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第24話  心をひとつに(★)

 2020.2.9 改稿しましたm(__)m



 「という事で、見せてもらうよ。アシュラ」


 彼の上着の裾にミテュラが握り締めた。


 「ちょ、ちょっと待って! さすがに皆に見られるのは照れるっていうか」


 「それって今更じゃないかしら? カーリーカモン!!」


 「承知した」


 カーリーがすかさずアシュラの正面に立つと、両脇に滑り込ませるように手を潜らせ、しっかりと抱き締めた。文字通り密着スタイルだ。

 さすが騎士団組の2人。見事な阿吽の呼吸というべきか。


 「し、師匠!? ちゃんと自分で脱ぐから離れて!?」


 「観念しろ、往生際が悪……ん? すんすん……なぁアシュラ」


 「な、何ですか?」


 「お前、すんすん……いい匂いするな……すぅ~~はぁ~~」


 「え、嘘? ってそんなに鼻近づけて嗅がないで!?」


 カーリーがアシュラの首元に顔を寄せ、思いきり匂いを吸い込む。気のせいか、口調も艶かしい。

 さらに、今この状態を黙って見ているはずがないのが、お馴染みフォルテュナとククルだ。2人もカーリーの様子を見て颯爽とアシュラに抱きついた。


 「カーリーさんだけズルいです! アシュラの匂いは私のものなんですからね!……くんくんくんくん!」


 「ククルにも嗅がせて欲しいのですぅ! んぶふ~~ふはぁ~~」


 フォルテュナは背中にしがみつき、前後を占められ困ったククルは、あろうことかお尻の割れ目に顔をうずめた。


 「ちょ、ちょっと待って! 2人ともストップ!! ククルもそこは倫理的に駄目だってばあんんっ!!」


 女性3人に抱きつかれ、完全に身動きが取れなくなってしまった。首元、背中、お尻からクンクンスンスン鼻を鳴らす音に包まれ、女性特有の甘い香りに目が眩むアシュラ。


 「はあぁ、たまらないわ……スンスン」


 「アシュラ、今夜から私の抱き枕に任命するわ……くんくん」


 「ここ、良い匂いしないのですぅ……ぶふふぅ~~」


 これが噂のハーレムか……などとアシュラの脳内がピンク色になりかけた時、ようやく助け船が入った。


 「全員で囲ったら何も見えんわ!! どかんかこの駄女神共がっ!!」


 「「いたたたたたごめんなさい(ですぅぅ)~~」」


 ミテュラが追加で張り付いた2人の頭を鷲掴みして引き剥がした。


 「カーリーも匂いを嗅ぐな!」


 「すーーーんはぁすーーーんはあぁすうぐふぅ!?」


 ミテュラによって手刀を叩き込まれるまで全身全霊で匂いを吸い込むカーリー。その執着心たるや恐るべしである。


 「全く貴女達、脱線しすぎにも程があるわよ」


 この先ちょっと不安を感じたミテュラであった。




 *****




 やっと障害物(駄女神2人)を排除したミテュラは、少し腑抜けた息子の服を捲り上げた。


 「さて、神名の証がどう変化してるのかしら……っ!?」


 ミテュラの驚いた様子に、フォルテュナとククルは後ろから背中を覗き込んだ。


 「確か大森林で初めて見た時は、綺麗な銀色の五芒星でしたよね」


 「はいですぅ。でもこれは……黒い逆五芒星が入ってる、ですぅ?」


 覚醒を成した神族の『神名の証』は、その性質たる象徴を模った紋章となる。


 例えばフォルテュナは『運命と幸運』。メビウスの輪を模った複雑な銀色の紋章が右腕上腕部に、四葉を模った銀色の紋章が左腕上腕部に発現している。

 ククルは『四元素』。火・水・空気(風)・土を象徴とした紋様が1つの輪の中に描かれた銀色の紋章で、右手甲部に発現している。


 そしてアシュラの背中の紋章は、以前大森林で確認された時と同様、銀色の五芒星が発言していたのだが、()()()()黒色の逆五芒星が浮かび上がっていたのである。


 ミテュラはこの黒い逆五芒星を見て、眉間に皺を寄せながら露骨に機嫌を損ねた様子で皆に説明を始めた。


 「……まぁ予想通りだけど、この紋章を目の当たりにすると流石に()()ものがあるわ」


 「どういう事だ? 分かり易く説明してくれ」


 「カーリーには見せた事ないから知るはずもないわ。でもフォルテュナさん達は見覚えがあるはずよ? 私に掛けられた呪術の紋章……覚えてるわよね?」


 「「……あ」」


 ミテュラは上着の襟元を無理矢理引き延ばし、左の胸元を露わにする。

 そこには魔王に掛けられた呪いの証である黒い逆五芒星。2人も思い出したらしく、ハッとした表情で驚いている。

 ミテュラは忌々しげな表情を浮かべ、アシュラに話しかけた。


 「昔、魔王に呪術を掛けられた私の責任だね……紋章は“五芒星を中心に据えた逆五芒星”。私も紋章としては初めてみるからハッキリした事は言えないけど……そのままの意味で考えるなら、“アシュラと共存する『魔王の欠片』”ってところかしら」


 3人はただ俯くだけ。どんな顔でアシュラを見ればいいのかわからなかった。

 しかし、アシュラはそんな3人をみると、あっけらかんとした声で話掛けた。


 「そっか。でもいいんじゃない? なんか格好いいと思わない?」


 「「「はい?」」」


 まるで違う見方というべきか、アシュラの意見に唖然とする3人。

 してやったりな顔をして、アシュラは話を続けた。


 「俺はさ、昔から『忌み子』として、厄災を呼び寄せる存在って言われて育ってきた。それを否定したくて必死で身体鍛えたけど、結局非力のままだった。実際に村の外に出て自分の脆弱さにもかなり落ち込んだよ」


 状況をよく知るフォルテュナとククルは悲しそうに俯いた。


 「でも、そんな俺が『鬼神』と呼ばれた、最強の母さんの息子だった! しかも『魔王の欠片』を心に潜ませて、まだちゃんと試してないけど、魔物を一発で粉砕した力だって使えるんだ!」


 3人は驚いた。ミテュラの息子である事を、『魔王の欠片』の力を得た事を嬉々として語るのだ。


 「アシュラ、私の息子だって事を喜んでくれるのは本当に嬉しいわ……でもその力は魔族の力なのよ。本当なら貴方が持つべきは神族の……私とシヴァを受け継ぐ力! そんな魔を象徴とした力で喜ぶなんておかしいでしょ!? そのせいで神族としての力がちゃんと発現していないのかも知れないのよ? それをどうして……!!」


 ミテュラは目に涙を溜めて反論する。

 呪いを背負うのは自分だけだったはずなのに、と。

 それでもアシュラは笑顔で母親の目を見つめる。


 「それは違うよ、母さん。俺は本当に嬉しいんだ。だってこれは……この神名の証も、『魔王の欠片』も母さんの息子の証明、嘘偽りのない母さんとの繋がりなんだ。それに、これが呪術の紋章だというなら、母さんと一緒に、呪術を解く旅ができる!! これまで失われた親子としての絆を取り戻せるなんて、こんな嬉しい事はないと思わない?」


 アシュラもその目に涙を滲ませながら、優しく声を掛けた。


 「もう孤独(ひとりぼっち)じゃないんだ、一緒に頑張ろうよ、母さん」


 ミテュラは瞳に目一杯溜まる涙でアシュラの顔がよく見えない。

 でも嬉々とする彼の感情に嘘偽りを感じない。本心から喜んでいるのだ。

 ミテュラは自らの気持ちを抑えながら、彼の意思を確認する。


 「これまで辛かった事を、私に何も責めなくていいの?」


 「あぁ、母さんの苦しみを共有できるのに、責める理由なんてないよ」


 「これからもっと辛い事だってあるわよ? それでもいいの?」


 「絶対に乗り越えるさ。それに母さんにフォルとククル、師匠だっている」


 「もう……本当に馬鹿なんだから」


 「馬鹿なところは言ってくれればちゃんと直すよ、母さん」


 「もう、直さなくていいわよ……ありがとう、アシュラ」


 頷くアシュラは、今度はフォルテュナとククルに向かってさらに言葉を紡ぐ。


 「フォルテュナ、ククル。俺は神族としての証はちゃんと立てられなかったのかも知れない。神族だけど、魔族の能力を持った異分子みたいなもんだ。ある意味、忌み子だった頃と大差ないかも知れない。こんな俺でも、2人はついてきてくれるか?」


 自分は純粋な神族じゃない。魔族の力を有してるからこそ、この先どんな事態に巻き込まれるのか想像もつかない。アシュラはそんな意味合いを暗に含ませていた。

 だが2人はそんな事など気にもしないと言わんばかりに一蹴した。


 「アシュラ、私を舐めないでよね? 絶対に離れないんだから!」


 「アシュラさん、何があってもククルもついていきますぅ!」


 何一つ迷いのない2人に、アシュラは安心したような優しい笑顔で応えた。


 「ありがとう、フォルテュナ、ククル。これからもよろしくな」


 「「うん!!」」


 アシュラを中心に、ミテュラ、フォルテュナ、ククルの絆が深まった。


 そして数日後。

 アシュラを中心とした彼女達は、『お祀り』を止めるべく動きだす事となる。








 「すぅ~……はぁ~……あぁん、私も一緒だぞ……すんすんすんすんすん」








 約一名の変態も一緒に。




 ここまでお読みいただきありがとうございます。


 今回の改稿の変更点はふたつ。

 まずはタイトルを簡潔にしました。ありきたりですけどね。

 もうひとつは、ミテュラが抱いていた息子への葛藤というか背徳感を吐き出させました。アシュラも力を得た事に対して浮足立つ感じが、今後への伏線になると思います。


 物語の流れを損なわずに改稿するのは難しいですけど、とにかく頑張ります。


 いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m

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