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第26話  国都ウラノスガイア(★)


 迷いの大森林を離れたカーリー率いる騎士団は、通常4日は掛かる道のりを、往路と同様に2日間の帰路完走という地獄を味わわされた。

 一部団員の中には、団長殺して自分も死ぬという輩も出たとか……

 

 そんな中、身分を偽り、馬車の中で楽ちん移動していたアシュラ達は、多少の馬車酔いに襲われつつも、無事に国都を囲う大防壁の目の前へと辿り着いたのであった。


 「これが国都の大防壁……本で見た描写絵なんて比べものにならない……」


 神族の村以外見たことのないアシュラには、些か刺激が大きかったようだ。

 囚われた忌み子という役割である事を忘れ、まるで新しい玩具を見つけた子供のように、その銀眼を眩く輝かせていた。


 「難攻不落といった印象よね」


 「ふえぇ……どう建造したのか不思議ですぅ」


 フォルテュナ、ククルの2人もまた、大防壁の存在感に感嘆の声をあげた。

 その壁の高さは、上に立つ見張り兵の姿が殆どわからない程である。


 「ここはまだ国都の外周よ? これで驚いてたら身が持たないわよ?」


 ミテュラは話しかけるが、3人の耳には入っていないようだ。


 「でもこれほどの大防壁を造るなんて、一体何を恐れているのかしら」


 「フォルさん、門扉も凄いですぅ……開閉するだけで大変そうですぅ」


 天上界には防壁など存在しない。

 理由は簡単。神族以外の出入りは不可能、種族間戦争とも無縁なのである。

 だからこそ、フォルテュナは感嘆と共に疑問を抱いた。

 その答えはいずれわかる事になるのだが、それはまだ遠い未来の話になる。


 ふとカーリーが、ミテュラの横から3人の話に割り込んできた。

 そして耳打ちをするように、皆に小声で囁きかける。


 「ここからは国王の支配圏内だ。何処で誰の目が光っているか、正直私にも把握出来ていないのが現状だ。だから油断するなよ? 特にフォルテュナ、ククル。ミテュラが言った通り、余計な事は喋らず、絶対に傍から離れるな。わかったな?」


 「「わかりました(ですぅ)」」


 「アシュラも立場は処刑される忌み子だ。黙って俯いてればいいだけだが、それを数日続けるのは精神的な苦痛を伴うだろう。最もきついが、同時に重要な役割だ。わかってるな」


 「……(こくり)」


 アシュラは黙って頷いた。


 5人の疎通が終わると、カーリーは守衛の正面へと歩を勧め、声を張り上げた。


 「国王直属の騎士団団長カーリー・ブラフマンだ。忌み子捜索の任務を終え帰還した。通行の許可を求める」


 守衛はカーリーの出した通行許可証を確認し、当然のように通行を促す。

 そして部隊の先頭を歩く彼女を追いかけるように、4人は後をついていった。



 *****



 都民の視線を一身に浴びながら、所狭しと軒を連ねる商店街のある通りを抜ける。するとその先には噴水を中心とし、木々に囲われた公園があった。ここは先日、ミテュラがイクトと接触した場所でもある。


 カーリー達はここで歩みを止めると、団員達に声を掛けていく。


 「皆長い期間ご苦労だった! 現時刻を以て任務完了とする! 各自後始末を済ませたら解散だ! 1日だけだが、ゆっくり英気を養うといい! 以上だ」


 「「「「「了解(イエスマム)!」」」」」


 団員達の行動を一瞥すると、カーリーは4人に向けて声を掛けた。


 「私達は、これよりアストライア城へと向かう。私を先頭にして、フォル殿とククル殿は忌み子の両脇、鬼神は後ろの護衛を頼む」


 「了解よ」


 「「わかりました」」


 皆、公園をのんびり散策したかったが、これも作戦だと気持ちを切り替え、アストライア城へと向かった。



 *****



 アストライア城前。そこには全身鎧に身を包んだ警備兵が2人立っている。

 その警備兵がカーリーの姿を視認すると、ひとりが城内へと走り去りもうひとりの警備兵はカーリーに労いの声を掛けてきた。


 「カーリー騎士団長殿、任務ご苦労様でした!」


 カーリーは黙って頷くと同時に、城門からひとりの男性が走ってきた。

 それが誰なのか、彼女はすぐにわかったようで、迷わず声を掛けた。


 「ハン……宰相閣下、遅くなって申し訳ない。今戻った」


 「任務ご苦労であった騎士団長殿。して成果はどうであった?」


 ハンスは逸る気持ちを抑えきれない様子でカーリーに問い掛ける。

 愛娘の命が掛かっているのだ。公務とはいえ逸るのも仕方ないだろう。


 「遅くなってすまなかったが、奇跡的に見つける事ができた、ほれ」


 カーリーはアシュラの腕を乱暴に引っ張り、ハンスの前につき出した。

 アシュラは虚ろな目で、力なく地面に転がった。護衛についていた3人は一瞬辛そうに目を逸らしたが、仕事だと割り切ったのかすぐに視線を正面に戻した。


 「おおぉ……これが伝承に聞く【忌み子】か。よくぞ発見できたな」


 「あぁ、ここにいる鬼神とその弟子達にも協力を仰いで、迷いの大森林の最奥まで探し回ってようやくな」


 「なるほど。皆様もご協力いただき本当に……本当に感謝する」


 ハンスはミテュラ達にも深々と頭を下げ、感謝の意を表した。


 「その忌み子は私の方で預かるとしよう。報酬に関しては日を改めて決めようと思うが、それで良いか?」


 「ああ、それで問題ない。今は家に戻って休みたい」


 「そうだな。ゆっくりと休まれるが良い。鬼神殿、そしてお弟子のお2人も暫く国都でゆっくり過ごされると良い」


 ハンスの謝意に、ミテュラ達は沈黙を守ったまま軽く会釈した。


 そしてハンスはアシュラの手を引くと、そのまま城内へと姿を消していく。

 手を引かれていくアシュラは、一瞬4人に顔を向けると、力強く頷いた。


 (皆、またあとで)


 ミテュラ達もそれを見て力強く頷き返した。


 「……さて、これからが勝負だな」


 「そうだねー」


 カーリーとミテュラが踵を返し、城外へと歩き出した。


 「……アシュラ、必ず助けるからね」


 「全力で頑張るですぅ」


 フォルテュナとククルはアシュラが連れて行かれた空間を見つめながら呟くと、踵を返しミテュラ達の後を追いかけていった。





2020.2.14 改稿。


前半部分、大防壁前に到着した部分の説明と会話を少し加筆修正しました。

内容的な変更はしてませんので、あまり違和感は感じないと思います。


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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