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旅館へ戻るとチェックイン迄の休憩なのか支配人と従業員はラウンジでコーヒーを片手に談笑を交わしていた、しかし我々が入って来るとその笑顔は何処かに失せ各々神妙な面持ちへ変わった、支配人は立ち上がり我々を出迎えてくれるとラウンジへ誘いコーヒーを2つ注文した、ラウンジには支配人含め男性3名、女性が6名いた朝の女性の姿はなく出来れば1番話を伺いたかったが仕方ないであろう私は先だって伝えた回答を支配人へ求めた。
支配人は役職があるのかわからないが私より少し上くらいの男性に回答を託した、男性は現場サイドのリーダー的存在で地下での怪異について皆からの情報を携帯にメモしていた、普通なら聞き流して当然の話、興味でもあるのだろうか私はそんな目で彼を見つめた、私と先生はソファーに横並びで座りその男性は丸い1人掛けソファーを移動すると我々の前に座り話てくれた。
「声が聞こえ始めたのは3年前だったと思います」
彼は他の従業員を眺めながら言うと何人かその言葉に頷いていた、次にその前後で変わった事はなかったかと続ける、又、皆の表情を見回す、問いには女性が手を挙げ声を聞いてから数回金縛りにあったと答えた、他の女性は低く唸っていた、散々話は聞いてただろうに改めて新鮮な反応を示さないといけないとわ女性と言うもの何かと大変であると心が何処か横道に逸れていた、しかし他に答えは出そうにない私は自らを軌道修正する意味も込めて咳払いを一回すると皆へ言った。
「不思議なもので皆さん大体その様な反応を示されます、我々が知りたいであろう答えを忖度されてるのでしょうか?そんな物は必要ありませんどんな些細な事でも構いません何か変わった事、例えば、うーん旅館で例えるなら⋯」
私は自分で言っておいて例えが出ないでいた、私も無意識に怪異に沿った例えを出そうとしては止まりを繰り返していた、すると階下からあの源太郎が一階へ上がってきたのだ人溜まりを見て源太郎は支配人へ何の集まりか尋ねた、すると男性が『地下で声が聞こえ始めた前後で変わった事、どんな些細な事でも良いので何か知らないか』と源太郎へ尋ねた。
「あぁその頃っていや洗濯機と乾燥機新調した辺りじゃなぇか?関係ぇねぇか、なぁお坊さん」
源太郎が先生にそう言うと先生は眉間に皺を寄せ何か思案なさり始めた、それを見た源太郎がポツリと呟く。
「よせやい、当たりでもひいたのかい」
「源太郎さん、残念ながら多分大当たりです」
先生は言ったが私はその真意を読めないでいた洗濯機と乾燥機、付喪神的な事を言われているのか、しかし付喪神は長きにわたり使用された道具に宿ると言われている、そもそも付喪神が赤子の鳴き声をあげるなど聞いた事がない、では何故、大きいとはいえ白物家電と言えよう、どちらも回転する、水、そうだどちらも水気を伴う、そう考えながらも正解からどんどん逸れている気しかしなかった、すると先生が支配人へ質問した。
「支配人、その洗濯機と乾燥機、先程拝見しましたがかなりの重量ですよね」
「はい、しかも振動が凄いので態々専用の基礎を造って免震やら何やら難しい工事をしましたが、それが何か?」
先生は立ち上がりもう一度リネン室へ行くと告げると支配人と上がってきたばかりの源太郎、そして私を含めた4人で向かった、ラウンジに残った従業員達は何が起こっているのか呆然と階下へ降りる我々を目で追っていた。




