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第25話  さらば迷いの大森林(★)

2020.2.10 改稿しましたm(__)m

タイトルの変更及び内容一部加筆修正させていただきました。

こと詳細につきましては後書きにて。


 『魔王の欠片』騒動から8日が経過した。


 アシュラ、フォルテュナ、ククルの3人は『魔王の欠片』騒動以来、さらに精力的に鍛練をこなし、ミテュラとカーリーから戦闘における技術を習い、面白いように吸収していった。

 結果、訓練開始前とは比較にならないほど戦闘技術を身に着ける事ができた。


 更にそれだけでは終わらないのが、やはりアシュラ。


 なんと『魔王の欠片』を手懐ける事に成功したのだ。

 厳密には、心の奥底に押し込まれた『魔王の欠片』に対し、アシュラが心身の『共有・共存・共闘』を提案し、交渉した結果だ。


 当然の事だが、アシュラを除く全員が、この提案に猛反対した。

 それでも諦められなかった彼は、暇をみつけては『魔王の欠片』を説得。互いに条件を出し合う事で、交渉は成立したのである。


 今では普段の行動中でも、お互い心の中で会話する事が可能となっている。

 ちなみに『魔王の欠片』だと呼び名が長い為、『クロ』と名付けたらしい。


 そしてさらに驚くべき事象が起きた。

 アシュラの背中にある紋章が変化する事がわかったのだ。


 “銀色の五芒星を中心に据えた黒い逆五芒星”だったものが、普段は“灰色の五芒星”になっていた。しかも普段は銀色だったり、戦闘時は漆黒に染まったりと、変化が絶えないのである。こればかりは誰もが目を疑った。


 だがミテュラの見解では、精神的に占めるアシュラとクロの共存関係が、紋章に現れていると推測された。そして現状では2人の共存関係が保たれている為、解決方法は皆無と判断し、そのままとなっている。

 勿論、クロが暴走しないよう、常に目を光らせている。




 余談ではあるが、カーリーが「裸で戦わせるのも修行の一環」などと戯言をぬかし、意味も無く抱きついては匂いを嗅ぐという変態行為が目に余った為、全員一致でアシュラの師匠を更迭され、ミテュラと交代したとだけ付け加えておく。




 *****




 こうして出発日の早朝。

 現在5人は、神族の村旧シェイクス宅前に並んでいる。


 建物を背にしてミテュラとカーリーの2人が並び、その対面にフォルテュナ、アシュラ、ククルが並んでいる。ミテュラが3人の出で立ちを確認する。


 白金色のロングヘアーをポニーテールにしたフォルテュナは、少し明るい紺色の修道服。その両脚サイドにはスリットが入っており、その下に履く白いニーソックスが際立っている。装備はミスリル製のメイス、そしてガントレットとグリーブを着用。


 翡翠色のミディアムショートが似合うククルは、魔法使いらしい黒地に赤い刺繍をあつらえたローブを纏っている。その下は黒色のチュニックに黒いニーソックス。ほぼ黒づくしだ。装備は4つの宝玉が埋め込まれたミスリル製の杖だ。


 ちなみに2人の装備は全て村の宝庫に隠されていたものを拝借した。


 そしてアシュラは……


 「どうして俺だけ布の上下なんだろう……?」


 薄い布地の上下に、皮の靴。そして木の棒という村人スタイルだ。

 しかしこれもちゃんとした理由があるとミテュラは言う。


 「皆、これから騎士団と合流して、その姿のまま王国に入るわ。私とカーリーは元々騎士団に所属しているから、指定された鎧のままよ。フォルさんとククルちゃんは、森の外周にある村に住んでいた私の弟子設定ね。誰に何を聞かれても基本的には黙秘に徹する事。これは作戦だという事を忘れないでね。それと変な輩に纏わりつかれると面倒臭いから、私から絶対に離れないようにね」


 あらかた説明は済んだと納得顔のミテュラだが、ひとり忘れていないだろうか?


 「それで母さん、俺は?」


 少し涙目で訴えるアシュラ。自分も格好いい鎧とか着るのかと期待していただけに、精神的ダメージは思った以上に大きいようだ。


 「そんなの決まってるわよ。アシュラは森の最奥で見つかった『忌み子』よ」


 『兄弟、それくらいわかんだろ。空気読めよ』


 ミテュラだけでなく、脳内でクロまでもがなじってきた。


 「それじゃあ、背中の銀斑はどうする? 五芒星じゃ変でしょ?」


 確かにその通り。これでは銀色の斑とは違うのだ。

 しかしミテュラは余裕の笑みを浮かべ、アシュラに注文する。


 「アシュラ、クロ、その五芒星をうまく調節できないかな?」


 『はあ? 何言ってんだこのクソババア』


 「クソババアじゃないから、今度は本当に殺すわよ?」


 『ちょ待て!? 俺の声はアシュラにしか聞こえないはずじゃ!?』


 「母の愛は偉大なのよ? 母の愛は不可能を可能にするの」


 『全っ然意味わかんねぇよ! 筒抜けとか反則だ反則!!』


 突然のミテュラの無茶振りと、筒抜けだった言葉にクロが動揺する。

 ミテュラがアシュラに向けて独り言ちる姿に、小首を傾げる他の3人には、アシュラがクロの言葉を直訳してあげている。


 「意味わかりなさい。背中の銀斑だってそもそもクロの責任、共存を認めたアシュラは同罪よ。だから2人で何とかしなさいね」


 『何とかしてって……俺にもわかるわけねぇよ!!』


 「母さん、俺にもどうすればいいのかさっぱり……」


 「やる前から諦めちゃ駄目よ? まずは試行錯誤してみなさい」


 『どうにもならなくても文句言うんじゃねぇぞ? クソバ……バ様』


 「クロ、それ全然誤魔化せてないし。とりあえずやってみよう」


 「さすが心の兄弟ね♪ アシュラ、クロ、宜しくね」


 彼女の笑顔に恐怖を感じたクロは、とりあえず『んぬぬぅ……』と唸りだす。

 どうやら息んでいるみたいだ。どういうリアクションしているかはわからないが、一応の努力はしているらしい。

 アシュラは唸ってはいないものの、目を瞑り意識を背中へと向けている。


 暫くすると、アシュラは背中にムズ痒い感覚に襲われ始めた。


 「……何だ? 背中が痒いっていうか気持ち悪いんだけど」


 ミテュラはニヤリとほくそ笑む。

 そして『クロ』は唸り声から一気に息を吐きだした……っぽい。


 『はぁ~~~~……どうだ! 誰か見てみろやコラ!!』


 クロの声が聞こえたワケではなく、アシュラの様子にいち早く反応したカーリーが、アシュラの背後へと瞬間移動し、おもむろに上着をめくりあげた。


 「おぉ凄いな、明確に模っていた五芒星の輪郭がぼんやりと自然な感じに……色も灰色に近い銀色というべきか……すんすん。うむ、香りもいいじゃないかすんすんすんふぼっ!?」


 確認ついでに暴走したカーリーの頭頂部を、フォルテュナの全力のメイスが直撃した。


 「おほほほ、ごめんあそばせ」


 カーリーはそのまま気絶し、地べたに崩れ落ちた。

 そして何事もなかったのようにミテュラが話始めた。


 「アシュラ、クロ、よくやったわ。あとで頭撫でてあげる」


 『俺にゃ関係ねぇ。結局は良いように使われたって事か』


 「否定しないって事は、撫でる頭があったらして欲しかったの?」


 『違ぇよバ…ッ! あぁもう調子狂う! 俺ぁ寝るからな!』


 ようやくアシュラの中が静かになった。

 外もカーリーが静かになったままだ。

 ミテュラはこのチャンスを逃すまいと話を元に戻した。


 「そういう事でアシュラ、『忌み子』役として国に捕縛されてもらうわ。お祀り当日は必ず助けるから、それまで我慢してね」


 ミテュラはにっこりとアシュラに笑顔を向ける。アシュラは納得しているが、反論するのはフォルテュナとククルだ。


 「待ってください。それではアシュラが危険では……」


 「そうですぅ。もっと安全な方法がないのですぅ?」


 尤もな意見だが、ミテュラは予想通りとすぐ切り返す。


 「そうね。でもこれが一番確実なの。相手は堕落したとはいえ、その正体は魔王なのよ。襲撃されて、身の危険を感じた時の逃げ道は準備していると考えた方がいいわ。もし逃がせば、それこそ国を巻き込んでの騒動になりかねない。だからアシュラには魔王のトドメを刺せる位置に居て欲しい。最終的には私達が必ず助け出すから、どうか信じて欲しいの。辛い役割だけど、どうかお願い……」


 ミテュラは3人に深々と頭を下げた。

 困惑するフォルテュナとククルだが、アシュラは意外にもそうでもないようだ。


 「わかったよ母さん。俺、母さんを、皆を信じるよ」


 ミテュラは頭をあげると、少し困ったような笑顔を見せた。


 「本当に、私には出来過ぎた息子ね。でもありがとう」


 そんな2人の様子を見て、2人もどうやら諦めたようだ。


 「ミテュラさん、ちゃんと作戦には参加させてくださいね」


 「ククルも頑張るのですぅ!!」



 こうして一通りの話を終えた4人は、村を後にした。



 地に伏したカーリーは、追いかけてくるだろうと信じて放置された。

 決して忘れられていたわけではない……はずだ。




 *****




 「ったく、私を置いていくなんて信じられん!!」


 「大丈夫よ、私が遺言預かってるとか言えば何とかなると思うわ」


 「勝手に殺すな! 名誉棄損でアシュラは私が預かる!」


 「冗談よ団長さん。それにアシュラ預かって何するつもりなのよ?」


 先に村を出た4人にカーリーが合流し、ようやく一行は揃って騎士団の野営地へと向かい始めた。ミテュラは『万眼(サーチ)』を使い、森外周に集まる人の気配を確認済だ。


 ミテュラは、騎士団の鎧に身を包み、カーリーの呼称を元に戻した。

 カーリーは相変わらずだったのでそのまま。

 ただ性癖的な面で問題を抱えてしまったが。


 「ねぇ団長さん、残ってた団員達、放置しておいて大丈夫だったかしら?」


 「心配する必要ないだろ。むしろ私がいない方が喜んでると思うぞ」


 「想像に難くないわね。皆、気持ちが緩んでなければいいけど」


 「少しは私を擁護して欲しかったぞ『鬼神』」


 2人は相変わらず飄々と森をすり抜けるように走り続けていた。

 ちなみに他の3人は、ミテュラ達が視界から消えないように追いかけるのに精一杯である。


 「はぁ、はぁ、はぁ、あのっ、2人っ、早過ぎっ、だあぁ!!」


 「私達だけっ、強化魔法っ、使ってるっ、のにっ、どういうっ、事よ!!」


 「カーリーさんっ、本当にっ、人族っ、なのですぅ!?」


 フォルテュナによって、固有スキル『幸運』派生補助魔法『行動速(スピードエン)度強化(ハンスメント)』を発動している。このスキルは通常の約3倍の機動力を得る事が出来る。このスキルを掛けてあるのは3人だけなのに、それでも2人に追いつけない。


 しかもカーリーは神族ではない。にも関わらず、ミテュラの移動速度に引けを取らない。それは並々ならず努力の賜物なのか、稀有な才能あっての事なのか、それとも……謎は深まるばかりだが、アシュラ達は、そんな悠長な事を考える余裕などないのであった。


 「おーい3人共、そろそろ着くからねぇ!」




 *****




 「団長殿!! 鬼神殿!! ご無事でしたか!!」


 5人が大森林の外周に辿り着き、騎士団の野営地を視界に捉えた直後、騎士団を纏めていたと思われる団員が走り寄ってきた。

 すでに2人は騎士団モードである。


 「うむ、皆、任務ご苦労であった! 私が居ない間、成果はあったか?」


 「団長殿、申し訳ありません。大森林を出来る限り捜索したのですが、どこも動物や魔物ばかりで、忌み子らしい人物は見つかりませんでした……」


 本当に申し訳なさそうに深々と謝罪した。

 後から集まってきた団員達も悔しそうに俯いている。


 だがそれは最初からわかっていた話。御伽噺の忌み子など存在しないのだ。

 それを知っているだけに、カーリーは笑いを堪えながら団員達を見つめる。


 相当に性格が悪い。


 「構わんさ。最初から駄目元で始めた捜索だったからな」


 「そう言って頂けると救われます。……して、そちらの3人は一体?」


 団員が不思議そうに視線をアシュラ達3人に向けたのに対し、今度はミテュラが口を開いた。


 「こっちの白金色の髪の子が僧侶のフォルちゃん、そっちの翡翠色の髪の子が魔法使いのククルちゃん。2人は私の弟子よ。この近くに住んでたのを思い出して、連れ出してきちゃったわ」


 団員全員がミテュラの言葉に驚愕した。


 「なんと! 鬼神殿にお弟子さんがいたのですか、さぞ実力がおありでしょう」


 「そうね。そこいらの冒険者より全然強いから、手出すと殺されるわよ?」


 「あはははは、それは怖いですな。フォルちゃん殿、ククルちゃん殿、我々一同歓迎いたします」


 「「ちゃんは要らないです」」


 基本的に黙秘を貫く予定だったが、さすがに“ちゃん”まで名前の一部として認識されるのは微妙だった2人。ミテュラはクスリと笑いつつ、アシュラを紹介した。


 「それと彼は、私達4人で大森林の最奥から見つけてきた『忌み子』君ね」


 「「「「「おおぉぉぉ~~~~~!!」」」」」


 全団員が感嘆の声を上げた。まさか伝承の中でしか知られていない『忌み子』を探し出してくるとは思いもしなかったのだ。


 「さすが団長と鬼神だぁ!!」


 「鼻高々に国都に戻れますね!!」


 「これで『お祀り』も安心ですね!!」


 誰もが何一つ疑う事なく4人を賞賛している中、フォルテュナとククルは心が重たくなった。

 愛する者を国都へと連れて行き、投獄させなければならないのだ。愛する者が犯罪者扱いされるのを、それを喜ぶ団員達を見て、平気な顔していられるはずはない。

 そして母親であるミテュラも同様だった。顔には出さないものの、とても良い気分とはいえない。


 しかし、それに気づいていたアシュラが、小さな声でそっと3人に囁いた。


 「(フォル、ククル。俺は大丈夫だ。母さんもそんな顔しないで)」


 3人は少し俯き気味だった顔をあげると、アシュラが力強い目をして頷いた。

 そんなアシュラに3人も無言で頷く。その意図はアシュラにも理解できた。


 ((私達が必ず助けるから、信じて待ってて(ですぅ)))


 (アシュラ、任せて。必ず成功させてみせるわ)


 3人が疎通を済ませた直後、カーリーが声を張り上げて団員を煽る。


 「野郎共! これで任務は完了した! 残り2日で国都へと帰還するぞ!」


 「「「「「了解(イエスマム)!」」」」」


 「忌み子は馬車に! 変な行動を取らぬよう、鬼神とフォル殿、ククル殿の3名は護衛として馬車に同乗してくれ!」


 「イエスマム♪ 団長さん気前がいいわねぇ」


 「「お任せください、騎士団長様」」


 4人の気持ちを酌んでのカーリーの配慮であった。

 そして馬車に乗り込む4人に、カーリーが目配せした。




 (ぐふふ……これで貸しひとつだゼ☆)




 頬を赤らめつつ、左の口角を上げ、変にニヤついた笑顔を醸すカーリー。

 そしてそれに気づいた4人はというと……




 ((((……謀れた!!))))




 作戦終了(ミッションコンプ)後、カーリー(変態)を置いて、すぐに国都を去ろうと決意する4人であった。






今回は一部加筆しながら話の軌道を調整しました。


改めて見ると、ここでクロとカーリーのキャラがおかしくなったのですね(笑)

少し喜怒哀楽の弱かった部分が2人に救われてる気がしました。


いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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