第56話 赤髪の女
さーせん、今回は短いっす(´・ω・`)
アシュラが旅宿の部屋割り争いに巻き込まれていた頃――
海港都市メリアスに所在を置くイグナイト商会の会長室。
そこでは赤髪の女性と、部下と思われる男性が相対していた。
「あのさ、悪いんだけどもう一度説明してくれない?」
赤髪の女が、目の前に平伏す男に説明を求める。
「はい、それでは……金品及び獣人奴隷2名を盗難したトルトの荷馬車を、南部方面に向かう街道にて発見しました。しかし犯人のトルトは死亡、捜索に出ていたカッシオ、ザラーム、ニエンテも死亡。他にも盗賊と思われる5名の遺体を確認したとの事です。なお荷馬車外に散乱した金品は血塗れでしたが、ほぼ全てが回収されました。ただ、奴隷2名の消息は不明のままです」
男は平静を装いながら、赤髪の女に状況を再度説明した。
しかしその額にはびっしりと汗が滲んでいる。
「……ふぅん」
女は興味無さげに声を漏らす。
だがその目は苛立ちを隠さず、冷淡に男を見下ろしていた。
「どうして盗賊が5人も死んでたの?」
男は返答に困る。その現場を目撃したわけではないのだから。
「トルトやカッシオ達に盗賊を退けるだけの戦闘力は皆無です。おそらく、盗賊同士の諍いによるものではないかと……」
「……だとしたら、どうして金品は無事だったの?」
盗賊同士が金品に目が眩んで内輪揉めを起こしたのなら、ほぼ全てが回収される事など考えられない。
「憶測ですが、金品よりも奴隷を欲した可能性は……」
「金品を放置する理由としては薄すぎよ。反奴隷主義者の仕業……も考えにくいわね。他に不審点とか情報はあがってないの?」
「そういえば……盗賊の遺体の胸部に大きな穴が空いていた事と、ザラームとニエンテの遺体は足首から上は見つかっていないと……」
「まったく……そういう事は最初に言いなさい! 商人として僅かな情報も軽んじる事は命取りになると、私は常々言ってるわよね?」
「し、失礼しました!!」
声を荒げる赤髪の女性に、男は怯える様子で謝罪する。
「もういいわ。獣人……奴隷の捜索は引き続き行うように通達なさい」
「受け賜わりました。また新たな情報が入り次第、ご報告します」
男は腰を低く落としたまま、会長室を退室していった。
会長室に残った赤髪の女性は、ひとり天を仰いだ。
「どいつもこいつも役立たずのクズばかりね」
報告に来た男の事を指しているのか、カッシオ達の事を指しているのか、もしくはその両方なのかもしれない。だが赤髪の女性にとっては、それよりも重要視する事があった。
「どう考えても、第三者の介入とみるべきね。遺体の不審点からも冒険者か傭兵によるものと考えるのが妥当……とすると、敵意を持って向かってくる可能性も高いわね……あぁもう、獣人なんてこの世から消えてなくなればいいのに……ホント鬱陶しいわ!!」
椅子の肘掛に吊るしてあった鞭を手に取ると、部屋の片隅に置かれていた布袋を鋭く叩き撃つ。すると破けた布袋から、幾つもの獣耳や尻尾が宙に舞い広がる。
「……チッ」
まるで汚物を見るように一瞥し、再び鞭を振るった。
今度はその鞭に炎を纏わせ、さらに鋭さを増した一閃。
たった一振り。それによって宙を舞う獣耳も尻尾も、ひとつ残らず床に落ちる事なく灰塵と化した。
「また売り物を燃やしちゃったわ……まぁまた獣人から切り取ればいっか」
赤髪の女性は椅子から立ち上がり、部屋の窓を全て解放する。
「空気を入れ替えないとね。獣人の匂いが部屋に染みついたら堪らないわ」
外では交易船と、港を忙しく行き交う荷物と賑わう人々と、縄で縛られ船から降りてくる獣人奴隷達。
「カーリー、貴女の恥辱に塗れた姿をもう一度見たいわ」
赤髪の彼女……アグニ・イグナイトは、カーリーの辱めを受ける姿を思い出しながら、連行される奴隷達を眺め続けていた。
次回更新は11月11日 26時頃を予定しています。
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