表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/75

第52話  暴走、そして目覚めた能力

 「ぴっくちん!! うぃ~~」

 「アシュラ、可愛さとオッサンぽさを兼ね備えたくしゃみはやめて?」

 「フォル、無理言わないで……」


 フォルに放り出され水浸しになったアシュラは、そのまま返り血を洗い落とし、現在は下着だけで焚火に当たっている。


 「せめて河じゃなくてもククルの魔法の類でも良かったんじゃ……」

 「ククルにアナタの全裸姿、見せたかったの?」

 「そんな性癖はございません。すみません思慮が浅はかでした」

 「うん、素直で宜しい♪」


 最近アシュラを取り巻く環境の変化が著しく、しかもクロやカーリーが入り込んでしまった事もあり、こうした他愛無いやり取りができず不満を蓄積していたフォルテュナ。


 (やっぱりこうして2人きりって楽しいわね…………でも)


 フォルはチラリと少し離れた場所を見る。

 そこには風魔法でアシュラの衣服を乾かすククルと、それに戯れるルーナとセレーネが居た。


 「この風に少し火の魔法を掛け合わせて温度を与えるのですぅ。それ混合魔法『温風(ドライヤー)』! むふーん!」

 「わぁー、ククルさん凄いです!」

 「ククルすごーい! あったかーい!」


 ククルは年齢はフォルテュナに近いのだが、見た目はルーナ達に近いというギャップを兼ね備えている事もあり、すっかり姉妹に懐かれていた。


 「ククルってば……四元素よりもコミ能力の方が高い気がするわ」

 「フォル、どした? ルーナ達と遊びたい?」

 「え!? いやうん大丈夫よ」


 ちょっと動揺した所、図星を突かれたのかもしれない。


 「そう? まぁ、彼女達の事はククルに任せといてさ」

 「そうね、セレーネが飽きてくる前に済ませましょう」


 フォルテュナはアシュラのすぐ左横に座り、そっと肩に寄り掛かる。

 そしてアシュラの左手に自分の右手を絡めるように繋いだ。


 「……ちょっと恥ずかしいな」

 「こうして手を繋ぐのって嫌?」

 「そうじゃなくて……照れてるんだよ」

 「そっか、えへへへ」


 初々しい恋人のようなやり取りである。

 気のせいか、アシュラとフォルテュナのいる空間だけ無駄に暑い。

 そしてククルから鋭く突き刺さるような視線を感じていた。


 「ククルの視線が物凄く痛いわ」

 「気にしたら負けだよ、ほらいくぞ……『心意の扉(スピリチュアルゲート)』!」


 そう、ククルに彼女達を任せ、アシュラとフォルテュナが済ませようとした事、それはカーリーから直接事情を聞き出す事だ。


 こうして2人の意識は、アシュラの精神世界へと吸い込まれていった。




 ~~~~~




 「何度来ても、ここが自分の精神内なんて思えないな」

 『そうね……でもちょっと待って? 何か変だと思わない?』

 「あぁわかってる。前より白くない……薄く灰色が混じった感じだ」


 これまではまるで輝くような真っ白な世界だった。

 それが今は真っ白とは言えない。


 「これは……クロよりカーリーの影響かな」

 『私も同意するわ。背中の狼を模った紋様も関係してるかもね』


 “アグニ”という名を聞いてから、カーリーは別人のように変貌した。

 おそらくは身内だろうと想像は出来るが、それだけの関係ではない……アシュラはそんな気がしていた。


 「カーリー、俺だ! アシュラだ! 出てきてくれ!!」


 だがカーリーは反応しない。


 「カーリーさんお願い、アナタとお話がしたいの!!」


 フォルテュナも叫ぶものの、何も変化はない。

 アシュラは仕方なしに、彼女を無理矢理引き摺り出す事にした。


 「殺したいんだろう?『アグニ』ってヤツを!」

 《…………煩いな》


 カーリーとは思えない程ドスの利いた声が、耳の奥に響く。


 『……嘘? これが、カーリーさんの声?』

 「間違いない。でもいつものカーリーじゃない、気を付けて」

 『アシュラもね。最悪、カーリーの目を覚まさせなきゃ……』

 「最悪でなくても覚まさせないと、これから先共存なんて出来ないよ」


 まだ冒険は始まったばかりなのだ。アシュラはここで足止めをくらうつもりなど毛頭なかった。


 「カーリーとアグニの間に何があったか知らないけどな、こんな所でウジウジと引き籠って何か解決するのか!?」


 《……煩い》


 「カーリー・マー・ブラフマンは、アグニって野郎をこの世界に好き勝手のさばらせといていいのか!?」


 《……煩い煩い》

 「それでもいいなら勝手に俺の中で引き籠ってろ! その代わり、どんなに感情的になろうが、俺はお前の力なんてこれっぽっちも使わないからな!!」

 《…………煩い黙れ小僧が》

 「ここで俺が死ぬまで、外を眺めて自分の無力さを思い知ればいいさ!!」

 《煩い黙れと言ってるだろうがあぁ!!!》


 カーリーがアシュラの背後から現れ、体当たりをしてきた。


 「ぐああぁ!?」

 『アシュラ!? カーリーさん! アシュラに何て事をっ!?』


 フォルテュナがカーリーを睨みつける。しかしそこに居たのは黒髪で褐色肌の彼女の姿ではなく、全身黒毛の狼だった。


 《アシュラ、余計な詮索は無用だ。あいつはいずれ私が殺す》


 その巨躯と威圧感に一瞬怯むも、アシュラはフォルテュナを庇うように前に出て、カーリーを煽った。


 「私が殺す? お前がいる場所を理解してて言ってるのか?」

 《当然だろう。アグニを見つけさえすれば、私がアシュラを支配して直接殺す》

 「そんな事させるかっての。何暴走してんだよ、いい加減に頭を冷やせよ」

 《頭なら冷えているさ。どうあいつを嬲り殺すか考えてるだけだ》

 「それが冷えてないっつってんだよっ!!」


 今度はアシュラから攻撃を仕掛ける。だが双剣は持っていないので素手だ。


 《ふん、素手でお前に何ができる!? 無力さを思い知れえぇ!!》


 カーリーが迎撃する。今度は鋭利な爪がアシュラに襲い掛かる。


 『アシュラ危ないっ!!』


 だがそんな事などお構いなしにアシュラは正面からそれを受ける。

 2人の間からガチンッ! という固い物がぶつかり合う音がした。


 《……どうしてここに私の武器がある?》


 カーリーの女将の爪を受け止めたのは、他でもないカーリーの武器であったはずのパラシュだ。

 しかもアシュラの得意なのは双剣。パラシュのような細剣ではない。


 「さてね? どうしてあるのか、よく考えてみたら?」

 《必要ない。それにお前にその剣が使えるとでも――!?》


 しかしカーリーの予想を裏切り、アシュラはパラシュで爪を受け流すと、バランスを崩したカーリーの側面を連撃で切り刻んだ。


 《ぐわあぁぁ!? その技は私の……どうしてそれを使える!?》

 「どうしてって……案外、簡単な事じゃないか?」

 《簡単だと? そんな簡単に使えるハズが》

 「だって、カーリーは俺の一部だからな。それに、俺がどんだけあんたの背中を見てきたと思ってんだよ……なぁ、師匠?」

 《くっ……》

 「今の師匠、すっげぇダサいよ」

 《なんだと……? 言うに事欠いてダサいだとっ?》

 「あぁ、だから止める。汝、動く事能わず……『拘束(リストリクション)』!」


 カーリーは驚愕した。アシュラがこれまで一度も使った事などない魔法であり、彼の母であるミテュラから受けた事のある魔法なのだから。


 《どうしてこれを……これはミテュラの……!!》

 「そう、お察しの通り、これは母さんの魔法だよ」

 《それをどうして使えたのだと聞いているっ!!》

 「師匠……俺の固有能力の事、何となくわかったって言ってたよな」

 《……それがどうした》

 「これは俺の固有能力の影響って事。実はね、俺も気付いてたんだ」

 《なん……だと?》


 クロやカーリーを受け入れ、アシュラはより実践的な成長を遂げていた。


 「その話は、師匠が腹を割ってアグニの事を話してくれてからね」

 《ぐっ……動けな……い》

 「いい加減にしろよカーリー。俺達にもその気持ちを分けてくれよ」


 パアン!


 アシュラの平手が、狼と化したカーリーの頬を引っ叩いた。








 次回更新は11月3日か4日の26時で考えております。

 今週末は所用で出かける為に確定できませんのでご了承ください。


 いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ