後日談 遠く、君を想う
遥人がこの街を去って一週間が過ぎた。
今日も、優は教室の窓からぼーっと空を眺めている。
(遥人、今頃何してるのかな?おじさんとなら幸せに暮らしてるとは思うけど……)
はぁーとため息を吐く優の隣で、川村が紙パックのジュースを飲みながら、優と同じように空を眺めた。
「あんたたちってやっぱり付き合ってたの?」
「……ふぇっ!?」
変な声が口から飛び出した。優は勢いよく振り返り、窓枠に肘を強打する。
「い、痛っ……じゃなくて! な、何言ってるの川村さん!?」
「何って、見てれば分かるっていうか」
「いつから気付いてたの!?」
川村は飲みかけのジュースに視線を落とした。
「私が遥人君に振られた後、なんとなく二人がぎこちないように見えたの。元々遥人君も宮瀬君のことばかり見てたし、そうなのかなって」
まさか川村にばれているとは思わなかった。
「俺は確かに遥人のこと見てたけど、遥人は別に普通だったと思うよ?」
川村は呆れたように息を吐き出した。
「何言ってるの?私が宮瀬君にきつく当たってたのは、遥人君が宮瀬君のことばかり見てたからよ?」
初耳だった。
まさか遥人も自分のことを見ていたなんて思わなかった。
「遥人も、俺のこと見てたんだ……」
なんだか胸の中が温かくなる。
もしかしたら自覚していなかっただけで、遥人は自分のことがずっと前から好きだったのかもしれない。
優が嬉しそうに微笑むと、川村は「まったく、鈍感なんだから」と言って再び空を眺めた。
青空に雲が浮かんで校庭に陰を作っている。
川村が遥人に振られてからまだ二週間ほどしか経っていない。
今もまだ彼への想いは胸の中にある。
遥人が突然いなくなってしまったショックは、川村にとっても大きかった。
けれど、この空の下のどこかに遥人が今も暮らしている。そう思うと、少しだけ胸が軽くなったような気がした。
ここまで『二人だけの夕日』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
優と遥人の物語は、ここでひとつの区切りを迎えます。
二人が見つめた夕日。
秘密の場所で交わした言葉。
そして、互いの気持ちを知ることができる共感接続。
もし二人の記憶や想いが、少しでも皆さんの心に残っていたら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。
けれど――『DIVE ~記憶の海~』の物語は、まだ始まったばかりです。
共感接続によって、人は大切な人の気持ちを知ることができるようになりました。
それは、幸せをもたらすこともあれば、ときには人の心を深く傷つけることもあります。
この世界で、これからどんな人たちが、どんな記憶と出会うのか。
次の物語も、ぜひ覗いてみてください。
あなたの心にも、いつか忘れられない『記憶』が残りますように。




