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第41話  銀色の勇者の、本当の旅立ち(★)

2020.4.5 一部修正しました。


 アシュラのマザコン騒動から7日が経過―――


 魔物との戦闘における3人の連携は、ミテュラの指導によって練度の高いものに仕上がった。あとは対人戦闘の経験不足だが、それも彼女と模擬戦を行う事で、多くの駆け引きを学んだ。


 またカリクロの補助も大きい。

 その声はアシュラとミテュラにしか聞こえないが、アシュラを通じてフォルテュナとククルに指示も出来る。実質的には5人の結束力こそがアシュラ達の強みである。


 「まぁ、及第点ってところかしら。後は実戦経験あるのみね」


 訓練を終え、息を切らして倒れ込んだアシュラ達をすまし顔で眺めるミテュラ。


 《こうしてアシュラ目線で鬼神の攻撃を正面から見ると、ホントえげつないわ》


 【えげつないって何がよ?】


 《その身体能力に反応速度と瞬時の判断力。それだけの力を持ってて誰かに負けるなんて姿が想像出来ないんだけど?》


 【この世界を生き抜くのは、そう簡単な事ではないわよ……】


 ミテュラは、過去の戦いを思い出しているのであろう。

 カーリーには、そんな彼女の後ろ姿が拗ねた子供のように見えた気がした。




 *****




 「私は明日の朝、この村を発つ事にしたわ」


 この日の夜、夕食を囲う中でミテュラからの突然の発言である。


 「そっか……何となく、そろそろかなって気がしてた」


 「ふふっ、母の気持ちを理解してくれて嬉しいわ」


 アシュラに限らずとも、誰もが理解している為に驚く者はいない。


 「アシュラ、フォル、ククル。あなた達は神族だから能力的な縛りがあるけれど、それでもこの世界では相当に強い部類に入るわ。だけど強ければ誰でも助けられるなんて思わないでね。大切なのは心の在り方。どういう事はわかるわよね?」


 アシュラには心当たりがある。だからこそすぐに答える事ができた。


 「俺達はこの国では罪人扱い。俺に限って言えば忌み子の大罪人だから、誰かを助けたとしても、感謝ではなく非難され追われる可能性が高い……」


 「そう。私達が人々の為にしたのは、国王を殺害したという事。事情を知らない人にしてみれば、その体裁で整えてしまう。国王に対していい感情を持っていない人達も多くいるけど、その人達に気を許すのは得策じゃない。極論ではあるけれど、世界の全てが敵だと思いなさい。それくらいの覚悟がなければ、この先勝ち残る事は難しいと知りなさい」


 《敵はこの世界全てか……それも面白い》


 『誰が敵だろうと知ったこっちゃねぇな。叩きのめすだけだろが』


 【ブレないあなた達だからこそ、アシュラ達を頼むわよ】


 カリクロは逆境を楽しんでいる節があるが、ミテュラが安心して別行動を取れるのも、この2人がいるからといって過言ではない。


 「ククル、貴女はパーティで最も影響力を持つ力を持ってる。そしてアシュラを前線で生かすも殺すも、あなたの多彩な魔法と判断力に掛かるわ。しっかりアシュラとフォルを護ってね」


 「はいですぅ……頑張るですぅ」


 「フォル、貴女はパーティの中核、回復と支援をこなしながら、戦況を冷静に判断して指示を出す、いわば司令塔よ。パーティ全員の命を第一にね。戦略的撤退も手段のひとつなのだから。それを忘れないでね」


 「はぃ……ミテュラさんの期待に応えられるように頑張ります」


 「アシュラは……さっさと2人を嫁にして、早く孫の顔見せなさいね」


 「……助言じゃなくて冗談!?」


 「あっははは、ごめんね。案外本気よ」


 「冗談でもなかった!! ってそんだけ!?」


 アシュラはやっぱりこうなるのか、と内心ガッカリしてしまった。


 「ふふ、冗談よ。アシュラにはフォルとククル、カリクロが傍にいる。あなたの性格からして、この先悩み事が絶えない気がするけど、ひとりで全部背負いこまないで、皆で答えを導き出しなさい。そして嫁候補の2人を必ず護る事。これは絶対厳守よ」


 「わかってるよ。2人は絶対に護り抜く。指一本触れさせないさ」


 フォルテュナもククルも顔を赤らめながら体をクネつかせる。少し気持ち悪い。


 《あ、あの。私も嫁候補だゾ、ミテュラ義母様♪》


 【アナタには肉体がないでしょ。それと義母様は却下よ。キモイわ】


 《くっ……絶対に肉体に戻る方法を探してやる!!》


 【探せるものなら探してみなさい、その時は私が認めてあげるわ】


 《ホントだなっ!! 言質取ったからなっ!! クロも覚えとけよ!!》


 『だから俺を巻き込むんじゃねぇよ……』


 やはりカリクロが関わるとロクな事にならないと思うアシュラだった。


 こうして6人は村での最後の夜を賑やかに過ごした。




 *****




 「じゃあね、皆。またいつか会いましょう」


 旅支度を済ませたミテュラが村の出入口で皆に挨拶する。


 「さっさと出て行けるように言いたい事を夜に済ますのは母さんらしい」


 「それはそうでしょ? そこの2人みたいにしっとりしたくないのよ」


 そこの2人とはフォルテュナとククルだ。

 すでに号泣して言葉にすらならない言葉を発している。


 「ひっく……びぶら(ミテュラ)ざぁん……えぐぅひどいでぶぅ(ですぅ)


 「ほんどに……だぐづぼりながった(泣くつもりなかった)のにぃ……」


 「もう、仕方ないわね……」


 ミテュラはそっと2人を抱き寄せ耳打ちした。


 「こんな間際で悪いけど、2人にはある秘策を伝授するわ……ボソボソ」


 「「…………っ!!?」」


 「……ね? わかった?」


 「……っはぃ!! 頑張りますっ!!」


 「ククルは絶対に負けませんっ!!」


 2人は何故か闘志を燃やしてアシュラを見つめる。


 「母さん……何言ったの?」


 「くふふっ、乙女同士の話を詮索するなんて野暮ってもんよ」


 《私も乙女なんだけどな》


 【ダメよ、カーリーに喋ると筒抜けだから】


 だが2人が元気になった。

 アシュラに関する何かが引き換えになったようだが。


 「今度こそじゃあね。また全員揃って会うのを楽しみにしてるわ」


 「あぁ、母さんも元気で、身体に気をつけてね」


 「お怪我に気をつけてくださいね!」


 「ククルも楽しみにしてますぅ!」


 『じゃあなクソババ様♪』


 《達者でな、お義母様♪》


 ミテュラは満足気に表情を緩め、皆に背を向けると、瞬く間に姿を消した。


 「去り際までそんな高速移動しなくてもいいのに……」


 「ミテュラさん、きっと恥ずかしかったのよ」


 「そうですね、ミテュラさんらしい旅立ちですぅ」


 フォルテュナがアシュラの右腕を、ククルが左腕を抱き抱えるように寄り添う。

 

 「フォ、フォルテュナ? ククルまでどうしたの?」


 「「べ…べっつにぃー(なのですぅ)」」


 《……絶対にさっきの内緒話が関わってるんだろうな》



 かくして、ミテュラはひとり旅立っていった。

 行先はわからない。再会するのは、相当先の話になるだろう。


 ミテュラの冒険は、アシュラ達にとって良い方向に働く結果を生みだすのだが、それはまた別の話である。



 「さぁ、俺達も準備を済ませて行こう!!」


 「はいっ!!」


 「頑張るのですぅ!!」




 新たな決意をもって、3人は新たな一歩を踏み出す―――








章分けはしていませんが、ここで一区切り。一部完となります。

話数が多いわりに話の進みが悪いですが、話をあやふやにせずに拘った結果でもあります。

文章もまた読みにくかったり、理解しにくい部分も多々ありますが、これからも温かく見守っていただければ幸いです。


ここまでお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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