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第36話  見え隠れする別勢力の影(★)


 カーリーが死んだ――


 少し離れた場所で戦闘を続けていたミテュラにも、その訃報は届いていた。

 その一部始終を報告したのはクロだ。


 『……以上が経緯だ。最後に発動した『心意の門(スピリチュアルゲート)』は知らねぇけどな』


 『そう……ありがとう。こっちもすぐ終わらせるわ』


 ミテュラはハンナの攻撃を延々と躱し続けていた。

 時折攻撃に転ずる事もあったが、どれも牽制程度。


 躱す事に集中する事で、ハンナの体力と精神力を疲弊させるという作戦に切り替えていたのだ。

 時折身体を掠めさせたり、疲れた素振りを見せたりと、そういった芝居は得意中の得意だった。


 ハンナが連撃に次ぐ連撃から大振りの突きを繰り出し、ミテュラは後ろに大きく飛び退く事で互いに大きく距離を取った。

 

 「……アナタは本気で私を倒す気があるのですか?」


 「最初はね。ただ臨機応変に作戦を変更しているだけよ」


 「初志貫徹という言葉を知らないのですか?」


 「どこの国の言葉かしら? そんな事より、愛しの国王様が死んでるわよ?」


 「それがどうかしましたか……っ!」


 ハンナはハッとした。

 ミテュラに攻撃を当てる事に夢中で、冷静さを失っていたよう。


 「()()()()()()()()()()()……ねぇ?」


 「…………」


 アスモディウスの死は、洗脳の解除を意味する。

 だが彼が死んだ直後も、その兆候すらもなかった。


 実の父親であるハンスの話が本当ならば、ハンナという女性は非戦闘員。

 戦闘経験がない人間が、洗脳で能力を開花させる事自体がおかしいのだ。


 「いい加減、正体を明かして貰ってもいいかしら?」


 「ふむ……いつから気がついていたのでしょう?」


 「最初から何かおかしいと思ってたわよ」


 「完璧にハンナさんを演じていたつもりなんですけどね」


 ハンナを騙る女性は口調こそ変わらないものの、纏う雰囲気が一変した。


 「だったら、そんなにも戦い慣れた行動は慎むべきだったんじゃない?」


 「そうでしたね……っぐふぅ!!」


 ミテュラは彼女の気が緩んだ隙を狙い、瞬時に距離を詰め腹に一発入れる。

 身体をくの時に折り曲げ、レイピアを取り上げると、その切っ先を偽ハンナの首元へと突き付けた。


 「くっ……殺気を持たずに攻撃するとは……さすが鬼神ですね」


 「伊達にこの世界で200年も生き延びちゃいないって事よ。それよりも私の質門に答えなさい。ハンナさんは何処にいるの?」


 「アストライア城の宰相室にいますよ」


 「……随分と素直に答えるのね」


 「アスモディウス(役立たず)が倒された今、別に隠す必要などありませんからね」


 「それはどいういう事かしら?」


 「私の本当の主人はアスモディウス(欲に塗れたクズ)ではないという事です」


 闘技場に侵入する際に倒してきた警備兵の成れの果て、そしてハンナに成りすましたこの女。ミテュラが予想していた通り、裏で別勢力が動いていたのだ。


 「なら貴女のご主人様は一体誰なのかしら?」


 「残念ですが、それは教えられませんね」


 「こっちはね、大切な仲間が1人死んでるの。今更関係ないなんて、そんな虫のいい話はないわよ?」


 偽ハンナの首に当てられたレイピアが首に触れる。薄皮が切れた所で、一筋の血が皮膚を伝わる……ハズだった。偽ハンナが僅かに魔力を出したと思った瞬間、信じられない事が起きたのだ。


 「えっ!?」


 「私を甘く見るからこうなるのです。これで形勢逆転ですね」


 ミテュラが気がついた時には、立ち位置が逆転していた。

 偽ハンナの首に添えていたレイピアが、ミテュラが首に添えられているのだ。

 ミテュラは見破れなかった事に動揺したが、それを精神力で抑えつける。


 「……これが貴女の能力って事かしら?」


 「それを無償で教えるなどとお思いますか?」


 「なら有償なら教えてくれるという事よね?」


 「なかなかあざといですね。これは一本取られました」


 すると、偽ハンナはミテュラを解放し、レイピアを鞘に仕舞った。

 ミテュラはすぐさま体勢を整えて身構える。


 「私はアスモディウス(クズ魔王)を監視していたに過ぎません。しかしそれが必要なくなりましたので、私は撤退させていただきます」


 「だからそんな虫のいい話はないと言ったはずよね?」


 ミテュラが偽ハンナに攻撃を加えようと拳を構えたところで、アリーナ入場門からわらわらと警備兵が地鳴りを響かせて襲い掛かってくるのが見えた。


 「おやおや、ずいぶんと死霊兵がたくさん来ましたねぇ」


 「わざとらしいわね。やっぱり貴女があの兵を……」


 「私は死霊兵を利用する権限を与えてもらっただけです」


 「ならあの死霊兵を作りだしたのは一体誰だ!!」


 「もう、しつこいですよ? それはこの先、貴方達が世界を渡り歩いていれば、知る事がでいるでしょう。それでは、私はこれにてお暇させていただきます」


 死霊兵が間近にまで迫ってきた。

 さすがのミテュラも数の暴力には手を焼いてしまう。

 それを見越しての死霊兵投入といった所なのだろう。


 「おっと、我が主人より伝言を(ことづか)っております。『貴女とお会いする事を楽しみにしております、()()()()()()()()()』」


 「その呼び名は……やはり裏で手を引いているのはティミスか!!」


 「再び貴女と相まみえる事、楽しみにしております」


 「人の話を聞きなさいよ! ってちょっと待ちなさい!!」


 偽ハンナはそう言い残すと、転移の魔法陣が彼女の足元から現れ、蜃気楼のように姿を揺らめかせながら、この場から消えていった。


 「……何なのよもうっ!!」


 ミテュラは、次々と襲い掛かる死霊兵にその怒りをぶつけるしかなかった。





2020.3.24 改稿完了しましたm(__)m


今話の改稿は細部の加筆修正のみです。

改稿前とさほど違和感はないと思います。


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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