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第21話  闇の目覚め(★)

 2020.1.12 改稿しましたm(__)m

 詳細は後書きにて。




 3人が鍛練を始めてから3日が経過した。だかそれは濃厚な3日間。


 元々戦闘とは縁のなかったアシュラ、そして経験こそあれど最前線で戦った事のないフォルテュナとククル。それが功を奏したというべきであろう。カーリーとミテュラの鍛練によって得た知識や経験を全て吸収し、著しい成長を遂げていた。


 フォルテュナはまだ攻撃魔法こそ使えないものの、戦況に応じた補助と効率の良い立ち回りを覚え、ククルは使単体攻撃から広範囲攻撃まで、使用できる魔法の幅も格段に広がり、命中率も日に日に精度を上げていた。奇声に関してはミテュラの希望もあり修正されていないが。



 そしてアシュラはというと……



 「おら攻撃が来るぞ! 敵に余計な時間を与えるなっ!」


 「了解(イエス、マム)!」


 カーリーの指導の下、魔物との実戦をひたすら繰り返す事で、対処を身体と脳に叩きこまれ、その刹那に次の行動を考える余裕が出てきた。自ら考えた戦術を失敗しても、反省と修正を成功するまで繰り返す事で、自信にも繋がっていく。その吸収力にはカーリーも目を見張る物があった。


「さすがミテュラの息子ってか……抜群のセンスだな」


「はあああぁぁ!!」


『ギュアア……ァァァ』


 アシュラは本日数十匹目であろう魔物を切り伏せ、即座に表皮を剥ぎ取っている。冒険者になれば、討伐証明として魔物の身体の一部が必要になる。その為の練習も訓練の一環として取り入れていた。


 「師匠! 作業完了であります!」


 「うむ、ご苦労」


 すっかり師匠と弟子としての関係が板についてきた。

 カーリーが手本としてみせた魔物との戦いの鮮やかさに、アシュラは魅了されてしまった。それ以来、こと戦闘に関してはカーリーに心酔している様子だ。

 時折、鎧の隙間から見せるカーリーの鍛えあげられた肉体美に視線が釘付けになっているが、男ならそれも仕方がない。そう、仕方がないのだ。


 「だいぶ陽が高くなったな……アシュラ、村へと一時帰投する!」


 「了解(イエス、マム)!」


 2人は朝早くから森林に籠っているが、気づけば陽はほぼ真上に到達していた。

 カーリーは空腹感からか、先を急ぐように歩き出す。アシュラは必要になりそうな魔物の素材を回収すると、カーリーに追いつこうと追走する。



 ……その時だった。



 突然、上から黒い粘液の塊がアシュラに覆い被さるように落ちてきた。


 「うわっ!? なんだ……これ……スライム?」


 「どうした? って何だよ、スライムなんざ引き剥が……黒? まさか!!」


 アシュラに張り付いたスライムが『黒色』である事に気づいたカーリー。

 2人ともスライムだと高を括った事によって、判断を遅らせてしまった。



 「アシュラ! すぐに引き剥がせ!! それはただのスライムじゃない!!」


 「え!? ちょ……は、離れないっ!?」


 「ちいぃ!! 私が剥がす!! そのまま動くなよ!!」


 「わ……わかりましだああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 「くっ! 間に合えぇぇぇぇ!!」



 アシュラが突如の苦痛に絶叫しはじめた。

 カーリーは全力で地面を蹴ると同時に、愛剣のパラシュを抜剣し、瞬く間にアシュラの元へと達すると、瞬時に黒いスライムの弱点である核の位置を見極め、一撃で串刺しにした。


 黒いスライムは、核を破壊された事で活動を停止。粘液の塊は重力に逆らう事なく地面へと落ちていく。やがてそれは土に吸い込まれるように跡形もなく消えていった。

 

 だがアシュラはその場に立ち尽くしたまま、意識が戻ってこなかった。

 目は開いているにも関わらず、その瞳には生気を全く感じられない。


 「アシュラ? おぃしっかりしろアシュラ!!」


 カーリーはゆすったり頬を叩いたりするも、まるで微動だにしない。


 「まさか男をお姫様抱っこする日が来るとは……」


 アシュラをお姫様抱っこするカーリー。

 彼女が、いつかは胸板逞しい王子様にお姫様抱っこされたい……などと密かに夢見ているなんて誰も知らない。誰も知ってはいけない。



 「ってそれどころじゃねぇ。とにかく急ごう」



 アシュラをお姫様抱っこして走り出した。




 ~~~~~




 (……ここは? ……師匠! 僕は起きてますよ!!)


 アシュラは暗闇の中で、身動きが取れずにいる。その暗闇の中に円状の小窓があり、そこにはカーリーが映し出されていたのである。


 「アシュラ? おいしっかりしろアシュラ!!」


 (声が……届いてない? ……どうして身体も動かないんだ!?)


 動揺する事で思考が鈍くなる。どうすればいいのかわからなくなる。

 それは初めて魔物に遭遇した時のようだった。

 そしてその時を体現するかのように“声だけ”が聞こえてきた。



 ―――我が家へようこそ、()()


 (お前はあの時の声……? 我が家? 兄弟?)


 ―――その通りだ。すっかり忘れやがったな?


 (それよりも動けないんだ。どうすれば元に戻れるんだ?)


 ―――さらっと流されたが……元に戻す? 何の冗談だ?


 (ふざけるな! 俺を外に出せ!!)


 ―――教えてやろうか。ここはな、兄弟の精神内にある“闇”だ。我は()()()()()()()ここに封印されていた。この前みたいに兄弟の心が闇に堕ちかければ、外界に顔出し程度は出来るみたいだが、基本的にはずっとここで外界を眺める事しかできなかったんだよ。それがあのスライムのおかげで、自由の身になれたんだ。元に戻すなんて選択肢なんて兄弟にはねぇんだよ!! あっはははははっ!!


 (闇? 封印? 意味がわからない……)


 ―――わかるワケが無いさ、何も知らないんだからな! ははっ本当に呑気なもんだぜ、兄弟もミテュラも。ミテュラが魔王と戦った際に受けた呪術をしっかり調べてさえいれば、こういう結果にはならなかっただろうにな。ま、恨むなら母親を恨んでくれや! ぷっあははははっ!!


 (母さんを悪く言うな! それと俺の身体を返せ!!)


 ―――っと、そろそろ村に着きそうだな。じゃ、俺はこれで♪


 (ま、待て!! 俺の身体だ!! 好き勝手にさせてたまるか!!)


 ―――折角だから全員蹂躙して弄んでやるかな。せいぜいそこから眺めて楽しんでくれや。それじゃ、さようなら、兄弟♪


 (弄ぶだと!? 絶対に許さねぇぞコラアアァァァ!!!!!)




 こうしてアシュラは自分の中にある“闇”に囚われてしまった。




 ~~~~~




 本来なら人並みに走っても一刻は掛かるであろう距離を、カーリーは半刻と掛からずに村へと帰還した。居候している家にすぐさま向かい、3人の名を叫ぶ。


 「ミテュラ! フォルテュナ! ククル! 誰かいるか!?」


 その叫びに3人とも応えてくれた。幸い3人とも昼食の用意をしていた。


 「カーリーおかえり……って一体どうしたの?」


 最初に応えたのはミテュラだった。続けて台所から2人も出てきた。


 「おかえりなさい、カーリーさ……アシュラ!? どうしたの!?」


 「おかえりなので……アシュラさんどうしたのですぅ!?」


 3人共、カーリーがアシュラを抱きかかえてきた事にすぐ異変を感じたようだ。


 「すまない、アシュラがショゴスに襲われた。まだ意識が戻らないんだ」


 ショゴスとは、黒いスライムの事だ。

 一般的にスライムは、取り込んだ獲物を溶かしたり麻痺毒を分泌するのだが、カーリーの言ったシュゴスは極めて稀なスライム種。その特徴は、取り込んだ獲物の身体を麻痺させた上に、身体と魂を分離させる能力。それこそアシュラが意識があっても身体が動かせない理由の一つだった。


 「私がついていながらすまない……ミテュラ、フォルテュナ、ククル」


 「未開の森林地帯じゃ不測の事態も起こり得る事よ、仕方ないわ」


 「気にしないでください。カーリーさんが無事なのは不幸中の幸いです」


 「そうですぅ。それで、アシュラさんの容体は……?」


 ミテュラが生気を失ったアシュラの目を覗き込む。


 「ちょっと待ってね。……我に彼の者の身を示せ――『身体透過(ボディスキャン)』」


 ミテュラの手が橙色に輝きを放つ。その手をアシュラにかざすと、彼の身体が橙色に包まれる。

 その光景に3人は神秘的にさえ感じられた。


 「これは……アシュラの身体を調べてるのか?」


 「身体だけじゃなくて……ん……これは…………なるほどね」


 カーリーの質問に対して説明をする前に、アシュラの異常を突き止めたミテュラ。

 かざした手を身体から離すと、橙色の輝きもまた霧散していった。


 「これはちょっと拙いかもしれないわ。フォルテュナさん、鍛練中に教えた拘束魔法をお願い。できるだけ重ね掛けしてね」


 ミテュラの様子に異変を感じたフォルテュナは、言われた通りに詠唱を始めた。


 「汝、動ずる事能わず――『拘束(レストリクション)』」


 フォルテュナの手から光が放たれ、アシュラの身を包み込んだ。

 そしてそれを5回繰り返した。

 目には見えないが、多重拘束で完全にその身を封じられている事になる。


 「ミテュラ、どうして拘束するんだ? 魂と身体の剥離を止める為か?」


 「違うわ。ちょっと説明が難しいのだけれど……」


 「説明は後でいい! それよりもアシュラを治す方が先決だろ!」


 「カーリー、落ち着いて。治るかどうかはアシュラ本人の気持ち次第よ」


 「……全然理解できん」


 「大丈夫よ、すぐにその原因がわかると思うわ」


 ミテュラの言おうとしている事が全く理解できないカーリー。

 すぐ傍にいるフォルテュナとククルも、全く意味がわからずにいる。


 そんな3人を余所に、ミテュラはアシュラの様子をじっと窺っていた。

 すると、開いたままだったアシュラの目に生気が宿り始める。


 しかしその目に輝く色は、いつもの銀色ではなく、黒色だった。

 そして無表情だった顔に、歪んだ笑みが浮かび上がったのである。



 「その原因ってのを、俺から説明してやろうか? ミテュラさんよ」



 アシュラの異常な雰囲気に、ミテュラを除く3人が静止した。

 明らかに異様な有様。アシュラとは全くの別人にしか見えなかったのだ。



 ミテュラは怒りを滲ませるように、アシュラに対して威圧をかけた。



 「お目覚めかしら? ()()()()()()()







 まずタイトルを変更しました。

 変更前は「アシュラの異変」でしたが、過去のタイトルと被ってしまった為の措置です。

 内容的にはほぼ同じですが、設定的な修正と、後半繋がりの悪い会話部分を追記しました。

 これで幾らか読みやすくなってるといいのですが……(-_-;)


 いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)

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