第68話 世界を腐らせているのは……
アシュラが気絶した素っ裸の商人を引き摺り、再び建物へと戻った。
それを見た2人はまだ何が起きたのか、判断し兼ねていた。
「……アシュラ、手招きしてた……わよね?」
「してたのですぅ。でも……あまり気が進まないのですぅ」
アレが床に放置されてるかも知れない、と考えた2人の足取りは重い。
だが、アシュラが意味もなくそんな事するとは考えられないと思った2人は、覚悟を持って建物へとそそくさと突入していった。
*****
「「し、失礼しまぁ~~~す……」」
「遅かったじゃないか2人とも。外で何かあった?」
建物内の床をひとり調べていたアシュラ。
その様子は極めて普通である。
普通過ぎるほどに普通。
素っ裸に剥かれた商人の姿もそこにはない。
だからこそフォルテュナもククルも、何か違和感を感じ取っていた。
「ねぇアシュラ、さっきのアレ……何かあった?」
『さっきのアレ』とは、素っ裸に向かれた男性を指している。
遠まわしなのは、それを直接言葉にするのが嫌だったからに他ならない。
「さっきの……ってあぁ、あの奴隷商人なら、奴隷の気持ちを理解して貰おうと思ってひん剥いた。今は奥の寝室に簀巻きにして、逃げられないようにしっかり拘束してある」
アシュラが苛立ちを言い含めるようにクズと断言する。
温厚な彼がそこまで苛立つほどの事態が起きているのだ。
「アシュラさん、情報共有は重要なので、ちゃんと説明して欲しいのです」
ククルが真剣な表情でアシュラに説明を催促する。
床を調べていた彼は手を止め、顔を歪めながら2人に経緯を話し始めた。
「さっきの男は、ここを拠点に奴隷売買をしていた奴隷商だった。最初は穏便に済ませようかと思ってたんだけどさ、俺が奴隷について批判したら、人が変わったように言ったんだよ。『女子供は奴隷にして何が悪い? 遊ぶ暇があるなら働いて稼がせるべき。家を守るくらいなら身体を売って稼がせるべき。弱き者がそれ以外にどう役立つのだ?』ってな」
2人は絶句する。
「俺はさ、国都みたいに魔王が蔓延って世界を悪い方に導いてるって思ってた。だから魔王を倒せば、きっとこの世界は良くなるんだって。でも、それだけじゃないんだよな」
「アシュラ……」
「アシュラさん……」
「改めて感じたよ。本当に世界を腐らせているのは、こいつらみたいな上っ面だけの強者だ。俺はそんな世界なんて……絶対に認めない!!」
ドガアアアァァァン!!!!!
アシュラは足元の床を、思い切り殴りつけた。
ミテュラから教えて貰った、闘気を宿した拳の一撃だ。
「アシュラさん!?」
「アシュラ!? 一体何を……っ!?」
突然怒りに任せて殴りつけたと思った2人が慌てふためく。
だがそれは思い違いだという事にすぐに気がついた。
アシュラが殴った床板の下から、階段が現れたのだ。
この建物には地下が存在する事を、彼は見抜いていたのである。
「俺の気配察知は、地図と同じように上から見下ろすように感じ取るんだ。この建物には奴隷商しかいない。人の気配は数えきれないくらいあるのに。って事は答えはひとつ」
「……地下にたくさんの女性や子供達がいるって事ね」
「アシュラさん、フォルさん、早く助けに行くのです!!」
「あぁ、急ごう!!」
3人は脇目も振らず、隠された地下へと潜入していった。
今話はかなり短くてすみません。
次話は20日中に更新します。
いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m




