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第67話  穏便な制圧


 イグナイト商会を知ると思われる商人を尾行しはじめたアシュラ達。


 慣れない行動に周囲から怪しまれない為に、アシュラが気配察知を発動。

 3人は飲食店のテラスに待機し、商人の動きが止まるのを待っていた。


 「彼の気配はどう? 何か変化ありそう?」


 フォルテュナが落ち着かない様子でアシュラに問い掛ける。

 彼女は目麗しい美女。その美貌に飲食店の前を通る人々の視線が釘付けである。


 「フォル、もう少し我慢して。まだ移動中だから。」


 アシュラは目を瞑って商人の気配の動向を注視している。

 ミテュラの『万眼』のように個人を限定する程の精度がない為、こうして意識を集中していないと見失う恐れがあった。だからアシュラは集中力を保たなければならなかった。


 「これだったら普通に尾行した方がよっぽどよかったわ……」


 フォルテュナは溜息混じりで独り言ちた。

 そんな彼女の事を気にする事なく周囲を観察していたククル。


 「どこもかしこも商人ばかり、観光目的の人が殆どいないのが気になるのですぅ」


 「言われてみればそうね。この飲食店も交渉してる商人が数人いる程度だし、今日は何かあるのかしら……」


 交易港であり、その賑やかさが売りの都市だが、行き交うのは商人ばかりだ。

 時刻的にはすでに陽が真上に差し掛かろうとしている。

 それなのに観光客が少ない事に、2人は違和感を覚えていた。


 「……2人とも、商人の動きが止まった。ここにいても精神衛生上あまりよろしくないだろうし、一旦近くまで移動しよう」


 「そうね。私も、これ以上好奇な視線を浴びるのは御免だわ」


 3人は手元の飲物を飲み干し、目的の商人の居る場所へと移動を開始した。



 *****



 「……どうやら、あの建物の中みたいだ」


 アシュラが目的の商人の位置を確かめ、居場所を指さした。


 「あのみすぼらしい平屋の家? あれって多分自宅よね」


 「フォルさん、それを言ったら、神族の家は全部みすぼらしいのですぅ」


 フォルテュナの言う家は、木造平屋の一見ただの小さな民家。

 だがアシュラはそう感じてはいないようだ。


 「なら尚更おかしい。他に人の気配がある。しかも多人数だ」


 2人は彼の言葉に驚く。それほどの人数が入れるような大きさではないのだ。


 (カーリーはどう思う?)


 『私の見立てでは、民家を装った奴隷の住処って処だな』


 (奴隷の住処!?)


 《兄弟、どうして俺には聞かねぇんだよ?》


 『逸るなよ? あくまで私の見立てだ』


 (……わかってる。ありがとうカーリー)


 《まさかの俺無視か!?》


 アシュラはカーリーの意見を聞いた途端、怒りに身の毛がよだった。

 ルーナやセレーネ、そして港での奴隷の悲惨な扱いを目の当たりにしているのだ。

 逸る気持ちを抑え、2人に作戦を告げた。


 「まず俺がいく。合図するまで2人はここで待機。もし外に出てくるヤツがいたら取り押さえて欲しい」


 「わかったわ」


 「はいなのですぅ。気をつけてくださいなのですぅ」


 2人は物陰に隠れ、万が一の為に待機する。

 そしてアシュラは建物へと入っていった。




 それから暫くした後。




 建物の扉が突然、開かれた。

 ……いや、勢いよく開いた、と言うのが妥当だろう。

 そして中から男が物凄い勢いで飛び出てきたのだ。


 「あっ! 誰か逃げ出して……きたああぁ!?」


 「さっきの商人で……すううぅ!?」


 2人の語尾は驚きながらの疑問形。だがそうなるのも仕方ない。

 その商人は気を失っていたのだから…………素っ裸で。


 「「…………」」


 2人は開いた口が塞がらず、その場から動けずにいた。


 続いてアシュラが姿を現した。

 彼は周囲を気にしながら2人へと手招きすると、そのまま気絶した男の足を掴み、引き摺りながら再び建物内部へと入っていった。



 「「一体何があったの(ですぅ)!?」」



 2人は足早にその建物へと入っていくのであった。


 

予告通りですが、短くてすみませんm(__)m

次回は早めに火曜深夜に更新する予定にしています。


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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