表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/75

第27話  権謀術策(★)


 ウラノスガイア城、大広間。


 その玉座に座る国王の前で、宰相のハンス、そしてアシュラが平伏している。


 「国王陛下、この銀髪の青年が探し出した【忌み子】でございます」


 「ほぅ……銀髪に銀眼、本物のようだな。銀斑はどこにある?」


 「こちらに……青年、背を私に向けよ」


 国王は無表情でアシュラを見ると、銀斑を見せるように促した。

 ハンスはアシュラに背を向かせ、上着を捲りあげる。そこにはぼんやりと星の形をした銀斑が大きく背中を占めていた。


 「ふむ、確かに偽り無き銀色の斑であるな。ぐははっ……誰か、その者を地下牢へと連れていけ!」


 それを確認した国王は満足げに笑みを浮かべると、地下牢獄に監禁するよう警備兵に指示を出し、アシュラは引き摺られるように連れていかれた。


 こうして大広間に残ったのは国王とハンスのみとなり、ハンスも警備兵を追うように退室しようとしたのだが……


 「国王陛下、それでは私めもこれにて……」


 「ハンス、貴様には用件がある。少し待て」


 国王は何か企んでいるような表情でハンスを呼び止めた。

 その声にハンスは訝しげな表情をしながら足を止める。

 そして心情を読まれまいと深呼吸し、いつもの澄まし顔で振り返った。


 「して、どのようなご用件でございますか?」


 「正直、余は忌み子が見つかるとは思わなくてなぁ、時間も差し迫っていた故、余自ら偽りの忌み子を1人用意してしまったのだ……さぁ、余の隣へと出てくるがよい、()()()


 国王は玩具を自慢する子供のような笑みを浮かべ、少女を呼び寄せた。

 そして呼ばれた名を耳にしたハンスの全身は、激しく粟立った。


 すると玉座の後ろから、スッと人影が現れ、国王の真横に立ったのである。

 ハンスはそのシルエットに、その佇まいに目を見開いた。


 まさか……まさかまさかまさかまさか!?

 ハンスの全身から汗が吹き出し、両足が震え出す。


 「紹介しよう。()()()()()()()()()、ハンナだ」


 髪色も瞳の色も銀色だが、三つ編みに束ねた長い髪、鼻筋の通った顔立ち、凛とした佇まい……それは紛れもなくハンスの一人娘のハンナだった。


 ハンナを視認した瞬間、ハンスの感情は怯えから怒りに反転した。


 「陛下!! これはどういう事だ!! 話が違うではないか!!!」


 「話が違う? 何を言っておる。誰が忌み子は1人などと言った?」


 「そうではない!! 正真正銘本物を探し出したのだ!! どうしてハンナがその身を偽り、犠牲にならなければならない!! ハンナ、元の姿に戻って家に帰ろう。……どうした、ハンナ? さぁこっちに来るんだハンナ!!」


 「私は、貴方に名を呼び捨てにされる謂れはありません」


 ハンナの言葉に抑揚が感じられない。それどころか父親であるハンスの言葉を冷淡に切り返したのである。そんな愛娘の言葉に、ハンスの顔色がみるみる青褪めていく。


 「ハンナ……私が、父親である私がわからないのか!!?」


 「父親? 私に父親などおりません。それと、気安く名を呼ばないでください」


 ハンスは愛娘の目をじっと見詰めるが、そこに何一つ迷いすら感じられない。


 そんな父娘のやり取りを見ていた国王は、嘲り笑いながら割り込む。


 「ゲヒャハハハハ!! ハンナが気安く呼ぶなと言っておるではないか。あまりくどいと嫌われるどころか、首と胴体が離れ離れになってしまうぞ? ゲッヒャヒャハハハハ!!」


 下品に高笑いする国王に、いよいよハンスがブチ切れた。

 彼は宰相である前に、娘を愛するひとりの父親なのだ。


 「貴様……ハンナに何をしたああぁぁぁ!!」


 「余に貴様などと不敬が過ぎると思わぬか? 余にはお主のような耄碌した宰相など必要ない。さっさと自らの足で牢獄に行くがよい……グフフハハハハッ!!」


 「このクズがあああぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ハンスは宰相だ。政治や学問に精通していても、武芸とはまるで縁のない人間。

 そんな彼でも、娘の為、国王に向かって我武者羅に殴り掛かる。

 だが国王は一切怯む事はない。むしろハンスが来るのを待っていた。


 「国王陛下に強襲するとは、万死に値します」


 「ハ、ハンナ!? 邪魔をするなぁぁ!!」


 だがしかし、ハンスの拳を退けたのは、国王の隣にいたハンナだった。

 ハンスが国王にあと数歩というところで、ハンナは国王の前に立ち塞がる。そして右手に抜剣されていたレイピアを横一閃。刹那、ハンスの左手首から先が宙を舞った。


 「なっ……ぐああああぁぁっああぁぁぁ!!」


 「片手を失った程度で済むなどと思わない事です。死を以て償いなさい」


 「ぐふぁ……」


 ハンナは激痛にのたうち回る父親の首元にレイピアを突く。

 剣先がずぶりとハンスの体内へ沈んでいく。

 しかし身体を貫きかけたところで、国王がハンナの手を掴んで止めた。


 「国王陛下、よろしいのですか? ここで殺さねば再び襲われる可能性が」


 「かまわん。それに見ろ、すでに声帯も切れて声も出ん。左手も切断されては何もできまい。このまま反逆罪で牢獄に放り込んでおけばよい。どうせ長くはなかろうよ」


 「国王陛下の仰せのままに……」


 辺り一面が鮮血に染まる中、国王は警備兵を呼び出す。

 そして話をでっちあげ、瀕死のハンスを国家反逆罪の罪で投獄した。




 *****




 「ふむ……思っていたより使えるな、この小娘は」


 ハンスが警備兵に連行された後、国王はハンナを見やりながら小さく呟いた。


 実のところ、ハンナはこの日、自宅に訪れてきた王城の使者よって王城へと連行され、ハンスに気づかれないよう、誰もいない大広間で拘束され、そのまま洗脳されたのである。


 以前イクトが結論づけた『平和ボケによる能力の減衰』も、実は半分不正解。

 確かに能力は減衰しているが、それは一度の能力行使で魔力が尽きかけてしまう為、普段は能力を抑制して使っていたに過ぎなかったのだ。


 「さらにここまで卓越した剣技を持っているとはな……ふむ、斬首刑よりも、ここは忌み子同士で殺し合うというのも余興として悪くなかろう。最後に余が自らトドメを刺せさえすればよいのだ。ふむ、なかなか悪くないな。げひゃひゃひゃははははははは!!!」



 ハンナはそんな国王の様子をまるで気に掛けていない。

 もはや国王の命令のみに従う、殺人人形と化していた。

 


 だが……


 その感情すら消えたハンナの頬には、一筋の涙が伝っていた。




2020.2.15 改稿しました。


とは言っても、今話はほとんど微修正といった感じです。

会話部分を少し弄りましたが、内容的にはほとんど変わりません。

この調子でどんどん改稿して早く最新話に追いつかなきゃ( ノД`)


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ