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2-3.真相

 翌朝になり、リンメイは熱も下がって命はとりとめた。だが起き上がろうとすると痛みが襲った。リンメイは、回復力は普通の人族よりあるが、治癒魔法は使えない。

 リサがインメイの様子を見に部屋に入って来て、すぐ戻っていった。

「リンメイが回復したようです」

と雅則に伝えていた。

 下位魔法も使えないほど傷ついていたリンメイは、体力も少しずつ回復をはじめ、聴力魔法イヤーマジックで部屋に外の音や話し声を聞き取った。


 しばらくして雅則の

「入るよ」

と声がしてリンメイの部屋に入ってきた。

「良くなったかな? よかった」

 雅則はリンメイの顔を見て安心した顔をした。

「私を助けてくれたんですか?」

「今度は出て行かないんだ」

「前もお礼を言わずに出て行ってしまったから」

 世話になるのは心苦しく逃げ出したい気持ちだったが、正直、リンメイはまだ動けない状態だった。雅則にすまなそうな顔をした。

「冒険者として役立っているんだろう? ライアンもリンメイには感謝していた」

 言われてリンメイはちょっと恥じらうような顔をして

「もうスラーレンにも戻れないし」

と言った。


 ライアンがエドワールの初代統治者・ガルファードに代わって新しい統治者になった人物であることは、リンメイも知っている。

 そしてエドワールの統治者がライアンに替わったのに雅則ハーロックが関わっているだろうことは推測出来るが、リンメイはそれはスルーしようと思った。

 リンメイがスラーレンに戻れないと聞いた雅則から

「俺はリンメイがシルビアの下で動いていたことぐらいしか知らないけど・・身の上について聞かせてくれる?」

と聞かれてリンメイはとまどった。

「話したくないなら無理には聞かない。ここで身体を癒していいから」

 そう言って雅則は部屋を出て行こうとした。

 リンメイは思わず

「悩んだんです」

と言った。

「私はスラーレンの魔術師として生まれたんですけど、父はシャドーコープスの一員でした」

 リンメイは雅則になぜか聞いてほしくなった。他に誰も聞いてくれる者が居ないのも事実だった。

 雅則はリンメイのベッドの側に椅子を持ってきて座ると、リンメイの話を聞いてくれた。


「でも王が亡くなったあと、プロティナが女王に就くとき、貴族間で内乱というか揉め事が起きて、それを鎮めたのが大神官のアスターでした」

「アスターがスラーレンを法国にするのに国王の陰になって働いていたことは聞いた。そしてスラーレンには御三家があって、プロティナが玉座に座るのを貴族たちが賛成しかねて、アスターがプロティナを女王にするために働いていたことも」

「はい。スラーレン法国は、スラーレン一族がやってきて開拓した国らしいです。そしてスラーレン王族には長兄のエクレール家、次兄のアレイン家、末弟のドルイン家があって、スラーレンの御三家と言われています。そして王位継承はエクレール家、アレイン家、ドルイン家の順に決められていました。

 ところが国王が亡くなった後、大神官のアスターがエクレール家の長女のプロティナを女王として玉座に座らせたらしいです。

 その過程で、父は命を落としたんです。シャドーコープスは、もともとスラーレンの国王が自分の身辺警護と国の動向を監視するために作った組織だったんです。しかしアスターがプロティナを女王にするために動いていた頃、シャドーコープス内でも意見が分かれ、反対側に就いた父は命を落としました。

 女王になったプロティナは争いごとは嫌いで、シャドーコープスもプロティナの下では働き甲斐がなくなっていったんです。そして私はシルビア様から声をかけられてシルビア様の下で働きはじめました」

「そういう流れか」

「プロティナがスラーレンの女王になったことで、シルビア様はスラーレンで静かに暮らすことを嫌って、ワリキュールの国王のリステルに嫁ぎ、ワリキュールで身を立てることを考えました。でもその夢はハーロック・・様に倒されて終わりました」

 リンメイは助けてもらったこともあり、雅則のハーロックに『様』を付けて言った。

「シルビアはリステルが死んだ後、ワリキュールで女王になろうとした欲の深い女だった」

「私は、その後、シルビアの弟であるマクレスに付きましたが、マクレスもワリキュールを狙ったのでハーロック様に倒されました。

 私はマーガレットについたシャドーコープスにプロティナを玉座から下ろす策に加担するように言われ、王宮の帳簿のすり替えを試みましたが、それをプロティナに見つかり諭されました。そしてプロティナが私を拾ってくれたんです。ところが、プロティナはマルケドーラ帝国の進攻を止められず、ハーロック様に玉座を降ろされました。それを恨んだプロティナは・・私がコーネリアのことを口にしてしまったのが原因で、ハーロック様の側に居るコーネリアを捕らえるように私に命じたのです。・・私はそんな王家というか貴族たちに嫌気がさして、コーネリアを助けようと思いました」

 リンメイは心に秘めていた思いを吐き出すように雅則に話した。


 すると聞いてくれた雅則から

「今までの事情はわかった。・・なら、ここで一緒に暮らさないか?」

と言われた。

「え?」

 リンメイは雅則に言われて唖然となった。

「いろんな種族が居て楽しいよ」

 雅則が笑顔で言ってくれる。


 リンメイは突然言われて言葉がなかった。確かにこの館にはいろんな種族が同居しているようだった。冒険者協会のソリア、魔族のリサやイビル、それにセキュバスのコーネリア。そんな者たちと一緒に暮らす雅則たちをリンメイは不思議に思っている。

「お腹空いたろう。ここに持ってくるから」

 そう言って部屋を出て行った雅則が、トレイに牛乳や食べ物を載せて持ってきてベッドの脇に置いた。そしてリンメイを一人にしてくれた。

 リンメイは雅則の暖かさを実感した。


 ◇


 リンメイは朝食を食べた後、ベッドの上で今までの自分を振り返った。

 スラーレン法国でシャドーコープスのブライアンの娘に生まれて、王家に翻弄されてきた。

 そして雅則たちと出会った。

 スラーレンと、これまでの自分のことは雅則に聞いてもらった。これからどうしよう。


 リンメイは階下が騒がしいのに気づいた。誰かが来たようだ。

「ヒュンケル」

 そう聞こえた。オルコックが言っていた魔王ヒュンケルのことなのか。

 リンメイはオルコックの話を思い出していた。進攻してきたマルケドーラ帝国からスラーレン法国を救ったのは、魔王ヒュンケルと魔王ハーロックだと言っていた。

 館にヒュンケルがやってきたということは、それは雅則たちなのかも知れないと思った。


「ここがハーロックの住んでいる館か」

「そうだ。宮殿から比べたら小さい」

「いや、宮殿は広すぎる。このくらいのほうがいい」

「おもてなしは出来ないぞ」

 ヒュンケルは雅則たちと会話して帰ったようだった。


 そして翌日。

 またヒュンケルがやってきたようだった。

「SLに乗せてもらえるか」

「いいけど。その前に頼みがある。マルケドーラ跡地に転移出来るか?」

「それは容易だが、跡地の何処に転移するかわからないぞ」

「行くだけ行ってみるか。女神が金塊を取りに戻ったらしい」

「こっちに戻るのは簡単だから転移させてもいい」

 そんな話が聞こえた。ヒュンケルは館に転移してきたのか。

 そして雅則たちは何処かに転移していったようだった。

 雅則たちがどんな騒動に関わっているのかは、リンメイは知る由もなかった。


 ◇


 数時間後、コーネリアがお昼の食事を持ってリンメイの部屋に入ってきた。

「お昼、食べられますか?」

「ありがとう」

 コーネリアはベッドの脇のテーブルにトレイごと置くと戻ろうとした。

「コーネリア」

 リンメイはコーネリアを呼び止めた。

「どうして私を助けてくれたの? あなたを狙ったのに」

 リンメイは聞いてみた。すると

「悪い人には思えなかったから」

とコーネリアはこたえた。

「私はスラーレンの魔術師。コーネリアはスラーレンの魔術師が襲ったセキュバスの生き残りと聞いているわ。私を恨んでいない?」

 コーネリアは首を横に振った。

「魔術師は恨んでいるけど・・リンメイはちがう」

 コーネリアにはっきり言われて

「・・そう。今までごめんね」

とリンメイは謝った。

 するとコーネリアは、また首を横に振った。

「リンメイは私を助けてくれた。それは忘れない。・・ハーロック様は私がリンメイを助けるか、私に決めさせた。ちょっと悩んだけど、ハーロック様もリンメイを悪い人とは思っていないのはわかっていたから・・」

「・・ありがとう。これからもよろしくね」

 コーネリアが戻ると、リンメイは、持ってきてくれた料理を口にした。





















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