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第39話  ミテュラの決断(★)

2020.4.5 一部修正しました。


 アシュラ一行に国王殺害の容疑がかかった『お祀り』の日の夜。


 「四元素・永結の棺! カキーーン!!」


 ククルの魔法によってカーリーの肉体を凍結保存し、ミテュラの収納石(ストレージストーン)に保管する事にした。

 現状、カーリーの魂が肉体に戻る事はないが、可能性はゼロとも言い切れない。それに、本人を目の前にして肉体を焼却……いや火葬するのもさすがに誰もが気が引けたのだ。


 《まさか、自分の氷漬けを見る事になるとは思わなかった》


 『燃やす、腐らせる、犯す、なんてのが見てみたかったな』


 《クロ貴様、私の身体を何だと思ってるんだ? 最期の犯すは特に……》


 『そりゃ魂の抜けた肉の塊だろ? 実験するには最高の材料だ』


 アシュラの中でカーリーとクロがさも当たり前のように口論している。

 するとミテュラがアシュラ達に話掛けてきた。


 「カーリー、クロ。少しは静かにしなさい」


 『《!? さーせん!!》』


 「アシュラ、貴方にはこの収納石(ストレージストーン)を譲るわ」


 「え、でもそれって母さんのじゃないか」


 「カーリーの魂を宿した貴方が持ってなさい。この石はアイオライトっていう魔石でね、人生を導く羅針盤と言われる貴重な石よ。カーリーが預けたオブシディアンは、浄化作用が発動すると壊れて収納された物も出せなくなるけど、この石は効果が発動しても壊れる事はないわ。絶対に無くさないようにね」


 「うん、ありがとう、母さん」


 こうして脱出する準備を整えた一行は、街が寝静まるのを待つ。

 すでに脱出の為に動い回っていたハンスが人数分の馬を用意してくれた。

 今は街外れでハンナと共に馬の見張り番をしている。


 ハンナは洗脳された際に得た剣術よって、一般都民とは思えない戦闘技術を体得していたので、その役を買って出てくれた。ちなみに、すでにハンナは元の桃色の髪に碧眼という姿に戻っている。その可愛らしい姿につい見惚れたアシュラに、全員が軽蔑の眼差しを向けたのは言うまでもない。


 「まずは神族の村に戻ってこれからの方針を決めましょう」


 ミテュラが皆に確認を取り、3人がそれに頷く。


 「さぁ、出発するわよ」




 *****




 そびえる防壁の門から少し離れた場所にククルが火の魔法でボヤ騒ぎを起こし、消火の為に守衛が門から離れた隙をみて一行は国都を抜け出した。


 「結局、ほとんど国都を観光できなかったわね……」


 「いつか嫌疑が晴れたら、また来よう」


 「そうね、今度はゆっくりアシュラと散策したいわ」


 「その時はククルも一緒がいいですぅ!」


 『って事は俺も一緒か……』


 《私は元々ホームタウンだからな、幾らでも案内できるぞ?》


 相変わらず仲の良い3人(と2人)を、ミテュラは少し寂しそうに微笑む。


 (これから先の事を考えると……潮時かしらね)


 こうして4人が暗闇に紛れて移動し、合流地点である街外れの森林地帯へと到着した。


 「皆さーん、こっちです!」


 「無事に抜け出せたみたいで良かった」


 ハンス親子が馬の面倒を見ながら出迎えてくれた。


 「宰相さん、ハンナさん、この度はいろいろとお世話になりました」


 「「「お世話になりました(ですぅ)」」」


 4人が礼を述べると、親子2人と握手を交わしていく。


 「こちらこそ本当にありがとう。貴方達は私達の命の恩人です。困った事があったら、いつでも頼ってください。どうか良い旅を……」


 「私も父上と共に、皆様の嫌疑を晴らします。そして武術を磨いて、少しでも助力になれるよう努力しますね」


 「私達の嫌疑よりも、国を……国都を導いてあげてください」


 「承りました、ミテュラ殿。またいつかお会いしましょう」


 「カーリー様にも宜しくお伝えくださいね!!」

 

 ハンス達と別れを告げた一行は、馬に跨り迷いの大森林へと駆けだした。


 《ハンナの言葉は伝わってるが、どうして“様”なんだ?》


 『アレだよアレ。百合ってヤツだよ。やっべ今後が楽しみだ』


 《私はアシュラから出られないんだが? 出られてもお断りだが?》


 【本当に最後はしまらないわねあなた達は……】


 違う意味でブレない彼らに溜息が漏れるミテュラであった。



 *****



 移動中、魔物や盗賊に襲われた貴族や旅人がいた……なんて事もなく、一行は5日かけて迷いの大森林の入り口に、さらに半日かけて神族の村へと辿り着いた。


 結界を張り直していなかった為、村は訪れた動物によって荒らされていたが、幸いにも建物が損壊している様子はなかった。


 皆の宿場となっていた元シェイクス宅に向かい、ようやくといった感じで皆腰を落ち着けた。


 「はあぁ~~~。久々にベッドで寝れるわ……」


 「ククルは慣れない馬のおかげでお尻が痛いのですぅ……」


 フォルテュナとククルが広間で大の字に寝転がった。


 「またここに戻ってくるとは思わなかったなぁ」


 《私もここを出た時は、もう戻る事はないと思っていたのだけどな》


 『心身バラけて、さらにアシュラ一筋とか想定外にも程があるわ』


 と感傷に浸るアシュラとカリクロ(ミテュラが名付けたコンビ名)。


 一気に気が緩んだ3人に、ミテュラは真剣な眼差しを向けていた。


 「皆、お疲れ様。とりあえず鍛練を兼ねて、少しの間ここに滞在するわ」


 「「「はい」」」


 そしてミテュラは締め括りの言葉を述べる。


 「今回、アーレス達の丸投げから始まった魔王粛正。結果として勝利したけれど、その中身は散々たるものだったわ」


 ミテュラの物言いに、3人は言葉を返せない。


 「魔王は倒したけれど、カーリーは肉体を失い、いらぬ嫌疑まで掛けられた。宰相さん達がどうするかわからないけど、忌み子っていう存在が払拭されるのは難しいと思うわ。私は、これらを踏まえて、今回はもろ手を挙げて勝利だと言うつもりはない。そしてアシュラ、フォルちゃん、ククルちゃん。あなた達はこれを教訓にして、今後は同じミスをしないように努力しなければならない。わかるわよね?」


 「「「……はい」」」


 「この先、アスモディウスなんて比べものにならない敵と戦う事になるわ。だからこれからは常に自分達で考えて、行動を起こして、自らを成長させなければいけない。その為に、これからは私は別行動を取らせてもらう事にしたわ」


 3人は俯いていた顔をあげて、呆けた様子でミテュラを見る。


 「「……え?」」


 「……それってまさか」


 言葉の意味を理解しながらも聞かずにはいられないアシュラ。

 だがさらに明確な答えがミテュラの口から紡がれた。



 「あなた達とは、ここでお別れよ」



 まるで恋人が別れるかのような言い草に、3人は言葉を失ってしまった。





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