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第61話  宿探し

 すっかり遅くなりましたm(__)m

 事情は後書きにて。



 イグナイト商会での話を終えたフォルテュナは、外で待機していたアシュラ達と無事に合流を果たした。

 しかしフォルテュナはアグニとの交渉によって、アシュラ達は目の前を行き交う奴隷達から羨望の眼差しを浴び続けた事によって、精神的に限界を迎えていた。


 今、彼等の願いはたったひとつ。


 『人目のつかない所で休みたい』


 アシュラ達はその場から逃げるように宿街へと向かった。



 *****



 「ここが……宿街?」


 「色鮮やか過ぎて目が痛いわ……」


 メリアス公共宿街と呼ばれる宿の街は、交易港から100レール程の距離にあった。

 そこは幅20レール程の真っ直ぐに伸びる一本道に、左右所狭しと高級宿が立ち並んでいる。その建造物の殆どが5階建ての高層宿。


 しかも外観的にも清潔感に溢れ、個性豊かな色彩と装飾に彩られているのだ。フォルテュナが不快気に目を細めるのも仕方なかった。


 本当ならば、平屋の建物が一般的な神教国の中で滅多に見ない高層建造技術に驚くべきところなのだが、あまりにも煌びやか過ぎて、その驚きを通り越してしまい、ただただ呆れるしかないアシュラとフォルテュナだった。


 「この際、宿さえ確保できればいいよな?」


 「問題は狼化したルーナ達とひとつの部屋で泊まれる所があるかどうかね」


 「そんな雰囲気が全然しないのですぅ……」


 この大都市で獣人の姉妹奴隷が2人居なくなったところで大きな問題ではない。

 しかし連れ去った行商人、そして3人の商人が殺害され、さらに犯人も奴隷も消息不明となれば、彼女達の姿を公の場に曝すわけにはいかない。


 こうしてアシュラ達は、動物同伴で宿泊可能な宿を探す事になったのだが……



 「当施設では、動物の入室は禁止させていただいております」


 「狼の子供ですか? 申し訳ありませんが、同室でのご宿泊は……」


 「ご利用されているお客様のご迷惑になりますので、どうぞお引き取り下さい」



 等々。どの宿も素気無(すげな)く断られてしまった。


 「全く、どこもかしこも融通が利かない宿ばっかりだ」


 「口調こそ丁寧だったけど、共通して見下すような目をしてたわね」


 「アシュラさん、フォルさん、これからどうするのですぅ?」


 「くうぅ~ん……(ごめんなさい、私達のせいで……)」


 ルーナが責任を感じてしまい、すっかりしょげてしまった。

 ククルの胸元で(こうべ)どころか耳まで垂れ下がっている。

 アシュラにはそんな小さな狼の声がしっかりと届いている。


 (こんな小さな子供に責任感じさるわけにはいかないよな)


 《私もアグニに拘ってる場合ではないな。今は彼女達の事を考えよう》


 カーリーの考えに同意したアシュラは、ククルの傍に寄り、彼女の胸元で項垂れたルーナとセレーネの頭を優しく撫でてあげた。


 「ルーナ、セレーネ、気にする事はない。だからしっかり前を向いてくれ」


 「わふぅ(アシュラさん……)」


 「まだ宿はいくらでもある。フォル、ククル、諦めずに探そう」


 「そうね、この程度で挫けてる場合じゃないわよね」


 「私も頑張るのですぅ!」


 こうして一行は手分けして、数ある宿に聞きまわる事にしたのだが、彼等の要望を聞き入れてくれる宿は無く、当然のように門前払いの連続だった。



 *****



 数多あった宿も(ことごと)く断られ、残り僅かとなってきた。

 宿街の大通りを進むにつれて、彩られた建物が減っていく。高層だった宿も2階建て、もしくは平屋が目立ち始めてきたのだ。港から離れた区域は人気がないのかも知れない。


 (この辺りならルーナ達と一緒でも泊めてくれる宿があるかもしれない)


 アシュラが僅かなりにも希望を持ち始めた時だった。



 ガシャーーーン!!



 それは数十レール先のこじんまりとした建物から鳴り響いた。

 そして黄金色のローブを身にまとった男性が、道端へと転がり出てきたのだ。


 「き、貴様ぁ、こんな事をしてただで済むと思ってるのか!」


 「うるっせぇなぁ。何度来ようが宿を譲渡するつもりはねぇつってんだろ」


 続いて粉々に砕け散った扉から、ガチムチの肉体を惜しみなく曝け出した厳つい大柄の男性が現れ、ローブの男の前に仁王立ちして口論を始めた。


 「我が商会が転居先を全額負担で用意したのだぞ! それの何が不満なのだ!」


 「全部だよ。権力と金で思い通りになると思ってるその性根も含めてな」


 「言わせておけば……我らイグナイト商会を敵に回した事を後悔させてやる!」


 「上等だ、その喧嘩買ってやるよ。イグナイト商会なんぞぶっ潰してやる」


 「ひっ……くそっ、覚えてろよ!!」


 大柄の男性から放出される殺気に、雑魚らしい捨て台詞を吐いたローブの男は、まるでトカゲのように四つん這いのまま逃げ出した。


 「……なんかこっちに向かってきた」


 「あの動き、生理的に受け付けないわ」


 アシュラとフォルテュナが呟く。

 ローブの男が逃げ出した方向に、ちょうど一行が佇んでいたのだ。

 カサカサと音を立ててくるその男の姿は、一行にとって黄金色の巨大な虫にしか見えず、思わず後退りしてしまう程の気持ち悪さであった。


 「くっ……見せもんじゃねぇ! どけクソガキ共が!!」


 言われる前にすでに道を開け、通り過ぎるのを待っていたアシュラ達。

 男は黄金色のローブを地に引き摺りながら、そのまま港方面へと消えて行った。


 「あの男、イグナイト商会って言ってたわね……面倒事の予感しかしないわ」


 「グルル……ガウガウッ!(アシュラ、あのトカゲの人おしっこ漏れてたよ!)」


 「セレーネ、目が腐るから見ちゃいけません」


 イグナイト商会の名に、フォルテュナは眉間に皺を寄せて不快感を示し、アシュラは失禁を目撃したセレーネを、まるで母親のように窘める。

 すると騒ぎの起きた所から、大柄な男性がアシュラ達に小走りに駆け寄ってきた。


 「ボウズ達、品の無いローブの野郎が噛みつかなかったか? 大丈夫か?」


 どうやらローブの男が当たり散らしていたのが見えたのだろう。アシュラ達を心配してくれていたようだ。


 「いえ、避けたから大丈夫です」


 「そうか、なら良かったが……変な所見られちまったな」


 「おじさんこそ、ご自宅の扉が壊れちゃってますけど……」


 「あぁ、ははは……まぁよくあるもんでな、扉の替えはあるんだ」


 男性は頭をガシガシ掻きながら、苦笑している。

 そもそも扉の替えがあるのが普通とは違う……とは思ったが、アシュラ達はあえてそれを口にはしない。余計なツッコミは面倒事に巻き込まれかねないから。


 だがアシュラは、それを承知の上で男性に質問する事にした。


 「あの……おじさんは宿を経営してるのですか?」


 宿探しを思い出したアシュラは、皆に野宿させたくなかった。だから多少の面倒事なら力づくで叩き潰せばいいだろうと考えていた。


 「ん? まぁ一応な」


 「もし大丈夫なら……ですけど、俺達3人と小さい狼2匹で5日程お部屋をお借りする事はできませんか?」


 アシュラはおそるおそると言った感じで控えめに尋ねてみた。

 この男性が出てきた建物から先には、宿らしい建造物はなかった。

 ここを逃せば、一目に付きにくい場所で野宿するしかないのである。


 「あぁ、ボロっちい民宿で良けりゃいいぜ?」


 「「「本当ですか!? ありがとうございます!」」」


 アシュラ達は飛び上がる程の歓喜した。

 それを見ていた男性はその喜ぶ様に苦笑する。

 

 「ははは……まさかそんなに喜ばれるとはな。何か訳アリか?」


 「あ、す……すみません。宿泊先が見つからず困っていたもので」


 「野暮な事は聞かねぇよ。それよりもついて来な。歓迎するぜ」


 「ありがとうございます!!」



 こうしてアシュラ達は、この大柄な男性の宿へと向かうのであった。







 ご無沙汰しておりましたm(__)m

 改稿データを誤ってロストしてしまい、モチベが落ちてました(´・ω・`)


 29日で仕事納め、少し落ち着けるので、年内に最低でも1回更新する予定です。


 いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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