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第65話  役割分担


 風呂場での騒ぎを経て翌日の朝。

 宿の一角にある食堂には、レオナルドとアシュラ一行が集まっている。

 ルーナとセレーネも、すでに正体がばれているので元の姿だ。


 朝食は白身魚に山菜と卵焼を添えたモーニングプレート、そして温かいクリームスープがテーブルに用意されており、アシュラ達は各自用意された椅子に座って待っている。

 ちなみに朝食はアウローナが早朝から支度していたようだが、昨夜の風呂場騒ぎの影響か、厨房から姿を現さないでいた。


 そして各自に取り皿を配り終えたレオナルドは、小声でアシュラに話しかけた。


 「アシュラ、昨夜は投げ飛ばしてしまってすまなかったな。風呂場での鉢合わせはアウローナの落ち度だった。本来なら俺等は客が利用し終えたのを確認すべきなんだが……」


 「き、気にしないでください! 俺もその……場所を弁えずにすみません」


 「お前は気にするな。それに若いうちはあれくらい当然だ。ぬははは!」


 「あははは……」


 アシュラにしてみれば恥ずかしい事極まりない。

 フォルテュナとククルも、顔を真赤にして俯いていた。


 「おねーちゃん達、どうしたの? お顔真赤だよー?」


 セレーネが純粋な目で3人の顔を覗き込む。どうやら心配しているようだ。

 だが3人は純粋無垢な幼女に大人な話などできるわけがない。

 そこでレオナルドが助け舟を出してくれた。


 「嬢ちゃんも大人になったら、きっとアシュラが教えてくれるさ。身体でな!」


 「うん! じゃあ今度ルーナお姉ちゃんと一緒に身体で教えてもらうね!」


 「レオさん!? それ収拾つかなくなりますってば!!」


 《これは夢の酒池肉林だな! アシュラの将来は安泰だな……ぐへへへ》


 (かつての騎士団長も見る影もないな……)




 ……レオナルドの船は泥船だった。



 *****



 「「「「「ご馳走様でした!」」」」」


 「おぅ、おそまつさん。作ったのはアウローナだけどな。がははは!」


 全員が朝食を無事に終えた。

 アウローナは、余程恥ずかしかったのか、最後まで厨房から顔を出さなかった。

 それを気にしているアシュラ達に、レオナルドは気づいていたようだ。


 「まぁアウローナの事は気にするな。ほとぼりが冷めれば元に戻るさ」


 「それならいいんですけど……」


 レオナルドが全員に食後の果実水を配りながら、気遣いを見せてくれる。

 スキンヘッドの厳ついオッサンだが、さすが子持ちは洞察力が違うみたいだ。


 「それで、今日はどうするんだ? ククルの嬢ちゃんから事情は聞いてるが、まさか早速動くつもりじゃないんだろ?」


 「一度部屋に戻って、どうするか皆で話し合って決めるつもりです」


 「そうだな、それがいい。焦らずによく話し合って決めるんだな」


 「はい、そうします」


 突然、レオナルドがソワソワし始めた。

 同時に、何か言いたげな視線をアシュラに突き刺してきた。

 スキンヘッドの巨漢がソワソワすると、さすがに少々気持ち悪かった。

 

 「あの……何か?」


 「ん、あぁ……昨夜、ククルの嬢ちゃんからおおよその話は聞かせて貰ったけどよ、俺は俺達の事情を何も話してねぇんだ。だからよ、俺としてもちゃんと筋を通して……」


 「レオさん、娘さんの事もありますから、無理に話しなくてもいいと思います。今回の件は、俺達の都合で動くのだから、気にしなくても大丈夫ですから」


 レオナルドは事情を話そうと思っていた。

 彼は実直な性格なだけに、ククルが(一方的に虚偽を織り交ぜつつ)事情を話した事に対して、自分達の話をしないままなのが気持ち悪かったのだろう。


 そして何よりも、互いの情報を交換する事は現状では何より大切である。


 だがしかし、アシュラはアウローナの気持ちに対して気が引けたのか、レオナルドの話をきっぱりと断ってしまった。

 フォルテュナ、ククル、カーリーもまた、この父娘を騒動に巻き込みたくないという思いから、アシュラの意見に同調してしまったのである。 


 アシュラ達が何一つ事情を聞かなかった事によって、遠くない未来で一行が後悔する事態に陥ろうとは、誰も知る由もなかった。



 *****



 「さて、それじゃ今日の行動を決めようと思う。フォル、頼む」


 「わかったわ。『我の周囲、一切の音を打ち消せ―――“消音結界(サイレントバリア)”』」


 部屋へと戻った一行は、フォルテュナを囲うように座る。

 そしてアシュラの合図によって、フォルテュナが結界を張ったのである。


 術者を中心に半径3レールの空間を視認できない結界で囲い、内部の音という音を全て外部に認識させない。いわば機密漏洩防止のみに特化した無音防壁、それが“消音結界(サイレントバリア)”だ。


 そしてミテュラ直伝の固有能力外魔法でもある。


 「それじゃ俺からの提案だけど、今日は俺とフォルとククルの3人で動きたいと思う。ルーナとセレーネは留守番な」


 「「えぇー!!?」」


 狼姉妹は見事にハモった。

 だがアシュラは、どれだけ不満を漏らされても同行を許すつもりはなかった。


 「アシュラさん、理由をお聞きしてもいいですか?」


 質問してきたのは姉のルーナだ。セレーネは隣でぶーたれていた。


 「俺達が最優先すべきは2人の身の安全だ。この街は奴隷商の巣窟、そして2人は行方不明の奴隷なんだ。いくら狼化(メイクオーバー)してても、何がキッカケで人の姿に戻るかわからない。もしも身元がバレればとんでもない事になる。だからこの宿でお留守番してて欲しいんだ」


 「そう……ですよね、確かにこの街は危険です」


 「セレーネは一緒に行きたい! 行きたい行きたい行きたいのーー!!」


 ルーナは納得してくれたようだが、妹のセレーネは逆に騒ぎ始めた。

 フォルテュナの結界がなければ、レオナルド達が駆けつけてきそうだ。

 しかしここで頼もしいのは、姉妹にずっと寄り添っていたククルである。


 「セレーネ、お願いがあるのですぅ」


 「なに? なかまハズレはぜーったいイヤだもん!!」


 「お留守番といっても、ただのお留守番じゃないのですぅ。レオさんと一緒に、アウローナさんを守って欲しいのですぅ」


 「「おぢさんとローナちゃんを守る?」」


 さすがは姉妹、ここでもしっかりハモる。

 ククルはそんな2人の頭を優しく撫でながら話を続ける。


 「狼化(テイクオーバー)してもまだ小さい身体だけど、爪や牙は武器になるのですぅ。ローナちゃんに近寄る悪い人達が来たら、どうか守って欲しいのですぅ」


 2人は唸りながら悩んでいたが、どうやら納得してくれたようだ。


 「わかりました。ローナさんの事はお任せください」


 「セレーネが悪人おっぱらってあげる! まかせて!!」


 「ありがとうなのですぅ♪」


 これでひとつ問題が解決した。

 昨夜といい今といい、ククルの活躍には目を見張るものがあった。

 アシュラもまた、そんなククルを頼もしく感じていた。


 「それじゃ俺達も街に出て情報集めに……」


 「ちょっと待ってアシュラ」


 フォルテュナがアシュラの言葉を遮る。

 だがその表情は曇っていて、いつものフォルテュナらしくなかった。


 「どうした? そういえば今朝から顔色が優れないけど、調子悪いとか?」


 「言い出すタイミングがなくて……その……ごめんなさい!!」


 「いきなり謝罪されても何が何だか……」


 「あのね……昨日、イグナイト商会でアグニ・イグナイトと話した時に、今日の夕方ふたりだけで食事するって約束しちゃったの……」


 「…………はい?」


 「アグニ・イグナイトに夕食誘われちゃったのよ! ふたりだけでって!」


 「はあ《はああぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!!?》……」


 フォルテュナの、アグニとの約束に驚いたアシュラだったが、それ以上に驚いたのは、アグニを最も嫌うカーリーだった。


 《どういう事だ! あのクソ女と食事だと!? 一体何考えてやがる!!》


 (落ち着けカーリー! フォルが言ってただろ! 誘われちゃったって!)


 《だとしてもだ! そんなの罠に決まってるだろ! どうして了承したんだ!》


 カーリーはひとり激怒した。フォルテュナはフォルテュナで、アシュラと目を合わせようとしない。おそらくカーリーが憤っているのを理解しているのかも知れない。

 アシュラは、彼女の言葉を少しアレンジしてフォルテュナに届ける事にした。


 「ふたりだけで食事って、それって罠じゃないのか? そんな大事な事を何の相談もなしに、どうして了承したんだ?」


 「情報を聞き出したかったのよ。この街の事、奴隷の事、転移門の事、アグニ本人の事も……。食事の誘いも、勢いで決まっちゃったの。誰に相談できる状況でもなかったし、だけどこれはチャンスかもって思って……ごめんなさい」


 フォルテュナは深々と頭を下げる。

 アシュラ、ククル、そしてカーリーも、彼女の独断には納得いかないものの、その献身的な行動力に怒れるはずもなかった。彼女も一生懸命、役に立とうと頑張っているのだ。


 「フォルひとりで行かせるのは物凄く心配だけど……大丈夫なのか?」


 「大丈夫よ、これでも神……の恩恵で回避してみせるわ」


 神族と言いかけたが、狼姉妹がいる事を思い出して言い直した。

 だが確かに彼女は神族。補助魔法メインで攻撃的ではないが、それでもミテュラとの特訓に於いて、護身術程度の技術なら身に着けていた。


 「わかった。すぐ近くで見守れないけど、気配察知で見張らせてもらうよ」


 「皆、本当にごめんね……ありがとう」


 《そうなると私も一緒に待機だな。いざとなったら暴れるからな?》


 (俺の身体なんだからな、その時はほどほどに頼むよ)


 「あの、ククルはどうすればいいのですぅ?」


 「約束は夕方らしいから、ククルは宿に戻って姉妹と一緒に待っててくれ」


 「わかったのですぅ!」


 『ほぅ……寝てる間に面白い事になってんじゃねぇか。こりゃ見物だな』



 3人とカーリーに加え、最後に目を覚ましたクロが参加する。

 アシュラはクロの参加にさらなる不安を煽られるが、今はそれどころではない。

 フォルテュナの身の安全の為なら、それこそクロとカーリーの能力を駆使してでも街を破壊する覚悟である。




 昨日に続き、ただでは終わらない1日が始まろうとしていた。







間隔空けちゃってすみません(´・ω・`)


ここからは話の流れが慌ただしくなりますので、流れを切らない意味も含め、あまり更新間隔をあけずに次回投稿したいと思います。


あ、新作『異世界もみほぐし紀行』もどうぞ宜しくm(__)m


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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