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外へ出るとあの男が立っていた、何があったか聞かれたが庄崎は存命、他は多分死んでるとだけ伝え車へ向かった救急車と考えたが止めた救急隊員の犠牲が出るだけだった男は付いてくる様子はなかった、かと言って扉の中へ入る事もなかった、長生きするタイプだなと思いながら私は走った、外へ出ると空が白み始めていた車へ乗り込む、デジタル時計は4:46から4:47に変わった、キーを回しエンジンを掛ける、あれから何分経ったのだろうか先生は大丈夫であろうか、今すぐギアをドライブに入れ先生の元へ向かいたいが私が行ったところでだった、悔しいが先生は庄崎を必要としている、時計は4:48に変わる1分が1時間の如く長く感じる、まだか、庄崎はいつになれば現れるのだ、私は居ても立っても居られず車を降り先生のおられる方向を見た、白んだ空が赤く染まっているのではと肝を冷やしたがそれはなかった、今のところは。
すると建物の中からけたたましい足音が響きあの男が出てきた傍らに何かを抱えていた庄崎だ、庄崎は男に抱えられ現れたのだ、負傷しているのか、さっき迄は何でもなかったがあれから何かあったのだろうか、知る術はなかったが私は車へ乗り込んだ男は庄崎を後部座席に乗せると助手席のドアを開き行けと指示を出した、図体だけのでかい小心者がと鼻で笑い私は車を出した、庄崎は後部座席で動かない何があったのか聞こうとしたがやめた、今はコイツを病院へ連れて行く暇はない先生の元へ連れて行き雲行きが悪くなれば先生を強引にでも連れ出し逃げるの一手だ、悪いが他は知らない庄崎も同類、アレはダメだ素人目にも分かる“三十六計逃げるに如かず”別に此処が火の海になろうと日本が滅ぶ訳ではない、しかし先生が亡くなれば救われるべき人々が別の運命を辿ってしまう、そう先生さえいれば日本は救われるのだ。
車は隣の施設のゲートを突破するとタンクへ近付けるとこまで近付き停車した、男は助手席を降り後部座席から庄崎を引っ張り出す、抱き抱えられた庄崎の両腕は焼けただれ、あの黒髪も見る影もなかったボロボロじゃないか、こんな負け試合放棄して逃げれば良いものを、政府に人質でも取られているのか、庄崎はかすれた声で私へ聞いてきた私は抑揚なく先生のいる場所を教えた、男に抱えられ戦場へ向かう2人の背中を見て私は別方向へ走った、先生を逃がす為の作戦①を行使する為だ、辺りをキョロキョロ見廻す、絶対に有るはずだ必ずそれは有るのだ、空は段々と明けてゆきそれはタンクの隙間から差し込む光で"︎︎︎︎泡消火栓"︎︎赤いボックスに白字が神々しく照らされていた私はボックス内のホースを引き出すと先端にノズルを取り付けコックを捻る、潰れていたホースが脈打つ様に悶えピンと張る、手元のコックを捻ると生クリームかと見紛う液体が放出され空を舞うシャボンが朝日を受けキラキラ輝く、私は固く重くホースを引っ張り先生の元へ急いだ。
タンクの陰から徐々に先生達が見えた先生達は無事だった、ホッと肩を撫で下ろすしかし先生達の足元には重油が拡がりアスファルトが全く見えなくなっていた、私はその重油溜まり目掛け泡消火剤を噴射した、それはスプレー缶に入る生クリームが噴射する様だったブシューと音を立て白い泡消火剤が黒い地面を白で染め始めた、重油が漏れるタンクの外壁にも泡消火剤を撒いた、わざとではないがそれは先生達にも掛かり泡消火剤は先生達の白いインナーに白いアウターを着せている様であった男に抱えられた庄崎にも共に泡消火剤を掛けてやった、これはわざとだ言うまでもない。
「清井君、これ大丈夫なのかい?」
先生が聞いてきたが知る由もない私は適当に答えた。
「飲み込まなければ大丈夫です」
「遅いよ、少し飲んじゃったよ」
「お腹下す程度です、多分」
私は構わず撒き散らした、ノズルを四方八方へ向けながら私はほくそ笑んでいた、そこにはいつもの先生がいた、敵に現世の物理法則が通用するかは不詳であるが微かな希望は抱いても良いだろう事を終え先生に笑われるかもしれないが近くの銭湯で許して貰おうそんな事を考えていた、その時である。
「来ますよ!」
あの老婆がしゃがれた声で言った、火属性であるだろうが辺りの空気が一気に冷えた目に見えない冷気が辺りを包むと空間から発電所で見た朧げな輪郭がぬぅっと姿を表した。




