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第51話  クロの見えない活躍

 ドクンッ


 アシュラの心臓の鼓動が跳ねる。


 「なんだ? この……沸々とした気持ち……?」


 感情が黒く染まるような、心が侵食されるような感覚に襲われるアシュラ。

 カーリーの殺意に沸いた感情に呼応するかのように、アシュラが怒りの感情に染まっていく。クロはその変化の異常性にすぐさま気付いた。


 『相棒、どうした? おぃカーリー! てめぇ相棒に何してやがる!?』

 《アグニ……あの畜生が……女子供を……》

 『ちぃ、聞いちゃいねぇ……おい相棒! しっかりしろや!!』


 全く聞く耳を持ち合わせていないカーリー。

 クロは感情を流し込む原因より、流し込まれる相棒に喝を入れるのだが……


 「クロは静かにしてろよ。あの連中、今すぐ(なぶ)り殺すから」

 『はぁ!? 殺すにしても尋問してからだろーが!! 待てやおぃコラ!!』


 クロの制止の声も虚しく、アシュラは気持ちに流されるまま行動に移した。


 「いくぞ……『超加速(アクセレイト)』!」


 時の流れが著しく遅くなる。

 やはり盗賊を倒した時ほど静止している感じではないが、相手は財貨に溺れた商人。能力を使うには勿体ない相手だが、怒りの感情はそんな事お構いなしだ。


 まず狙いを定めたのは外で財物を物色する2人の商人。

 アシュラが瞬く間に2人の背後へと辿り着くが、緩やかに流れる時間の中ではまだ気がついた様子すら見受けられない。


 問答無用……いや、問答する時間すら今のアシュラは持ち合わせていなかった。

 2人の商人の背中に両掌を叩きつけるようにして言い放つ言葉はただひとつ。


 「『超破壊(デストロイ)』!」



 *****



 パアァァン!!


 何かが弾けるような音がひとつ。

 だがそれは同時に起きた為に聞こえなかった2つの爆砕音。


 荷馬車の中、ひとり黙々とルーナ達の手掛かりを探していた商人は、自分が『アグニ様』に密告するだろうと思った仲間たちの報復攻撃だと思ったようだ。


 「貴様等ぁぁ! ふざけるのもいい加減にし……ろ?」


 憤慨した商人が荷馬車から顔を出して目にしたのは、薄汚れたローブを着た銀髪の青年がひとりと、爆散した商人達の血によって真赤に染め上がった宝の山、そして青年の足元に転がる、2人の商人のものだった足。


 「…………ひいぃぃ!?」


 腰から下がストンと落ちるように座り込む。商人は即座に理解したのだ。

 銀髪の青年によって、2人は殺されたのだと。そして次は自分が狙われると。


 だが商人は動けなかった。そして声も出なかった。

 出るのは全身の穴という穴から噴き出る汗と、股間から漏れ出る汚物。


 (こここんな恐怖……わわ私はしらない!!)


 だが銀髪の青年が歩いてくる姿に、死に物狂いで馬に乗ろうと藻掻(もが)く。

 すでにルーナ達の事など頭から消えていた。あるのは逃げ延びる為の行動。

 だがそれも青年の一言によって(つい)える事となった。


 「……逃がすかよ、『鎌鼬』!」


 荷馬車から何かが当たる音がした瞬間、荷馬車は粉々に粉砕され、弾かれるように飛ばされた商人は、地面に叩きつけられ、その衝撃によって気を失ったのであった。



 *****



 「あ……お、俺は……どうして」

 『ふん、ようやく我に戻ったってか?』


 気を失った商人はまだ息はあるものの、手足はまるで糸の切れた繰り人形のように、歪に形を変えている。それを見た事によってようやく『臆病』な部分が出てきたのだろう。

 最初の2人は粉々に吹き飛んだ為に、実感が湧かなかったのだ。


 「そうだ……俺は怒りに身を任せて……」

 『ま、能力的にゃ当面の課題ってやつだな』

 「そう……だね。ごめんクロ」

 『謝んなや気持ち悪ぃな。それよかこのオッサン、尋問しなきゃだろ』

 「うん、とりあえず徹底的に縛って、それから聞き出そうか」

 『それが終わったら、カーリーも尋問な』

 「尋問って……まぁ終わってから話合おっか、なぁ……カーリー?」

 《………………》


 カーリーは無言を貫く。

 聞いているのかいないのかわからないが、今はそれより優先すべきは商人の確保である。

 アシュラは荷馬車だった残骸から縄を見つけると、手足を完全に縛る。

 両手両足は複雑に折れている為、今更縛る必要があるか皆無なのだが。


 そして商人はその痛みに顔を歪ませながら、意識を取り戻す事となった。


 「うがあぁ痛い……痛い痛い痛いっ!!」

 「あぁもう静かにしてくれ」


 商人は苦痛を露わにし続け、アシュラはそれを窘めていた。


 「おぃガキ、話を聞きたいなら傷を治せ!」

 「治せなんてよく言えるな。自分の立場を理解できてない証拠だ」

 「ぎゃああぁぁぁぁ!!!!!」


 アシュラは縛った足をふみつける。折れてる足を踏めば当然の反応だ。


 「治して欲しけりゃ、俺の質問に全て偽りなく答えろや」

 「ぐうぅぅ……」


 ちなみに、アシュラは尋問できる性格ではない為、裏でクロが暗躍している。この物おじしないキャラ設定から質問まで、まさにクロ様様である。


 「答えないなら仕方ないよな。まず足から吹き飛ばそうか」


 アシュラは血濡れの宝の山を一瞥し、手を足に添えた。


 「『超破(デスト)

 「わ、わかった! わかったから命だけは助けてくれ!!」


 一緒にいた仲間の成れの果てを見れば、これが当然の反応であろう。


 「まずはてめぇの名前から教えろ」

 「……カッシオだ」

 「『アグニ様』ってのはどこのどいつだ?」

 「な……どうしてアグニ様の名前を?」

 「聞いてんのはこっちなんだが? さっさと答えろボケが」

 「……アグニ様は……メリアスに住む奴隷商だ」

 「海港都市に巣食う奴隷商の親玉ってところか」

 「……そうだ」


 これでルーナ達を探していたのも頷けた。


 「次だ。荷馬車にいた奴隷をどうして探してたんだ?」

 「……あの奴隷を荷馬車から連れ出したのは貴様かっ!!」

 「だから質問してるのはこっちなんだけど?」

 「ぎゃああああぁぁぁやややめてくれぇぇ!!」


 アシュラはガンガン足を蹴飛ばす。なかなかエグイクロ演出だ。


 「はぁ……はぁ……あの、奴隷は……アグニ様からの頂き物だ」

 「頂き物……だぁ?」

 「そうだ、アグニ様は獣人族の子供を主に取り扱う名商だ」

 「名商ねぇ……その頂き物を探しにきたと」

 「そ……そうだ! あのデブ商が盗み出すから……!!」


 盗賊に殺されていた行商人は確かにデブだった。


 「私は盗まれた獣人族を取り戻しにきただけだ!!」

 「へぇ、そっかぃ。そんじゃ獣人族は俺からアグニに返しとくよ」

 「なっ……それは私の仕事で……っ!」

 「仕事? 貰い物なんだよな? うーんおかしいなぁー」

 「ぐっ……」


 『相棒、アグニの居場所だけ聞き出して戻るべ』

 (そうだな)


 「アグニの居場所だけ教えろ。そうすりゃ解放してやる」

 「……メリアスに行けばわかる」

 「厳密にはメリアスの何処だっつってんの」


 ゴリッボキン 


 「ぐああぁぁやややめろぉぉ! メメ、メリアスの大貴族街だぁぁ!」


 容赦なく折れた足をさらに折り潰す。まさに拷問である。


 「ま、こんなもんか。あとは……ってあれ」


 商人は激痛のあまり再び気絶していた。


 「まぁ名前も一応聞き出しといたからいいか」

 『おぃカーリーさんよ、アンタにも話して貰うからな』

 《…………》


 カーリーはずっと無言を貫いていた。

 感情的になった気まずさなのか、頑なに喋りたくないのかわからない。

 だが、アシュラはカーリーを信じて、今は放っておく事にした。


 「さて、それじゃこのカッシオって人どうする?」

 『そうだな……とりあえず宝の山にでも埋めとくか』


 こうしてカッシオは鮮血に染まる宝の山に包まれ天に召される事となった。

 ……本当に天かどうかはわからないが。




 余談だが、フォルテュナ達の元へと無事に戻ったアシュラだったのだが……


 容赦ない『怒りの超破壊』によって全身返り血塗れだった事が発覚。

 直後、アシュラはフォルテュナによって川に投げ飛ばされ朝の冷水に沈んだ。


 次回更新は11月1日 26時頃を予定しています。


 いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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