
「ワリキュールの冒険者協会のようなもの?」
「ええ。エランデルのほうが周りに魔物が出やすいから、以前から魔力検査をしてハンターのレベルを確認していたみたい。ワリキュールの冒険者協会の魔力検査は最近始まったみたい」
受付の窓口でナルーシャが居ることを確認して2階に上がった。
ナルーシャはキャンペーン中は早出出勤をしてオーグが出るルーア村に行くこともあるが、昼間はほとんどは協会内で過ごしている。
「待ってたわ。早速測らせてくれる?」
ナルーシャがジルを定盤石に案内した。
「ワリキュールの冒険者協会にあるものと同じ?」
ジルがナルーシャに聞いていた。
「そうよ。あれはここにあったものを運んだの。こっちのほうが新しいの」
ジルが定盤石に手をかざすと火花のような光が飛び始めた。
「やっぱりレベルは高いわね。300だわ」
ナルーシャがそう判断すると
「ソリアにも300と言われた」
とジルが思い出したように言った。それを聞いて
「ソリアも測定が出来るようになったということね」
と、ナルーシャは嬉しそうに言った。
ジルがレベル300?・・リンメイは信じられなかった。ジルも異世界から来た者だとは聞いていた。
リンメイは
「ナルーシャ、私ももう一度測定してくれる?」
と頼んだ。
「いいわよ。じゃあ、手をかざして」
リンメイが定盤石に手をかざすと火花のようなものが飛びはじめた。しかしその大きさはジルより小さく思った。が
「前より強くなったみたい。・・レベル100ね」
とナルーシャに言われた。
「ありがとう」
リンメイはレベルがあがったのを素直に喜んだ。
「100とか300って、相当レベルが高いのよ。今までここで測定をして100を超えた人は居ないから。ああ、ハーロックさんや悠介さんは別ね」
リンメイとジルがナルーシャと過ごしていると、悠介がやってきて
「ルセールは留守だった」
とナルーシャに言った。
ナルーシャが
「今回は温泉には入っていかないんですか?」
と悠介に聞いた。
「飛行船で明日、帰る予定だから。・・ナルーシャとも行きたいから、帰りをのばしちゃうかな?」
「私はキャンペーンが終わるまでは休めないから明日は無理です」
「じゃあ、温泉は今度来た時に・・」
そして翌日、リンメイたちは予定通り飛行船でワリキュールに戻ることにした。
リンスが空港まで馬車で送ってくれた。
「リンス、世話になった。ワリキュールにまた来たくなったら歓迎するぞ」
悠介がリンスに、そう別れの挨拶をしていた。
「はい」
「ナルーシャも来たいようだから、また一緒に来てもいい」
「はい、その時は一緒に行きます」
リンメイたちは帰りも飛行船でワリキュールに戻った。




