第31話 勝負の時(★)
2020.3.10
改稿完了しましたm(__)m
詳細は後書きにて。
いよいよ『お祀り』当日。
国都ウラノスガイアは『初代勇者の魔王討伐200周年』の名の下、国内外から多くの人々が集まり、かつてない賑わいをみせている。
商店街区では、様々な屋台が大通りに軒を連ね、街並みに彩りを与えている。また公共の広場では、大道芸人や吟遊詩人の催しに、老若男女問わず笑顔が花咲いていた。
そんな中、アシュラ達は拠点から公共広場の緑地帯へと移動を終えていた。
ここにはお祭り騒ぎで行き場を失った冒険者達が多く屯しているので、装備した状態でも違和感なく紛れる事ができた。勿論、兜や帽子などで変装する事は怠らない。
「公開処刑前とは思えない賑わいですぅ……」
「これが普通のお祭りだったのなら良かったのにね」
ククル、フォルテュナが小声で不満を溢す。
これから始まる戦いを前に、呑気に雰囲気を味わうなど出来ないのだ。
その横でアシュラは周囲に目もくれず、手元の武器を大切そうに眺めていた。
今アシュラが装備している武具、それは全てカーリーが預けてくれたペンダント『収納石』に収納されていた物である。
宝珠が中心に埋め込まれたアダマンタイト製のプレート、オリハルコン製のガントレットとグリーブ。どれも特殊加工されているのか、一式白金色に輝いている。それらを隠すように、魔法防御能力の付与された黒地のマント。
これらは女性陣4人が神族の村から選りすぐって拝借してきたものだ。
そしてアシュラが眺めていた武器。
黄金色の宝珠と銀白色の宝珠がそれぞれに埋め込まれたミスリル製の双剣である。これはカーリー自身が持っていた物らしく、誰も村でも見た事がないものであった。
「……師匠、待っていてください」
独り言ちると、握り締めた双剣を腰の鞘に仕舞い、瞑想モードに移行する。
(クロも、協力ありがとう)
『俺は単にあんなのが魔王を騙ってるのが気にくわねぇだけだ』
(師匠とハンナさんを助けられるなら、理由は何だっていいさ)
アシュラはクロとも協力体制を取る。戦い方に関しては擂り合わせ済だ。
ミテュラは沈黙を守りながら、アシュラ達3人の様子を伺っていた。
ちなみにハンスは顔も知られている為、拠点で留守番をしている。
こうして各々が思いを巡らせているうちに時は刻まれ、気がつけば『お祀り』という名の公開処刑の予定時刻が差し迫ってきた。
するとミテュラが座る3人に向かい合わせるように立ち上がった。
「皆、そろそろ時間よ。アシュラとクロを中心に、フォルちゃんとククルちゃんはしっかりフォローお願いね。私は単独で動くから直接的な支援は出来ないけど、頑張りましょう。きっとうまくいくわ」
「「「はいっ(ですぅ)!」」」
*****
ウラノスガイア闘技場特設会場。
多くの都民がわらわらと正門から会場へと入っていく。
だがそのほとんどが女性や子供という、異様な風景。
入場資格として、魔王の息の掛かった女性や子供に限定したのであろう。正門前には観光客や冒険者といった輩が、入場できない事に腹を立てて警備兵に言い寄っている様子が見受けられた。
「洗脳された都民しか入れないつもりなんてね……えげつないわ」
フォルテュナが愚痴る。
村の会合でイクトから得た情報と照らし合わせているのだろう。
「カーリーが魔王の手の内にある以上、私達がやってくる事もわかってるはず。それに宰相の娘さんの命も掛かっている。さらに洗脳によって抵抗力を失った女子供達は人質みたいなものね。明らかに挑発してるわ」
もはや『お祀り』など大義名分でしかない。
「物陰から眺めてても仕方ないわ、さっさと裏口から潜り込みましょう」
当初は人混みに紛れて入る手筈だったが、入場制限と人目の厳しさから、ミテュラの裏口強行突破案に移行した。
*****
各自裏口に配備された警備兵を無力化し、難なく会場へと入った一行だが、予期せぬ事態に遭遇する。
ミテュラが警備兵を殴った直後、突然黒煙が体から立ち上り、瞬く間にミイラ化したのだ。これはカーリーが地下牢の警備兵を殴った時と同じ現象だった。
「何これキモ……母さん、これも何かの罠?」
「いいえ違うわ。これは暗黒魔術よ。死んだ直後に、死体となった肉体と離れていく魂を強制的に結びつける呪術ね。分かり易く言えば、“肉体を持つ霊”ってところかな? しかも本人に自覚がないだけに質が悪いわ」
しかし腑に落ちないとミテュラは考えた。魔王の戦力に黒魔術師はいない。魔王自身にも使えるとは思えなかった。
「この件は今回無視しましょう。多分だけど、クズ王の件とは別件な気がする。戦力としてはあまりにも稚拙過ぎるしね」
3人はミテュラに従った。今は目の前の魔王討伐こそ最優先なのだ。
こうして4人は危なげなく闘技場のアリーナへと続く一本道へと辿り着いた。
「ここまで警備兵がいませんでしたね」
「明らかに気づかれてるわね。ずいぶん余裕綽々よね」
「自信満々ですぅ……」
「皆、行こう。師匠もハンナさんも、洗脳された都民も、全員助けるんだ」
この道を抜ければ、そこには国王を騙る魔王、そしてハンナとカーリーがいる。
4人は覚悟を決めて、光の差す出口へと歩いていった。
4人は一本道を抜けた途端、あまりの太陽の眩しさに目が眩んだ。
明るさに慣れ、視界が晴れていくと、闘技場の中心に据えられた石畳の円形に整えられた戦場が姿を現した。そして……
「ようこそ! 世界を貶める忌み子とその仲間達よ! 余がティミス神教国国王、アストライア一世である! 今宵は『祀り』に来ていただき感謝の極みである!」
国王は両手を広げ、声を張り上げて芝居掛かった台詞を吐く。
しかし4人ともその台詞に違和感を感じ取った。
“アストライア一世”
建国から200年。されど国王は健在という事。
それは当時、ミテュラの姿を模して英雄と称えられた人物は、今ここにいる国王、いや魔王であるという事を意味していた。
ミテュラは歯を食いしばり国王に食ってかかった。
「貴様が英雄を騙り、ティミスを騙したあの魔王だと!?」
すると国王は怪訝な表情でミテュラを睨みつける。
「おぃ女……貴様は200年前を知っているとでも?」
「……っ!!」
ミテュラがつい感情的になってしまった。
普段は冷静が売りの彼女だが、忌まわしき過去の話となると別である。
「ふん、まぁ良い。200年前の事を詳しく知りたければ、余を倒すがよい。皆の者、予定変更だ! これから余と、この者達との決闘を執り行う!! 決着は片方の陣営が全滅するまでとする!! 依存なければ拍手でその意思を表せ!!」
すると集まった観客から、拍手喝采が巻き起こる。
それもそのはず、この会場にいる人は皆洗脳に絡んでるのだ。
今更国王の意見に反対するなどという者は、この場に存在しない。
「さて、民衆も貴様等の首をご所望のようだ。余としては忌み子の首だけで良いのだがな。残り3人は生け捕りにして……そうだな、我が玩具にしようではないか」
国王がミテュラ、フォルテュナ、ククルの姿を視界に収めると、舌なめずりしながら、視姦する。
「ふん、吐き気のする冗談ね。アシュラ、フォルテュナさん、ククルさん、頼んだわよ」
「「「はいっ」」」
アシュラ達がすぐさま戦闘態勢に入り、国王へと距離を詰めていく。
だが国王はニヤリと笑みを浮かべ、指をパチンと鳴らす。
すると国王の背後から2つの影が姿を現し、アシュラ達の前に立ちはだかった。
「余の可愛い下僕を紹介しよう。ハンナとカーリーだ」
忌み子として処刑台に晒されるはずだった宰相の娘ハンナ、そして騎士団の鎧を装備したカーリーが、迎撃態勢をとっていた。
瞬間、アシュラの中で国王へと飛び込んでいった彼女の姿が脳裏を過ぎる。
「師匠っ! どいてください!!」
アシュラの言葉に、ほんの少しだけ目が見開いた気がした。
だがカーリーはこの程度で目を覚ます程甘くはなかった。
カーリーの剣が、アシュラの剣戟を受ける。
パラシュと双剣の力が拮抗し、2人はその動きを止めた。
「私は貴様など知らぬ。我は騎士団団長、カーリー・ブラフマン。国王陛下の命により、その首貰い受ける!」
カーリーは双剣を弾くように剣を振り切り、瞬時に追撃へと転じる。
その戦いなれた姿は、かつてアシュラが訓練していた頃とはまた違った本気の威圧に満ちていた。
『相棒、まさか甘っちょろい事考えてねぇよな? 相手は洗脳された騎士団長様だ。本気で掛からないとマジで死ぬぞ』
「……あぁ、わかってるさ」
これが現実。
アシュラは迫りくるパラシュの剣先に目を向け、すかさず双剣を構えた。
こうして、師匠と弟子の戦いの幕が上がった。
今話は大幅に手直ししました。
まずは国王(魔王)とミテュラのやり取り。いざ読み直してみたら、全然話の筋が通っていないというオチが……酷くて恥ずかしかったです。
それと師匠と弟子のやり取りも少し手を加えました。こちらは文章的な変更のみで、流れ自体は変わっていません。
初めて読んだ方々には、ボロがバレずに済んでよかったです(;´・ω・)
次話も早めに改稿しますので、少々お待ちいただければ幸いです。
いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m




