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仕込み  作者: 真鍋
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 それを見るや否や先生は懐から金剛杵、両端が五股に別れた五鈷杵を取り出し右手で正面に構え左手の人差し指と中指を添える、先生が金剛杵をお持ちなのは知っていたが実際使われたのを初めて見た、一瞬アルファベットのAが脳裏に浮かぶ頭を振りそれを追い出し無理矢理Bを思い浮かべる、と同時に私は誰よりも早く行動を起こした奴へ向け泡消火剤を掛けてやるつもりで踏み出したのだがノズルの先からプシュプシュと音が出ると泡消火剤の勢いはなくなりいつの間にやノズルの先からはツーと一筋の消火剤が垂れると完全に止まった、多分この世の終わりの様な情けない顔をしていたと思う、だが奴はお構いなしにあの黄色い目で私を見据えていた、終わり詰みというやつだった私は先生を見た情けない表情のままで、すると先生は正面で敵を捉えながらも横目でこちらを見ると大きく頷いた、意味が分からなかったここまで良くやった潔く死ねと言う事か、まぁ未練たらたらではあるが人生こんなものかと諦めた時ブシャっといとも言われぬ感覚が襲った“これが死の感覚”目が霞んでゆく⋯


 鼻をつく薬品臭、これが話に聞く死の匂いか、しかし妙にどこか覚えのある匂い、視界は霞んではいるが見えない訳ではない目を擦ると少し染みるが奴が見えるし先生も見えた、これはと思い腕を見るとそれは泡消火剤だった私にも泡消火剤が掛けられたのだ、すると背後からうぉーと叫び声をあげながら迫り来る者がいた振り返るとあの小心者の男が別の消火栓からホースを引いて奴に向かって行くのだ、朧げな輪郭から奴は肉体を持たない存在と思っていたが泡消火剤はしっかり奴を包むと明らかに奴は特別な反応をしている、奴が産まれて何処くらいが経ったのだろうか数千年、或いは逆に最近かもしれないがこれは断言できる呪法の類は受けども化学的な物は受けた事はないのだ現に多分奴は現れた時点で此処を火の海にする予定だったのだろうが未だ此処は子供のアトラクションと見紛うばかり白い泡に包まれた世界だった。


 私は先程の事もある男に噴射を止めさせた、この泡消火剤には限りがあるのだもし火の手が上がった時それを使えと、男はノズル、私はホースを持つと先生達の邪魔になってはとその場から引いた、奴は置かれた状況をそれとなく理解したのか姿を消し再度姿を現した身体を包んでいた消火剤は消え発電所で見た禍々しい姿に戻っていた、しかしあたりに撒かれた泡消火剤は奴としてもどうしようもないであろう。

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