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仕込み  作者: 真鍋
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 作業を終えたリネン室はプレス機と送風ファンの作動音だけが聞こえていた、先程は気付かなかったがこれは薬品の匂いだろうか独特な香りが室内には充満していたが嫌な匂いではなかった例えは変であるが清潔感のある匂いであった、先生はリネン室に入るや否や洗濯機と乾燥機の元へ行かれ指先で乾燥機の扉にある円形の窓を撫でながら聞かれた。


「この2台が共に稼働してる時に共鳴とか共振は起こりませんか?」


 成程と私は理解したが支配人と源太郎は意味が理解できぬ様で顔を見合わしていた、先生は振り向きもせず手だけ振り『構いません構いません』と仰られた確かに共鳴、共振を説明するならば固有振動数や周波数から語らなければならず、ではその振動数、周波数とは何だと必ず展開するだろう流石にそれは避けたい、そして多分この怪異はそんな物理現象ではない、先生は既に真の原因を見出されているのだろう、先生はしゃがみ込むと這いつくばって洗濯機と乾燥機の下を覗き込まれた私は黙って横から携帯のライトでそこを照らした先生はその姿勢のまま礼を言われ後ろ手を出し何かを催促された、すかさず柄香炉を渡した先生は小さな声で何か唱えると香炉から立ち昇る煙を優しく機器の下に吹き込んだ、すると如何だ、まるでそこにガラスが張ってあるかの様に煙は機器の下へ入っていかない10センチ弱の隙間はそこにあると言うのにだ、先生は成程と立ち上がると支配人へ言われた。


「業者さんを呼んでこの機器を退けていただける様お願いして頂けますか、それと工務店の方、取引されてるところがございますでしょう其方も呼んで頂きたい」


 勿論、支配人はキョトンとしていた当然であろう先ず意味がわからない、理解できたとしてその業者に支払う費用はどう捻出するのか、機器が使用できない間、洗濯は外注に出すとしてその費用は、フロントを任されている者として算盤は常に弾いてなければならないのだ、その表情に行き着くのも重々分かる、遅ればせながら私も先程の先生の行動で全てを悟った、私はだらしなく口の開いた支配人へ先生の言われた意味を代弁した。


「支配人、この案件ですが原因はこの基礎工事にあります」


 支配人の口が余計に開く、あまりに端折り過ぎたかと私は仕切り直して噛み砕いて言う。


「通常、機器の足元はブロック、もしくはモルタルで施工しますよね?」


 私は先ずだらしない口元を整えさせる為質問を投げかけた、支配人は口を閉じ考えると答えた。


「そうですね、屋上の室外機などはモルタルで施工しました、ただこの機械は重くそれに地下ですし強度重視で施工しました」


「と言うと?」


「あっすみません、ここの基礎はコンクリートで施工しています少し掘り下げて鉄筋コンクリート製です」


「その様ですね、では専門的な質問になりますがモルタルとコンクリートの違いはご存知ですか?」


 流石に支配人は困り顔になると隣の源太郎さんが唐突に答えた。


「あぁだったらあれだ、砂利、砂利、モルタルは確か砂だけだったよな、昔、土建屋に世話なった事あってなミキサーでよく混ぜては配合間違えて親方にドヤされたもんだ」


「源太郎さん正解です」


 源太郎さんは満更でもない表情を浮かべると支配人は罰が悪いのか肘で源太郎を小突いていた、私は更に質問を付け加える。


「では源太郎さん、砂利は何処で取れますか?」


「そりゃー山だろ、採石場ってヤツじゃねぇのか」


「正解です、川砂利ってヤツもありますがアレは角が取れててコンクリートには向きません、だから大半は採石場かコンクリートを砕いた再生品になります」


 黙って聞いていた源太郎さんが如何にも本筋から離れてる様に感じたのか痺れを切らし聞いてきた。


「にいちゃんよ、今は幽霊の話だろ建築の話なら間に合ってるぜ」


「確かにですね」


 私は笑いで誤魔化すと話を続けた。


「では源太郎さん砂利が取れる山を想像して下さい、支配人も」


 2人は顔を見合わせ源太郎は腕を組み下を向くと支配人は斜め上を見つめた、しばらくリネン室はプレス機と送風ファンの音だけが間抜けに響いていた、すると源太郎が手で払う様な仕草で何かを催促するので私は如何したか尋ねた、すると源太郎は腕を解くと言った。


「にいちゃん待ってんだよこっちは、今、いい感じで採石場が浮かんでたのによ、まったく⋯」


 私は申し訳ないと半笑いで答えると続きを話した。

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