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第32話  想いは、光と共に蘇る(★)

2020.3.12

改稿しましたm(__)m


詳細は後書きにて。



 キイィィン! ヒュン! ヒュン! ガキイィィン!


 「ほらほら本気で掛かってこい! 最初の威勢はどうしたぁ!」


 「くっ……おぉぉぉぉ!!」


 「汝、神速をその身に宿せ『速度強化(スピードブースト)』!」


 「四元素・火炎の刃! にょえぇーっ!!」


 アシュラの双剣とカーリーのパラシュが交錯する音が響く。

 時にアシュラとカーリーの声。

 時にフォルテュナとククルの魔法の詠唱と……奇声。


 カーリーだけがアシュラ達に攻撃を仕掛けている。

 カーリー自身も最初からそのつもりのようだったらしく、ハンナは魔王を護るように一歩も動かずにいる。いや、正確には動けずにいるといべきであろう。隙あらばとミテュラが殺気を以て牽制している。


 同時にミテュラはアシュラ達の戦闘に違和感を覚えていた。

 カーリーは戦闘狂という本質を持ちながらも、どこか3人を試しているような、あえてポテンシャルを引き出そうとしているように見えるのである。

 支援魔法によって強化されたアシュラの攻撃、そしてククルの魔法攻撃を躱しながら、アシュラに突きの連撃を浴びせる。だがその動きには本気が窺えなかった。


 そんなカーリーの攻撃を、アシュラは紙一重で躱す。ククルとの連携によって攻撃する機会も多々あるものの、アシュラの剣筋は僅かに鈍い。結果としてカーリーに一撃も当てられない。


 だがそれもそのはず。アシュラが本気で攻撃を当てる気がない。

 カーリーの攻撃を躱す度に語り掛ける。だたそれだけを延々と続けていた。


 「師匠! この剣技を教えてくれたのは貴女です! 思い出してください!」


 「さっきから何の話をしている? 貴様などに技を教えた覚えなどないっ!」


 「だったら思い出させるまでです! 汝、動ずる事能わず『拘束(レストリクション)』!」


 「くっ、その程度の魔力で縛られるかっ!!」


 「そのすばしっこい足を止めないと、匂い好きな事広めちゃうのですぅ! 四元素・水の鎖! にゃはーっ!」


 「なっ!? なぜそれを知っている!? ……ぐうぅ!!」


 アシュラの連撃を躱し、フォルテュナの拘束を力ずくで破るも、動きが鈍ったところでククルの水魔法が足に直撃する。3人の息の合った連携によって、初めてカーリーがその機動力を封じられた。


 「貴様達はさっきから一体何を……私を馬鹿にしているのか!?」


 『まさか殺す気もなく戦おうなんてな……呆れを通り越して尊敬するぜ』


 (お褒めに預かり光栄だよ)


 アシュラとクロが言い合いをしてる間に、カーリーはパルシュで容易く水の鎖を断ち切り反撃に転じようとしたが、注意が逸れた隙をついたアシュラが瞬時に距離を詰め、首元に右手の剣を突きつけながら再び語りかけた。


 「短い期間でも、俺は貴女の弟子にしてもらいました。クロに身体を支配された時、地下牢に監禁された時、魔王から逃がしてくれた時、俺は貴女に助けてもらいました。そしてこの装備も……全く、何一つ思い出せませんかっ!? 俺の匂い、思い出せませんかっ!?」


 アシュラは必死でカーリーに訴える。

 記憶を完全に消されたわけではない。

 洗脳とは、本当の記憶の上に偽りの知識を被せてしまうというのが本質だとミテュラから教わっていた。だからそれを剥がしてしまえば、本当の記憶が蘇るのだという事も。


 「くっ……!? だがこの匂い………どこかで……?」


 「貴女が好きだと言ってくれた匂いです! 思い出してください!!」


 記憶の琴線に触れようと必死なアシュラに、カーリーの眼が微かに揺れる。

 だが、それほど甘いものではないのもまた魔王の能力なのだ。


 「……この私を誑かそうなどとは、甘く見られたものだな!」


 「くっ……ぐふぅ!!」


 アシュラは一瞬の隙を突かれ、首元の双剣を弾かれたと同時に腹に蹴りを入れられ、距離を置かれてしまった。


 「くそっ、匂いでも駄目なのか……?」


 「アシュラ待って! 彼の者の傷を癒せ『癒しの光(ヒール)』!」


 フォルテュナの回復魔法によって掠り傷が消えていく。


 「ありがとう、フォルテュナ……でもよわったな。他に手段が……」


 「諦めないでアシュラ、必ず心に届くはずよ!!」


 「あぁ、師匠が、洗脳程度で抑えられる程弱くなんてないもんなっ!!」


 フォルテュナの呼びかけに応え、再びカーリーへと立ち向かった。


 「ククルも忘れるなんて駄目ですぅ! 四元素・土壁! きしゃーっ!!」


 カーリーの背後に土壁を作り上げ、逃げ道を塞いだ。

 アシュラは一直線にカーリーへと駆けていく。

 そして殺気を感じない攻撃に、カーリーの心は微かに揺れ始めていた。


 (こいつらは一体何なんだ……私に何を求めているのだ?)


 迫るアシュラに疑問を持つカーリーは、迎撃態勢でそれを迎え撃つ。


 「師匠! この双剣もっ! 貴女がっ! 選んでくれたんですっ!」


 「くっ! 私が選んだっ? そんな覚えはっ! 私にはないっ!!」


 (だが……こいつの眼を、小娘達の意思を、私は……どこかで……?)


 アシュラは攻撃速度を上げる。

 彼等の訴えに僅かな迷いが芽生えたカーリーの剣技はそのキレを失った。

 アシュラもクロも、その刹那を見逃さなかった。


 『兄弟、今だ! ぶちかませっ!!』


 「あぁ! 俺の声に応えろ双剣!『鎌鼬(かまいたち)』!」


 左手に持つ双剣の握りに埋め込まれた銀白色の宝珠が突然輝きを放つ。

 その一撃をパルシュで受けとめたカーリーだったが、その瞬間、騎士団長の証でもある黄金の鎧が粉々に破壊されたのである。

 例え百戦錬磨のカーリーでも、経験のない現象に驚き、動きを止めてしまった。


 「なあっ!?」


 「もういっちょ! 『雷塵(らいじん)』!」


 さらに右手に持つ双剣の黄金色の宝珠が、入れ替わるように輝きを放つ。

 今度はそれを受け止めたパルシュがバチバチッと電撃を纏った。全身にその余波を受けたカーリーが咄嗟に愛剣を手放した瞬間、パルシュは跡形もなく塵と化してしまった。


 「ぐああああああぁぁぁ!?」


 パルシュも鎧も破壊されたカーリーは、電撃の余韻で身体が痺れ、その動きを完全に止めてしまった。だが騎士の矜持なのか、彼女は倒れず、かろうじで膝立ちする。


 構えを解いたアシュラが、彼女の目の前に近寄った。


 「くっ……殺すならさっさと殺せ。生き恥を晒すなど騎士の名折れだ」


 すでに敗北を認めた彼女だったが、アシュラはその言葉を無視する。


 「殺さないですよ。貴女は俺の師匠であり、大切な仲間ですから」


 「何度も言っている。私は貴様等など……」


 記憶にない……と言いかけた時、アシュラはプレートに隠れたペンダントを取り出し、彼女の目の前にそっと差し出した。


 「それは……私の『収納石(ストレージストーン)』? なぜそれを貴様が……」


 「数日前、城の地下牢から脱出する時に、俺に預けてくれたんですよ」


 痺れの取れない手を震わせながら、アシュラから差し出された石に触れる。

 黒くも美しく輝く石に、カーリーの顔が移り込んだその瞬間、石が眩い光を放ち、周囲が光に包まれた。

 

 するとその光によって出来たカーリーの背後から、ねっとりとした黒い霧が浮き上がってきたのである。

 アシュラはその霧を警戒するが、クロがそれを止めた。


 「これは!?」


 『兄弟心配すんな、これは洗脳の種子の正体だ』


 「洗脳の種子……魔王の能力か」


 『そうだ。その石に強力な浄化能力があったんだろ。種子が光に堪えかねて、彼女の身体から逃げるように離れてくぜ。ざまぁねぇな』


 黒い霧は逃げるようにカーリーから空中へと離れていくが、光に触れた先から霧散していった。


 「あああ、あぁ……」


 するとカーリーの目から、涙がボロボロと零れ落ちていく。


 アシュラ達と出会った時の記憶。

 アシュラがシュゴスに襲われ、意識を失った時に動揺した記憶。

 アシュラの匂いに、甘美を覚えた記憶。

 アシュラの為に大金を叩いて、密かに双剣を手に入れた記憶。

 アシュラを城から脱出させる為に、魔王に向かった記憶。


 その全てが、彼女の脳裏に蘇ってきた。


 「ア……アシュ……ラ……」


 光が収束し、遮られていた視界が戻っていく。

 そして銀髪銀眼の青年に、彼女は謝罪した。


 「アシュラ、すまない…………私は魔王に洗脳されて……」


 彼女はこの場で何をしていたのかも当然覚えている。

 だから魔王の言われるがままに敵対してしまった事を謝罪する。


 だが、それを遮るように、アシュラは彼女をそっと抱き寄せた。


 「おかえりなさい、師匠。俺は信じてましたよ」


 彼女はアシュラに身を委ねるように、アシュラの背中へと腕を回した。


 「救い出してくれてありがとう……アシュラ」


 「僕は何もしてませんよ。それよりもこのペンダントは?」


 「オブシディアンっていう魔除けと浄化の力を持つ石なんだ。私が触れた時、魔王に掛けられた洗脳の魔力に石が反応したんだろう……だからほら」


 カーリーは右手に収まっていた石は、すでに粉々になっていた。


 「きっと、浄化する事で力を使い果たしたのね」


 「……すみません、預かっていた石なのに」


 「構わない。こうして私は元に戻れたのだし……な」


 どういうわけか、カーリーが洗脳前に比べてやけにしおらしい。

 アシュラはそれに気がついているのかいないのか……


 「カーリーさん……戻ってくれて本当に良かった……でも」


 「違う意味で敵が増えた気がするのですぅ……」


 2人を見届けていたフォルテュナとククルが複雑な面持ちでそれを見ていた。





 しかし、それを窘めるようにミテュラが大声を張り上げる。


 「喜びに浸るのは後にして! まだ魔王がいるのよ!!」


 4人はハッとしてミテュラへと視線を向ける。

 ミテュラは両拳を胸元で握り締め、常に戦闘態勢を維持していた。

 そして魔王はというと……


 「ぬうぅ……まさか浄化の光とはな……」


 「申し訳ありません国王陛下、お怪我はありませんか?」


 浄化の光は、悪意の塊である魔王にとっても良いものではない。

 だからオブシディアンから光が広がった時、自身が身に着けていたマントを自身とハンナに被せていた。


 魔王の咄嗟の機転によって、ハンナは洗脳から解放されなかったのだ。


 「こざかしい連中め……ハンナ、こ奴等を皆殺しにするのだ!」


 「はっ。国王陛下の仰せのままに」


 魔王は、浄化石に能力を解除された事で、怒りを露わにした。

 フォルテュナとククルはその怒気に気圧され、肌が粟立った。


 「これが魔王本来の力って事? 物凄い魔力量だわ」


 「フォルさん、練習したように受け流さないと身が持たないですぅ!」


 「4人とも気をつけて!! 仕掛けてくるわよ!!」


 ミテュラの怒声にフォルテュナとククルが身構える。

 アシュラは、まだ思うように動けないカーリーを抱き寄せ、即座に後退した。


 「フォルテュナさんはカーリーに回復魔法を。アシュラとククルさんは2人を守りながら戦闘態勢を維持して。ここからが本番よ」


 「わかった! フォル、頼む!」


 「任せて!」


 「2人を必ず守るのですぅ!!」




 これからが本当の戦いの始まりである。




最も改稿したかった部分にようやく着手できました。

変更部分としましては、まずタイトルの変更。そして話が繋がらない部分を修正・加筆しました。


以前よりもだいぶ良くなった……と思いたいです(;´・ω・)


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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