↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DIVE ~記憶の海~  作者: 月ノ宮 鈴
第二章 ヘブン
30/35

第6話 孝治との終わり

 学部長室から出てきた咲は、部屋の前で待っていた孝治に声をかけられた。


「えっと……確かにあんな紙をばら撒いた睦(むつみ)が悪いんだけど、さすがに警察に通報するのはやり過ぎなんじゃないかな?」


 頭を掻きながら愛想笑いを浮かべる孝治に、はらわたが煮えくり返る思いがする。


 咲は目を細めて顎を上げ、ゴミを見るような視線を孝治に向けた。


「そもそも睦って誰よ? あなたの彼女は私じゃないの?」


 孝治は痛いところを突かれて「いやー。そうなんだけどさ……」と言い淀む。


「二股かけてたの? いつから?」


 威圧感のある咲の声に屈して、孝治は訥々(とつとつ)と白状した。


「睦とは1年くらい前から付き合ってて、あいつ、ちょっと嫉妬深いところがあってさ。咲ちゃんみたいな大人しい子と付き合ったら癒されるかなぁと思って……」


 その言葉に咲の怒りがさらに熱を上げていく。

 今すぐこのヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべている顔を張り倒してやりたい。


 そんな気持ちを抑えて、さらに問い詰めた。


「つまり、私の方が浮気相手だったって事ね。それなのに、わざと度数の高いお酒を飲ませて、眠ったところを襲ったと。……そういうこと?」


 侮蔑(ぶべつ)の表情を浮かべる咲に怯えながら、孝治は首を振って否定する。


「いやいや、人聞きの悪いこと言わないでよ。俺たち付き合ってたんだぜ? 襲ったなんてことないだろ? 確かに咲ちゃんは酔ってたけど、合意のもとでやったことなんだから」


 この期に及んでまだ保身に走る孝治に、咲は何だか全てが馬鹿らしく思えてきた。


(何でこんなやつと付き合っちゃったんだろう)


 はじめは告白されたという事実が嬉しかった。

 これから恋愛漫画みたいにデートを重ねて、彼のことを好きになって、行く行くはプロポーズをされたりするのかなと甘い期待を寄せていた頃もあった。


 結局、自分も彼自身を好きなわけではなかったのだ。

 ただ、物語のヒロインになって、恋をしたいという願望を叶えたかっただけ。

 

 咲は大きく息を吐くと、孝治にはっきりと言い放った。


「分かった。あなたとはもう、これで終わり。睦って子のことは訴えないであげる。その代わり、もう二度と話しかけないで!」

 

 咲は踵を返してその場から足早に立ち去った。


 胸の中は、悔しさと怒りで今すぐ叫び出したい気持ちでいっぱいだった。


(もう誰も信じられない!)


 そう思ったとき、叶恵の顔が浮かんだ。


 叶恵は最後に「私、咲のことは好きだけど……」と言っていた。

 彼女だけはまだ咲のことを友達だと思ってくれている。

 咲は胸の内でその明るい笑顔と声を思い返した。


「咲は難しく考えすぎなのよ。もっと肩の力を抜いて楽に生きよう?」


「咲と一緒にいると落ち着くなぁ。無理しなくて良いって思える」


 叶恵の言葉を思い出しながら、咲は自分の頬が濡れていることに気付いた。

 

(今すぐ叶恵に会いたい!)


 咲は涙を袖で拭いながら、叶恵がいるクラブへと走り出した。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。