26
あの庄崎と言う女、能力は高いのかもしれないが戦術面はからっきしだなと憎まれ口が無意識に口を突いて出た、発電所迄距離にして1キロもなかったが陽炎を追うが如くそれは遠くへ逃げてゆく、気だけが焦る、ようやく到着すると車を飛び出し中へ急いだ壁に掛かる案内図を見るも事務所棟の案内だけで壁を蹴り悪態をつくとりあえず階段を駆け上がる、すると4階の廊下にはあの私の首を絞めた男がいた。
「庄崎は何処だ!」
私は叫んだ、男は鬼気迫る私の態度に一瞬たじろぎ付いてこいと言うと走り出した、男は階下へ降りると扉を指差した、この中に庄崎がいるのか私は扉を開ける、しかしまた扉が続くだけで庄崎の姿はなく振り向き男を見ると何度も指を突き出していた、この先ということか私は更に奥を指差してみると男は頷いた、その気持ちは汲んでやれない事もないがやはりこの先は男にとっては無理な世界なのであろう私は勢い良く扉を開けた。
熱気、茹だる様な熱気にそこは包まれていた発電は止まり機器は停止していたが熱は未だ冷めていない、広い空間には巨大なタービンが3機並んでいた床は白く眩い、そしてそこには点々と白い床に映える黒い塊が3個転がっていた昔、平和教育で見た一枚の写真、空襲を受け逃げ遅れた親子の焼死体、母に抱かれた子供がそのままの姿で黒い塊として写っていた、同じだった目を背けたくなる光景、私は言葉通り目を背けるとその先に庄崎がいた逆手に剣を握り左手の人差し指を立て何かを唱えている、そして庄崎の視線の先、2機のタービンの間にいた、とうに闘いは始まっていたのだそしてあろう事かそれは見えた、見えるのだ一見白だが脈打つ様に表面にグレーが浮き出てくる輪郭はボヤけ定かではないが見様によっては人型をしている、あの晩の先生の言葉が蘇る、考えまいとしてもあの黒い塊と共に脳裏をよぎる。
「⋯来たの!」
ハッと我に返る、庄崎が私を見て何か言っていたが聞き取れなかったがとりあえず要件を伝えた。
「タンクの方に現れそうだ、先生がアンタを呼んで来いと!」
私は大声で叫んだ、マズかった敵は目の前にいるのだ一瞬、頭部らしき場所に濁った様な黄色い何かが浮き出た、私は思ったと言うよりも肌が迫る危機を感じ取った、アレは目だその目は自分を捉えていると、次の瞬間、庄崎が叫んだ。
「伏せろっ!!!」
横に飛び込こんだ、床は滑らずゴロゴロと転がる、日頃からの教訓が役に立った、先生は常日頃から“私が大声を張った時は何も見ず何も考えずただ指示に従って下さい”と言われていた、私が立っていた直線上の壁は飴細工で出来ていたかと思うほど赤色化してダラダラと溶け落ちていた。
「分かった、お前は準備しておけ私もすぐ行く!」
2撃目はゴメンだ、私は振り返る事なく出口を目指し駆け出した。




